ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

新型インフルエンザ: ワクチン接種を前に自治体悲鳴 「準備間に合わない」

2009年10月10日 | 新型インフルエンザ

10月19日の週から医療従事者への新型インフルエンザのワクチン接種が始まり、11月第1週より妊婦と基礎疾患がある人への接種が始まります。

接種費用は実費負担となり、1回目の接種は3600円、2回目の接種は2550円(ただし、2回目を異なる医療機関で接種を受けた場合は、基本的な健康状態等の確認が再度必要となるため3600円)です。

季節性インフルエンザのワクチンは今回の新型インフルエンザウイルスに対しては有効ではないと考えられています。

これまでの季節性インフルエンザワクチンでは、2回接種した成績によりますと、2回目の接種1~2週後に抗体が上昇し始め、1カ月後までにはピークに達し、3~4カ月後には徐々に低下傾向を示します。したがって、ワクチンの予防効果が期待できるのは接種後2週から5カ月程度と考えられており、新型インフルエンザワクチンでも同程度と考えられます。

インフルエンザワクチンは妊婦に対して特別に重篤な副作用は起こらないと考えられ、一般的に妊娠中の全ての時期において接種可能であるとされています。今回の新型インフルエンザワクチンでは、プレフィルドシリンジ製剤(あらかじめ注射器に注射液が充てんされている製剤)には保存剤の添加は行われておらず、保存剤の添加されていないワクチン接種を希望する妊婦はプレフィルドシリンジ製剤が使用できることになってます。

新型インフルエンザの患者は急増中で11月にも流行のピークを迎えるとの予測があり、ワクチン接種が間に合わない可能性もあります。妊婦は基礎疾患がある患者と同等以上に重症化ハイリスク群と考えられますので、周囲の状況や患者症状からインフルエンザが疑われる場合には簡易検査結果いかんにかかわらず同意後、躊躇なくタミフルを投与することが推奨されてます。

新型インフルエンザワクチンQ&A (厚生労働省)

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ対応のQ&A (日本産科婦人科学会)

Pk2009100202100091_size0

新型インフルエンザ: ワクチン接種の基本方針決定

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** 共同通信、2009年10月10日

ワクチン接種を前に自治体悲鳴

「準備間に合わない」

 新型インフルエンザワクチンの接種開始を前に、地方自治体が態勢整備に追われている。2日に国の基本方針が示されてから19日のスタートまでわずか2週間あまり。準備が間に合わず、実施を遅らせる地域も出てきそうだ。

 「国からの情報があまりに少なく、決まっていないことが多すぎる」。千葉県の担当者は頭を抱える。県の相談窓口には1日300~400件の電話が殺到。3分の1はワクチンに関する問い合わせだ。

 「どこで」「いつから」との質問が一番多いが「われわれにもまったく分からない」(担当者)。

 厚生労働省が示した標準的なスケジュールでは、19日以降、医療従事者を皮切りに順次、優先対象者への接種を始める。しかし、県側は接種を行う医療機関の取りまとめや対象者の人数把握、卸業者との納入量の調整などの膨大な作業に追われており、日程通り実施するのは難しいという。

 「県民の不安を取り除くために、早く具体的な日程を示したい」。開始までに、住民に情報を周知できるかどうかも大きな課題だ。

 「段取りを現場に丸投げするなら、もっと時間的な余裕がほしい」とぼやくのは大阪府の担当者。大阪府内で接種を行う医療機関は5千以上になる見込み。「すべての医療機関が一斉に始めるのは無理」といい、準備が整ったところから順次スタートする。

 ワクチン接種が1回で有効なのか、2回必要なのかについても国の最終判断はまだ示されていない。スケジュールが確定しない中、現場の医療機関にも混乱が広がっている。

(共同通信、2009年10月10日)

