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ダンスとか。

ネクスト・ネクスト5

2004-12-18 | ダンスとか
森下スタジオ(Cスタジオ)。
▼康本雅子 『メクランラク』
足踏み旋回しながら上半身を動かし続ける長い冒頭。時々暗転が入り、そこにだけオールディーズのような歌が入ったりする。上半身の動きが旋回運動に奉仕する瞬間はごくわずかで、機械的に方向を変え続ける足とはほとんど交渉が切れている。意識の分裂具合がいかにも、らしいところ。後半は観客の前で見得を切ったり、マイクを持ち出して歌ったりする。頭を強く打ったために方向がわからなくなってあちこちぶつかりながら部屋から出られない人みたいな、呆れるほどデタラメな動き、振る舞い。それにしてもこの人の独特な動きの、独特さはどこから来るのか。端的には細身で部位が長いわけだが、その隅々まで神経を行き渡らせて動いているようには見えない。むしろ非常に大雑把に、思いつくまま体を動かし、あとはただ力を抜いているだけで、それゆえ首に力を入れたのに頭骨はガクンガクン揺れたり、肩は前に振ったのに肘から先はいつまでも背中の方にある、とか、そういう感じだ。いくつかの中心から発せられ、結果的に末端まで波及する動きが、人形振りではなく実際に人形のように見えるけれども、要するに実際の体よりずっと小さい身体イメージで動いているのかもしれない。素材としての天然の面白さはあるが表現者としては認めたくない。単に絶妙な匙加減でブリッ子しているだけで、これでは本当にメクラではないか。ラクメをやらなければならない。ラクではない。22分。
▼北村成美 『不完全スパイラる』
10月に「踊りに行くぜ!!」前橋公演で見た作品。もっと堂々とした痛快な作品だったのに、今回は構成が何だか曖昧。赤い照明の怪しい部分と、社交(競技)ダンスの部分とで行ったり来たりして展開がない。そして肝心の踊りも小さい。これは何かをかばっている小ささだ。体の調子が悪いのか。22分。
▼金魚×10 『幸福の森の掟』
演出・振付/鈴木ユキオ、出演/陽茂弥、村岡ユキ、向井千枝、山下陽光、横山良平、長谷川宝子、KYOM、兼盛雅幸、まろま、サイトウカオリ、鈴木ユキオ。人数が多い、空間も大きい、やはりこうであってこそ鈴木ユキオの才能が生きる。カンパニーのイメージを固定すまいとして毎回わりと違う感じの作品を作っているのだが、『Today is today.』の感じに戻った。どこか作りがぎこちないのは、自己模倣しているという意識があるのではないかと勘繰ってしまうけれども、ぼくはこれが見たかったので、良かった。正面奥に段ボールで作った白い山のような壁のようなオブジェがドーンと置かれ、あとは人が出たり入ったりしながら全く意味不明な行為やダンスを展開し続ける。相互に無関係ないくつかの群が同一平面状に配置されたり、時間を追う中で積み重ねられたり差し引かれたりする。セリフもオフの朗読もあり、小芝居もあればソロダンスもあり、メルヘンチックであったり世知辛かったりする。意味を見せておきつつ文脈を脱落させ続け、しかもそのことを過度に意識させない奇妙な手際。望んでいることと恐れていることとが一緒くたに絡まり合って流れてくる支離滅裂な夢のような時間。しかし、スピードとか音楽性とか間のハズし方とか、そういうわかりやすいレトリックに頼らず、ただ漫然とダラダラ流しているのはあまりにも危険すぎると思う。これでは本当に誰にも理解されないかもしれない(それにしても鈴木ユキオはどうしてこんなものが作れるのか)。上手寄りで男女三人が銀色の短い鉄パイプのようなものを振り上げて金属に打ち付け続けるシーンがあって、ここは黒沢清の『カリスマ』を連想させた。植林作業員の背負っている銀色のバッグ、そして振り下ろされるハンマー。もっと観客に冷や水を浴びせるような酷薄さをチラつかせても良かった。27分。
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1 コメント

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Unknown (本田)
2004-12-20 10:09:52
ラクメって(笑) お上手♪
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