紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

チューバ・ジャズ…レイ・ドレイパー~ジョン・コルトレーン

2007-07-16 23:41:58 | ジョン・コルトレーン
チューバでジャズを演奏する稀有なアーティスト、「レイ・ドレイパー」に「コルトレーン」がサブ・リーダーとして参加した、希少のレコーディングが、このアルバムです。

アルバムタイトル…チューバ・ジャズ

パーソネル…リーダー;レイ・ドレイパー(tuba)
      サブ;ジョン・コルトレーン(ts)
      ジョン・メイヤーズ(p)
      スパンキー・デブレスト(b)  
      ラリー・リッチー(ds)

曲目…1.エッシーズ・ダンス、2.ドキシー、3.アイ・トーク・トゥ・ザ・トゥリーズ、4.イエスタデイズ、5.オレオ、6.エンジェル・アイズ

演奏について…最初に一言言っておくと、全6曲とも一つとて駄演は無い。
曲もドレイパーのオリジナル1曲、ロリンズの名作が2曲、スタンダードが3曲と非常にバランスが取れていて、申し分無いです。

ロリンズ作曲の2曲、「ドキシー」「オレオ」については、永遠のライバル&友である「コルトレーン」が激しくブロウして、シーツ・オブ・サウンドの原型のアドリブを奏でて、流石の演奏をしている。
「ドレイパー」はどちらかと言うと、多くにリズムセクション的な演奏をするが、
「オレオ」では、かなり「テクニック」を見せつけるソロをとる。
逆にピアノの「メイヤーズ」は、モンクを意識した様なハズシの美学のピアノを弾き、かなり自己主張している。
また、「デブレスト」のベースソロも的を射た好演で、良いサポーターとして機能している。

4曲目「イエスタデイズ」は、このアルバム中でナンバー1の名演だろう。
取分け「ドレイパー」のアドリブは、難解な楽器チューバで超絶技巧を見せつけ、これを受けた「コルトレーン」も遠慮は全くしないで、テナーをぶいぶい言わす。
ドラム&ベースのリズム・セクションの二人は、ガッツリとリズムを刻み、その合間をピアノの「メイヤーズ」が素晴らしいアドリブソロでうめる。
終局での5人の掛け合いは正に必聴物で、聞き終えて「万歳三唱」ですよ。

3曲目「アイ~」は、メロディアスな曲調と言うことも有り、各自も魅惑的なメロディのアドリブを奏でて、寛ぎや優しさを感ずる、寛大な演奏になっている。
この曲の演奏の様に、あえてぶいぶい言わさない演奏もかえって新鮮ですよ。

6曲目「エンジェル・アイズ」は冒頭はチューバの低音の魅力に参るのだが、その後の「コルトレーン」との絡みも素晴らしく、二人の楽器の対話がとても心地よい。
ピアノ、ベース、ドラムスの3人は、ここでは名脇役に徹する。

「ドレイパー」「コルトレーン」の異色名盤をご賞味あれ!!!

ホロヴィッツ・プレイズ・スクリアビン

2007-07-15 23:07:16 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
今日紹介のアルバムは、日本編集と言うか企画物ではありますが、20世紀最高のピアニスト、「ウラディミール・ホロヴィッツ」が、RCAに録音したスクリアビン作品の大半が収録されたアルバムです。
「ホロヴィッツ」と「スクリアビン」、祖国ロシアのご当曲&演奏ですので、相性は抜群です。
また、演奏テクニックについても、スクリアビンの曲は非常に難曲ですが、全盛期のホロヴィツですから、楽々弾きこなしています。

アルバムタイトル…ホロヴィッツ・プレイズ・スクリアビン

アーティスト…ウラディミール・ホロヴィッツ(p)

曲目…1.ピアノ・ソナタ第5番 作品53
  前奏曲集
   2.ハ長調 作品11の1
   3.嬰ハ短調 作品11の10
   4.ホ長調 作品11の9
   5.ト長調 作品11の3
   6.変ロ短調 作品11の16
   7.変ト長調 作品11の13
   8.変ホ短調 作品11の14
   9.嬰ヘ短調 作品15の2
  10.ロ長調 作品16の1
  11.ロ短調 作品13の6
  12.変ホ短調 作品16の4
  13.ト短調 作品27の1
  14.イ短調 作品51の2
  15.変ニ長調 作品48の3
  16.作品67の1
  17.作品59の
 ピアノ・ソナタ第3番 嬰ヘ短調 作品23
  18.ドラマティコ 嬰ヘ短調
  19.アレグレット 変ホ長調
  20.アンダンテ ロ短調
  21.プレスト・コン・フォーコ 嬰ヘ短調
  22.練習曲 変ロ短調
  23.練習曲 嬰ハ短調
  24.練習曲 嬰ニ短調

録音…1…1976年2月、2~21…1956年5月NY、22&23…1953年2月25日 カーネギーホール、24…1982年5月22日 ロンドン・ロイヤル・フェスティバル・ホール

演奏について…まず、「ホロヴィッツ」が50歳そこそこで、録音した前奏曲集だが、やはり演奏全般に若々しさや活力が漲っていて、一音一音も非常にパワフルで、正に「ヴィルトオーゾ・ピアニスト」の面目躍如の演奏です。