****** 毎日新聞、2009年10月10日

インフルエンザ:患者最多に 

前週の1.5倍、新たに33万人

 厚生労働省は9日、約5000カ所の定点医療機関を9月28日~10月4日に受診した患者数が、前週(9月21~27日)の約1・5倍の6・40だったと発表した。今シーズン最多で、大半が新型インフルエンザ感染とみられる。この1週間の新たな患者は33万人で5~14歳が過半数の18万人を占めると推計している。

 定点1施設当たりの患者数は、大型連休があった前週に4・25と減少し、流行の拡大に歯止めがかかることが期待されたが、再び増加に転じた。昨冬の季節性インフルエンザに当てはめると、患者数が6を超えた4週間後が流行のピークになっており、今回は11月にピークを迎える可能性がある。

 都道府県別では▽北海道(1施設当たり16・99)▽福岡(同13・41)▽沖縄(同10・47)▽愛知(同10・39)の4道県で、1カ月以内に大流行の恐れがあるとされる「注意報レベル」の10を超えた。東京(9・60)、大阪(8・54)も高い水準のままで、厚労省は「大都市から流行が本格化している」と分析している。 【清水健二】

(毎日新聞、2009年10月10日)

****** 毎日新聞、2009年10月9日

新型インフルエンザ:ワクチン初出荷

 新型インフルエンザの国産ワクチンの出荷が9日始まった。初回出荷は59万人分。19日から医療従事者を対象に予防接種が始まる。

 国内では4社がワクチンを製造中で、この日出荷したのは、北里研究所(埼玉県北本市)▽化学及血清療法研究所(熊本市)▽デンカ生研(東京都中央区)--の3社。阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)のワクチンは20日の初出荷を予定している。国産ワクチンは年度内に約2700万人分を製造。接種対象者約5400万人の不足分を補う海外メーカーのワクチンは12月下旬にも輸入が始まる。

 北里研究所生物製剤研究所では、所内の工場で製造され5度に保たれた冷蔵庫で貯蔵されていたワクチンをトラックで初出荷。この日は計約9万4000人分(約18万8000回分)を大阪府や埼玉県の薬品販売会社に届ける。【清水健二、平川昌範】

(毎日新聞、2009年10月9日)

****** 日本産科婦人科学会、お知らせ

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザのQ&A

今回(平成21年9月28日)改定の要旨

① 新生児の厳重観察内容と異常が出現した場合の対応を加えたこと
② 予防投与について記述をまとめて、かつ投与日数10日間を明記したこと

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (一般の方対象)

         平成21年9月28日(6版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1:妊婦は肺炎などを合併しやすく、基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなりました。

Q2: 妊婦が新型インフルエンザワクチンを受けても大丈夫でしょうか?
A2: 安全かつ有効であると考えられています。季節性インフルエンザワクチンに関しては米国では長い歴史があり、安全性と有効性が証明されています。米国では毎年、約60万人の妊婦さんが季節性インフルエンザワクチン接種を受けていますが、大きな問題は起こっておりません。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの赤ちゃんについても有害事象は観察されていません。新型インフルエンザワクチンも季節性インフルエンザワクチンと同様な方法で作られているので同様に安全と考えられています。ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと世界保健機構(WHO)も考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨しています。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことにつながります(妊娠中にワクチンを受けると出生した赤ちゃんも数ヶ月間インフルエンザになりにくいことが証明されています)。

ワクチンの安全性に関しては以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q3:妊婦にインフルエンザ様症状(38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳)が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A3:インフルエンザであった場合、症状発現後48時間以内の抗インフルエンザ薬(タミフル)服用開始が重症化防止に最も効果があります。予め医療機関に電話をして早期に受診し、タミフルによる治療を受けます。この際、他の健康な妊婦や褥婦への感染を予防するために、かかりつけ産婦人科医を直接受診することは極力避け、地域の一般病院受診をお勧めします。あらかじめ受診する病院を決めておくと安心です。もし、一般病院での受診が困難な場合には、かかりつけ産婦人科医が対応します。この際にも事前に電話をして受診します。これは他の妊婦への接触を避けるために非常に重要な注意点になります。当然ですが、産科的問題(切迫流早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。いずれの病院へ受診する際にもマスク着用での受診をお勧めします。これは他の健康な方に感染させないための重要なエチケットとなります。 新型インフルエンザであっても簡易検査ではしばしばA型陰性の結果が出ることに注意が必要です。周囲の状況(その地域で新型インフルエンザが流行しているなど)から新型インフルエンザが疑われる場合には、簡易検査結果いかんにかかわらずタミフルの服用をお勧めします。妊婦は基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなったために、このようなお勧めをしています。

