千歳烏山・studio GOO。
真新しい小さなフローリングのスタジオ、上手奥にガスコンロがあり、それが全暗の中でボッと点火される。妙に艶めかしい。気合を入れて構えていると無味乾燥なステップを踏む音が聞こえてくる。味のないガムをひたすらかみ続けるような、黒沢系行為。しかし明かりが入ると、すぐに出口→のひどく調子っぱずれなパーカッション(スティックで色んなものを叩く)が入ってきて、たちまち舞台は騒々しくなってしまった。集中力をアゲてかないと退屈になってしまいそうなダンスへの集中が徹底的に妨げられる、何という仕打ちだ。出口→は壁や床を叩きながら前にどんどん出てきて、およそ繊細さとは対極にある無計画な振舞いを続け、しばしばオガワの方に目をやる。リアクションを求め、何とか自己の存在を承認してもらおうとすがるこの男の目線は、黒沢美香と共演した時の万城目純のそれに似ていた。オガワ由香はもちろん目など合わせることもなく、いかにも泰然自若とした姿勢を崩さないのだが、この決して見映えが良いとはいいがたいコントラストをどう楽しんだらいいのかこちらにはなかなか見えてこない。宙吊りになった懐中電灯だの、シャボン玉マシンだの、小さい動物のミニチュアだの、紙袋だの、小道具はたくさん用意してあるのだが、そんなもので波風が立つほど舞台が凪ぐことはない。するとおもむろに客席から緑色の衣装のヘンな男が一人乱入し、さらにもう一人。緑の男はオガワに絡もうとしたり、舞台奥でボサッとしていたりする。後から来た男は自由連想方式で詩みたいなお喋りを始める。Aは体に色々仕込んでいて、ズボンの中から草がはみ出しており、全部脱げばゴロンと柚子が転がり出し香ってくる。それでもオガワは絡んでいかない。ものすごい、笑える画だ。構ってほしい男たちが、引き付けられては返り討ちに遭うこともなくただ所在無げにしており、かといってオガワのソロダンスがそれとして成立しているわけでもなく、ひたすら異物を受け入れつつ関係を遮断して当惑を押し殺している。詩の男は何となく引っ込むことに成功するが、緑の男は引っ込めない。それを出口→が引きずってハケさせ、後を掃除する。そうかと思うと今度は出口→の出番となって、最後までグダグダと1時間強。自分は何をしに来たんだろう、と考えることも虚しく思える。
真新しい小さなフローリングのスタジオ、上手奥にガスコンロがあり、それが全暗の中でボッと点火される。妙に艶めかしい。気合を入れて構えていると無味乾燥なステップを踏む音が聞こえてくる。味のないガムをひたすらかみ続けるような、黒沢系行為。しかし明かりが入ると、すぐに出口→のひどく調子っぱずれなパーカッション(スティックで色んなものを叩く)が入ってきて、たちまち舞台は騒々しくなってしまった。集中力をアゲてかないと退屈になってしまいそうなダンスへの集中が徹底的に妨げられる、何という仕打ちだ。出口→は壁や床を叩きながら前にどんどん出てきて、およそ繊細さとは対極にある無計画な振舞いを続け、しばしばオガワの方に目をやる。リアクションを求め、何とか自己の存在を承認してもらおうとすがるこの男の目線は、黒沢美香と共演した時の万城目純のそれに似ていた。オガワ由香はもちろん目など合わせることもなく、いかにも泰然自若とした姿勢を崩さないのだが、この決して見映えが良いとはいいがたいコントラストをどう楽しんだらいいのかこちらにはなかなか見えてこない。宙吊りになった懐中電灯だの、シャボン玉マシンだの、小さい動物のミニチュアだの、紙袋だの、小道具はたくさん用意してあるのだが、そんなもので波風が立つほど舞台が凪ぐことはない。するとおもむろに客席から緑色の衣装のヘンな男が一人乱入し、さらにもう一人。緑の男はオガワに絡もうとしたり、舞台奥でボサッとしていたりする。後から来た男は自由連想方式で詩みたいなお喋りを始める。Aは体に色々仕込んでいて、ズボンの中から草がはみ出しており、全部脱げばゴロンと柚子が転がり出し香ってくる。それでもオガワは絡んでいかない。ものすごい、笑える画だ。構ってほしい男たちが、引き付けられては返り討ちに遭うこともなくただ所在無げにしており、かといってオガワのソロダンスがそれとして成立しているわけでもなく、ひたすら異物を受け入れつつ関係を遮断して当惑を押し殺している。詩の男は何となく引っ込むことに成功するが、緑の男は引っ込めない。それを出口→が引きずってハケさせ、後を掃除する。そうかと思うと今度は出口→の出番となって、最後までグダグダと1時間強。自分は何をしに来たんだろう、と考えることも虚しく思える。