インフルエンザワクチン接種が迫った2015年9月に「ワクチンが足りなくなる!」という情報が飛び込んできました。
寝耳に水、です。
購入元の話では「化血研(製薬会社の名前)のワクチンが出荷停止になった」とのこと。
その理由は、化血研が血液製剤の製造方法を国が認めた承認書通りに行っていないことが判明し、さらに同社のワクチンも同じ状況であることがわかったため。
さて、化血研のインフルエンザワクチンは、接種が始まるギリギリのタイミングで出荷を許可されました。
え? 大丈夫なの? 安全なの?
と一般の方以前に、医療者が疑問に感じました。
実は、出荷停止となったワクチンは、すでに国家検定を通り倉庫に眠る状態だったのです。
つまり、国が安全性を保障した医薬品、ということになります。
国は以下のことを天秤にかけて判断せざるを得なかったのです;
(マイナス面)製造過程が承認書と異なる行為
(プラス面)すでに国家検定を通過しているという事実
そして決め手が、インフルエンザワクチンが足りなくなると社会問題化し混乱を招く、ということ。
これらを鑑み、更なる安全性を確認する作業も行なった後、出荷に踏み切ったと思われます。
実際にワクチンを接種する臨床現場では、それを信じて使わざるを得ません。
しかし、小児科医をはじめとする医療関係者には「化血研は怪しい製薬会社」という根深い不信感が生まれました。
予防医学に用いる医薬品には、疾患治療に使用する医薬品は高レベルの安全性が要求されます。
健康な人に投与するものですから、健康被害はあってはならないというのが一般の認識です。
まあ、薬ですから副反応をゼロにするのは不可能ですが・・・。
化血研は他のワクチン(四種混合・日本脳炎・B型肝炎・A型肝炎)も製造しています。
このうち四種混合と日本脳炎ワクチンは定期接種に指定されています。
12月に四種混合ワクチンが足りなくなる・手に入らないことが小児科医の間で問題になりました。
でも、こちらも社会問題化する前にギリギリのタイミングで出荷が許可されました。
日本脳炎ワクチンは流通量が多かったので、まだ何とかなっている様子。
■ 承認外の方法で製造 化血研ワクチン大丈夫?
(2015年12月15日:東京新聞)
国の承認と異なる方法で血液製剤やワクチンを不正に製造していた一般財団法人「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)。化血研製の主な五種類のワクチンのうち二種類はすでに出荷が再開されているが、「子どもに接種しても本当に安全なのか」という不安が保護者らの間に広がっている。
名古屋市医師会には、市内のクリニックなどから「保護者にどう説明したらいいのか」との問い合わせも相次いでいる。接種の時に「本当に安全ですか」と聞いてくる親が多いためだ。医師会担当者は「効果や安全性に問題があるという結果は出ていないと伝えて」と答えているという。
化血研のワクチンをめぐっては、厚生労働省が九月、血液製剤に加えて、ワクチン十種類について同社に出荷自粛を要請。このうちインフルエンザ(国内シェア29%)は十月二十一日、百日せきやポリオなどに対する四種混合(64%)は十一月二十六日に出荷が認められた。A型肝炎(100%)、B型肝炎(80%)、日本脳炎(36%)などのワクチンの出荷は止まったままだ。
厚労省は、インフルエンザと四種混合の出荷を認めた理由について、「これまでの調査で、ワクチンに健康を害する病原体や異物の混入がないことが分かり、安全であると確認した。品質は問題ないと考えている」と説明する。ただ、不正を長年続けてきた化血研への不信感が十分ぬぐい切れたとはいいがたく、保護者らの間に迷いが生じている。
まだ出荷が認められていないワクチンでは、品薄による影響も広がっている。岐阜市の矢嶋小児科小児循環器クリニックでは、B型肝炎ワクチンについて、計三回のうち初回接種を優先し、以降の予約を制限している。矢嶋茂裕医師は「少数のメーカーに依存するワクチン供給体制も大きな問題ではないか」と憤る。
厚労省は「需要が逼迫(ひっぱく)しているワクチンから安全確認作業を進めているが、出荷再開の見通しは立っていない」としている。
そして、今問題になっているのが肝炎ウイルスに対するワクチン。
特にB型肝炎ワクチンは小児に重要なワクチンで、2016年に定期接種化が予定されています。
