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遠い空の向こうに

2013年04月05日 01時15分19秒 | 洋画1999年

 ☆遠い空の向こうに(1999年 アメリカ 108分)

 原題 October Sky

 staff 原作/ホーマー・H・ヒッカム・Jr.『ロケット・ボーイズ』

     監督/ジョー・ジョンストン 脚本/ルイス・コリック

     撮影/フレッド・マーフィー 美術/バリー・ロビソン 音楽/マーク・アイシャム

 cast ジェイク・ギレンホール クリス・クーパー ナタリー・キャナディ ローラ・ダーン

 

 ☆1957年10月4日、スプートニク1号、打ち上げ

 このアメリカに先駆けてソ連が打ち上げた世界初の人工衛星を、ウェスト・ヴァージニア州の炭鉱町コールウッドから見上げてる少年がいた。映画の原作者にして、のちにNASAの技術者になるホーマー・ヒッカムだ。空をゆく人類初の人工衛星を見、感動したことで、自分たちもロケットを作ろうとしてしまう少年たちは、実に素朴で美しい。かれらはやがて、その手作りロケットで、全米科学コンテスト(インテル国際学生科学フェア)の栄冠を手に入れるんだけど、この映画が感動的なのは、そんなことじゃない。

 炭鉱の監督として働く父親との確執、女性教師の愛情、町の人々の理解、彼女の協力、ロケット作りの仲間との友情、そしてさらに父親との融和が、やがて閉鎖されてゆくであろう炭鉱町の悲しさとともに描かれ、それがすべてきらきらと輝いているためだ。

 高校生の作るロケットは、最初はうとまれ、ばかにされながらも、それが次第に、町そのものの希望に変わり、家族や友達の夢に昇華する。誰もが経験したはずの青春時代は、親に反抗し、故郷を嫌い、隣人を疎ましがり、ともかく苦しみ悶え、夢だけ見てた。でも、その夢を手に入れることのできる人間は数少ない。みんな、どこかで、大小の縛りを受け、挫折し、妥協し、現実に甘んじ始める。けれど、もしも、その若者の才能を、まわりの人々が見抜き、心から応援したら、若者は夢をつかみ、人々もまたその夢がまるで自分の夢であったかのように喜ぶだろう。これは、そんな高校生の話だ。

 ただ、町で暮らしている高校生とちょっとだけ違うのは、町で暮らす高校生よりも困窮し、将来は炭坑夫になるべくして育てられた若者ってことだ。でも、かれの旅立ちにおもわず拍手したくなるのは、誰よりも尊敬し、自慢できる存在が、炭で薄汚れた父親だといいきることだろう。もちろんそうした考えに到るまでには紆余曲折あるんだけど、それを気恥しくないように描き切っているのがいいんだよね。

 あ、そうそう。邦題はともかく、原題の『October Sky』って、原作の『Rocket Boys』のアナグラムなんだね。内容とばっちり合った鳥肌が立つようなアナグラムじゃん。そういうのが、これまたいいんだよな~。

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