Q4: 妊婦の新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4: ただちに抗インフルエンザ薬(タミフル、75mg錠を1日2回、5日間)を服用するよう、お勧めします。

Q5: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)服用(予防目的)をお勧めします。ただし、予防される期間は予防薬を服用している期間に限られます。また、予防効果は100%ではありませんので予防的に服用している間であっても発熱が有った場合には受診することをお勧めします。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の安全性については以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q7: 抗インフルエンザ薬 (タミフル、リレンザ) の予防投与 (インフルエンザ発症前) と治療投与 (インフルエンザ発症後) で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)10日間
治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)10日間
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)5日間

Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q9: 母親が感染した場合、新生児・乳児への注意点は?
A9: 児への感染が心配されます。児の観察をしっかり行い、発症の早期発見に努めます。児が感染した場合の症状は「活気がない、母乳・ミルクの飲みが悪い、呼吸回数が多くて苦しそうだ、呼吸が止まったように見受けられる時がある、発熱がある、咳・鼻水・鼻閉がある、少しの刺激にも過敏に反応する」などですので、これらの有無に注意します。もし、これらのいずれかが出現した場合には、タミフルの早期投与開始が重症化防止に奏功する可能性があるので、できるだけ早く小児科医を受診します。児が未感染の場合、無防備な児への接触は児への感染危険を高めますので、児のケアや観察時には次Q&Aを順守します。

Q10: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A10: 母乳を介した新型インフルエンザ感染は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することができます。ただし、児と接触する前に手をよく洗い、清潔な服に着替えて(あるいはガウンを着用し)、マスクを着用します。また、接触中は咳をしないよう努力することをお勧めします。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能なかぎり別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えることをお勧めします。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる可能性は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられていますので通常に近い母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日
         5版 平成21年9月7日
         6版 平成21年9月28日

******

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (医療関係者対象)

         平成21年9月28日(6版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊婦は非妊婦に比して、新型インフルエンザに罹患した場合、重症化しやすいのでしょうか?
A1:妊婦は重症化しやすく、また死亡率が高いことが強く示唆されています。

Q2: 妊婦への新型インフルエンザワクチン投与の際、どのような説明が必要でしょうか?
A2: 季節性インフルエンザワクチンに関しては米国では長い歴史があり、安全性と有効性が証明されている。米国では季節性インフルエンザワクチンは毎年、約60万人の妊婦に接種されている。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの児についても有害事象は観察されていない。新型インフルエンザワクチンも季節性インフルエンザワクチンと同様な方法で作られているので同様に安全と考えられている。ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと考えられている。WHOも同様に考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨している。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことである。以上のようなことを説明し、ワクチン接種の必要性について理解して頂きます。