当院では、出荷停止時点で新たな予約受付を停止していました。
しかし、かき集めましたがとうとう足りなくなり、出荷停止前に予約していた患者さんへの接種さえもできなくなりました。
■ B型肝炎ワクチン、接種の中止相次ぐ 化血研問題で不足
(2015.12.20:朝日新聞)
化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)の不正製造の影響で、B型肝炎ワクチンが足りずに接種の予約を中止する医療機関が出てきている。国内シェア8割を占める化血研製の出荷が9月から止まっているためだ。厚生労働省は、安全性が確認されれば出荷を認める方針だが、年明けになる可能性もあるという。
B型肝炎ワクチンは、国内に流通するのは化血研製とMSD製のみ。昨年は計約200万本出荷された。厚労省は来年度にも、市町村が実施する定期接種にする方針。対象は0歳児で1人に3回する。
日本小児科学会では緊急声明を出し、B型肝炎ワクチン接種に優先順位をつけるよう促しています。
■ B型肝炎ワクチン供給不足が見込まれる現状での医療施設における対応 -日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会からのお願い-
この中で、次のように優先順位がつけられています;
1.母子感染予防のためのワクチン接種
2.HBs抗原陽性の血液による針刺し等の汚染事故後のB型肝炎発症予防のためのワクチン接種
3.家族内にB型肝炎キャリアの方がいる場合の乳児へのワクチン接種
なるほど、という内容ですが、当院では全くワクチンが手に入りませんので、あまり意味がありませんね。
今回の問題点を整理しますと、
「国の承認書と異なる方法で作成したワクチン、しかし国家検定を通過したワクチン・・・この安全性をどう評価するのか? 見切り発車的に出荷を認めてよいのか?」
ということかと。
このままうやむやには終わらない問題であり、化血研はその倫理性を厳しく追及されることになるでしょう。
■ 薬害エイズの製薬会社、40年にわたる不正発覚!入念な偽装工作、未承認の製法(2015.12.22:Business Journal)
■ ボツリヌスを無届け運搬 厚労省が化血研に立ち入り検査(2015年12月21日:東京新聞夕刊)
寝耳に水、です。
購入元の話では「化血研(製薬会社の名前)のワクチンが出荷停止になった」とのこと。
その理由は、化血研が血液製剤の製造方法を国が認めた承認書通りに行っていないことが判明し、さらに同社のワクチンも同じ状況であることがわかったため。
さて、化血研のインフルエンザワクチンは、接種が始まるギリギリのタイミングで出荷を許可されました。
え? 大丈夫なの? 安全なの?
と一般の方以前に、医療者が疑問に感じました。
実は、出荷停止となったワクチンは、すでに国家検定を通り倉庫に眠る状態だったのです。
つまり、国が安全性を保障した医薬品、ということになります。
国は以下のことを天秤にかけて判断せざるを得なかったのです;
(マイナス面)製造過程が承認書と異なる行為
(プラス面)すでに国家検定を通過しているという事実
そして決め手が、インフルエンザワクチンが足りなくなると社会問題化し混乱を招く、ということ。
これらを鑑み、更なる安全性を確認する作業も行なった後、出荷に踏み切ったと思われます。
実際にワクチンを接種する臨床現場では、それを信じて使わざるを得ません。
しかし、小児科医をはじめとする医療関係者には「化血研は怪しい製薬会社」という根深い不信感が生まれました。
予防医学に用いる医薬品には、疾患治療に使用する医薬品は高レベルの安全性が要求されます。
健康な人に投与するものですから、健康被害はあってはならないというのが一般の認識です。
まあ、薬ですから副反応をゼロにするのは不可能ですが・・・。
化血研は他のワクチン(四種混合・日本脳炎・B型肝炎・A型肝炎)も製造しています。
このうち四種混合と日本脳炎ワクチンは定期接種に指定されています。
12月に四種混合ワクチンが足りなくなる・手に入らないことが小児科医の間で問題になりました。
でも、こちらも社会問題化する前にギリギリのタイミングで出荷が許可されました。
日本脳炎ワクチンは流通量が多かったので、まだ何とかなっている様子。
■ 承認外の方法で製造 化血研ワクチン大丈夫?
(2015年12月15日:東京新聞)
国の承認と異なる方法で血液製剤やワクチンを不正に製造していた一般財団法人「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)。化血研製の主な五種類のワクチンのうち二種類はすでに出荷が再開されているが、「子どもに接種しても本当に安全なのか」という不安が保護者らの間に広がっている。
名古屋市医師会には、市内のクリニックなどから「保護者にどう説明したらいいのか」との問い合わせも相次いでいる。接種の時に「本当に安全ですか」と聞いてくる親が多いためだ。医師会担当者は「効果や安全性に問題があるという結果は出ていないと伝えて」と答えているという。
化血研のワクチンをめぐっては、厚生労働省が九月、血液製剤に加えて、ワクチン十種類について同社に出荷自粛を要請。このうちインフルエンザ(国内シェア29%)は十月二十一日、百日せきやポリオなどに対する四種混合(64%)は十一月二十六日に出荷が認められた。A型肝炎(100%)、B型肝炎(80%)、日本脳炎(36%)などのワクチンの出荷は止まったままだ。
厚労省は、インフルエンザと四種混合の出荷を認めた理由について、「これまでの調査で、ワクチンに健康を害する病原体や異物の混入がないことが分かり、安全であると確認した。品質は問題ないと考えている」と説明する。ただ、不正を長年続けてきた化血研への不信感が十分ぬぐい切れたとはいいがたく、保護者らの間に迷いが生じている。
まだ出荷が認められていないワクチンでは、品薄による影響も広がっている。岐阜市の矢嶋小児科小児循環器クリニックでは、B型肝炎ワクチンについて、計三回のうち初回接種を優先し、以降の予約を制限している。矢嶋茂裕医師は「少数のメーカーに依存するワクチン供給体制も大きな問題ではないか」と憤る。
厚労省は「需要が逼迫(ひっぱく)しているワクチンから安全確認作業を進めているが、出荷再開の見通しは立っていない」としている。
そして、今問題になっているのが肝炎ウイルスに対するワクチン。
特にB型肝炎ワクチンは小児に重要なワクチンで、2016年に定期接種化が予定されています。
当院では、出荷停止時点で新たな予約受付を停止していました。
しかし、かき集めましたがとうとう足りなくなり、出荷停止前に予約していた患者さんへの接種さえもできなくなりました。
■ B型肝炎ワクチン、接種の中止相次ぐ 化血研問題で不足
(2015.12.20:朝日新聞)
化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)の不正製造の影響で、B型肝炎ワクチンが足りずに接種の予約を中止する医療機関が出てきている。国内シェア8割を占める化血研製の出荷が9月から止まっているためだ。厚生労働省は、安全性が確認されれば出荷を認める方針だが、年明けになる可能性もあるという。
B型肝炎ワクチンは、国内に流通するのは化血研製とMSD製のみ。昨年は計約200万本出荷された。厚労省は来年度にも、市町村が実施する定期接種にする方針。対象は0歳児で1人に3回する。
日本小児科学会では緊急声明を出し、B型肝炎ワクチン接種に優先順位をつけるよう促しています。
■ B型肝炎ワクチン供給不足が見込まれる現状での医療施設における対応 -日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会からのお願い-
この中で、次のように優先順位がつけられています;
1.母子感染予防のためのワクチン接種
2.HBs抗原陽性の血液による針刺し等の汚染事故後のB型肝炎発症予防のためのワクチン接種
3.家族内にB型肝炎キャリアの方がいる場合の乳児へのワクチン接種
なるほど、という内容ですが、当院では全くワクチンが手に入りませんので、あまり意味がありませんね。
今回の問題点を整理しますと、
「国の承認書と異なる方法で作成したワクチン、しかし国家検定を通過したワクチン・・・この安全性をどう評価するのか? 見切り発車的に出荷を認めてよいのか?」
ということかと。
このままうやむやには終わらない問題であり、化血研はその倫理性を厳しく追及されることになるでしょう。
■ 薬害エイズの製薬会社、40年にわたる不正発覚!入念な偽装工作、未承認の製法(2015.12.22:Business Journal)
■ ボツリヌスを無届け運搬 厚労省が化血研に立ち入り検査(2015年12月21日:東京新聞夕刊)