ワクチンの安全性に関しては以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q3: インフルエンザ様症状が出現した場合の対応については?
A3: 発熱があり、周囲の状況からインフルエンザが疑われる場合には、「できるだけ早い(可能であれば、症状出現後48時間以内)タミフル服用開始が重症化防止に有効である」ことを伝えます。受診する病院に関しては、あらかじめ決めておくよう指導します。妊婦から妊婦への感染防止という観点から妊婦が多数いる場所(例えば産科診療施設)への直接受診は避けるよう指導します。これはあくまでも感染妊婦と健康な妊婦や褥婦との接触を避ける意味であり、「接触が避けられる環境」下での産科施設での感染妊婦の診療は差し支えありません。妊婦には一般病院を受診する際にも事前に電話するよう指導します。また、マスク着用の上、受診することを勧めます。一般病院へのアクセスが種々の理由により時間がかかる、あるいは困難と判断された場合にはかかりつけ産婦人科医が対応します。当然ですが、産科的問題(切迫流・早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。ただし、院内感染防止対策に関しては最大限の努力を払い、感染妊婦と職員あるいは健康な妊婦・褥婦間に濃厚接触があったと考えられる場合は、濃厚接触者に対して速やかにタミフル、あるいはリレンザの予防投与を考慮します。
A型インフルエンザ感染が確認されたら、ただちにタミフルを投与します。妊婦には、「発症後48時間以内のタミフル服用開始(確認検査結果を待たず)が重症化防止に重要」と伝えます。新型インフルエンザであっても簡易検査でしばしばA型陰性の結果となることに注意が必要です。基礎疾患があり、インフルエンザが疑われる患者には簡易検査の結果いかんにかかわらずタミフルを投与すべきとの意見もあります。妊婦は基礎疾患がある患者と同等以上に重症化ハイリスク群と考えられていますので、周囲の状況や患者症状からインフルエンザが疑われる場合には簡易検査結果いかんにかかわらず同意後、躊躇なくタミフルを投与します。

Q4: インフルエンザ重症例とはどういう症例をさすのでしょうか?
A4: 肺炎を合併し、動脈血酸素化が不十分な状態になった場合、人工呼吸器が必要となりますので、それらに対応できる病院への搬送が必要となります。したがって、呼吸状態について常に注意を払う必要があります。また、若年者ではインフルエンザ脳症(言動におかしな点が出て来ます)や心筋炎もあり、これらも重症例です。

Q5: 妊婦が新型インフルエンザ患者と濃厚接触した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)の予防的投与(10日間)を行います。予防投与は感染危険を減少させますが、完全に予防するとはかぎりません。また、予防される期間は服用している期間に限られます。予防的服用をしている妊婦であっても発熱があった場合には受診するよう勧めます。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)は胎児に大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

抗インフルエンザ薬 (タミフル、リレンザ)の安全性については以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q7: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、本邦妊婦の場合にも同様な投与方法が推奨されます。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)10日間
治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)10日間
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)5日間

Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q9: 分娩前後に発症した場合は?
A9: タミフル(75mg錠を1日2回、5日間)による治療をただちに開始します。また、母親が分娩前7日以内あるいは分娩後に発症した場合、母児は可能なかぎり別室とし、児も感染している可能性があるので、厳重に経過観察します。児が感染した場合、想定される症状としては「活気不良、哺乳不良、多呼吸・酸素飽和度の低下などの呼吸障害、無呼吸発作、発熱、咳・鼻汁・鼻閉などの上気道症状、易刺激性」があるので、これらの有無に注意します。これらが出現した場合には直ちに簡易検査を行いますが、感染初期には陰性と出やすいので、陰性であっても症状の推移に十分注意し、必要に応じて小児科医(新生児担当小児科医)に相談・紹介あるいはタミフル投与(治療投与:4mg/kg 分2×5日間)を考慮します。一般にタミフルの副作用は下痢と嘔吐とされているが、新生児でのデータはありません。

児から児への感染予防のための隔離法や母児同室の場合の注意点については日本産婦人科医会ホームページに公開されている対応法を参考にします。あわせて、日本小児科学会ホームページの新型インフルエンザ関連情報 も参考にします。

Q10: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A10: 母乳を介した新型インフルエンザ感染は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することを母親に勧めます。ただし、児と接触する前の手洗い、清潔な服への着替え(あるいはガウン着用)、マスク着用の励行を指導します。また、接触中は咳をしないよう努力することを指導します。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能な限り別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えるよう指導します。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる危険は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられているので、通常に近い母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日
         5版 平成21年9月7日
         6版 平成21年9月28日