同様に「ピアノ・ソナタ第3番」も、前奏曲と同時期の録音だけに、起伏の激しい曲の特徴を余す所無く取らえて、劇的に且つ繊細に仕上げていて素晴らしい名演奏です。

それから、冒頭を飾る名曲、「ピアノ・ソナタ第5番」ですが、この時代は、巨匠・大家として油が乗り切った「ホロヴィッツ」だけに、知情意のバランスが最適で、細部まで良く思索されていて、録音されている同曲のベスト演奏でしょう。

3曲ある練習曲は、「変ロ短調」と「嬰ハ短調」が、このアルバムで最も若い(古い)1953年録音で、逆に「嬰ニ短調」は、最も老獪な(新しい)1982年の録音です。
若い時の2曲は、やはり相当エネルギッシュな演奏で、録音自体は古いので、音は良く無いですが、音の一粒一粒の粒子が立っていると分かるぐらい、生命力に満ち溢れています。
一方、晩年の録音「嬰ニ短調」ですが、例の歴史的事件「初来日時のひび割れた骨董演奏」よりも更に加齢している時の演奏ですが、何と若い時以上にパワフルでマッシブな演奏であることに、驚かされます。
しかし、この演奏は、燃え尽きる前の「最後のろうそくの明かり」だったのでしょう。
若い頃は無理して弾いていなくても、余裕を持って音がパワフルなのですが、晩年は持てる力を出し切って(力を振り絞って)ダイナミズムを捻出しているのです。

しかし、不世出の大ピアニストの最も得意な作曲家の貴重な演奏が録音された、とても良いアルバムです。

燃えるファンキーアルティスト、キャノンボール・アダレイが吹くボサノヴァ・アルバム

2007-07-14 23:45:14 | ジャズ・アルト・サックス
ファンキー・ジャズの旗手、「キャノンボール・アダレイ」が、若き日の「セルジオ・メンデス」率いる「ボサ・リオ・セクステット」と録音したのが、このアルバムです。
ファンキーとボサノヴァは合わないとお思いでしょうが、ところがどっこいこのアルバムは、燃えるアルトサックスと、ブラジリアン・リズムが心地よい融合をしており、ジャズ・ファン、ラテン・ファンともに納得できる、名アルバムとなったのです。

アルバムタイトル…「キャノンボールズ・ボサノヴァ」

パーソネル…リーダー;キャノンボール・アダレイ(as)
      セルジオ・メンデス(p)
      ペドロ・パウロ(tp)※2、4、5、7、8曲目
      パウロ・モウラ(as)※2、4、5、7、8曲目
      ドゥルヴァル・フェレイラ(g)
      オクタヴィオ・ベイリーJr.(b)
      ドン・ウン・ロマノ(ds)

曲目…1.クラウズ、2.ミーニャ・サウダージ、3.コルコヴァード、4.バチーダ・ヂフェレンテ、5.ジョイスのサンバ、6.グルーヴィー・サンバ、7.ワンス・アイ・ラヴド、8.サンバップス、9.コルコヴァード(別テイク)、10.クラウズ(シングル・ヴァージョン)

1962年12月7、10、11日録音

演奏について…オープニング&別テイクも収められている「クラウズ」は、非常にムーディな曲調の佳曲で、「キャノンボール」は、いつもよりは抑え目で、明るめのトーンで歌心あるフレーズのアドリブを吹く。
「メンデス」のピアノソロも、思ったよりもジャジーな解釈で、シングルトーン、ブロックトーンともにメロディアスなフレーズで好演している。

ボサノヴァ史上に名を残す名曲「コルコヴァード」も素晴らしい演奏で、ここではキャノンボールが、あえてライトに吹いて、素晴らしいアドリブを演っています。
ギターの「フェレイラ」、ピアノの「メンデス」も優れたソロと伴奏をしていて「極上のBGM風」に仕上げているのは流石です。

6曲目「グルーヴィー・サンバ」は、「メンデス」の作品ですが、この曲は非常にジャジーな作品であり、「キャノンボール」が、このアルバム中最もジャジーで硬派の演奏をしていて、「メンデス」のソロもラテンタッチを残しつつも、まんまジャズピアノの名アドリブを弾いて、とても良いトラックです。

7曲目「ワンス・アイ・ラヴド」は、「カルロス・ジョビン」の代表作で、ボサノヴァ・アルバムを企画したコンセプトでは、白眉となるべき演奏を期待されるが、「キャノンボール」は、これぞボサノヴァの見本の様な、寛ぎとゆとりのある、優しいバラードをアルトサックスで奏でる。
バックメンバーはサイドに徹するが、「ジョビン」は終盤で軽やかで魅惑的なソロを演って、この名曲を飾りつける。

8曲目「サンバップス」は、とてもブラジル(ミュージック)的な曲で、「キャノンボール」の演奏は、後々の「ナベサダ」のブラジルミュージックに直結する様な、音色とフレーズで、ジャズとラテンのコラボが見事な演奏となっています。

ここで紹介していない曲も、それぞれ良い演奏に仕上がっていますので、是非聴いて頂きたい、高品位な「ボサ・アルバム」です。

ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ

2007-07-13 23:58:30 | ジャズ・ピアノ・コンボ
ビル・エヴァンス…言わずもがな白人ジャズ・ピアニストの最高峰であり、そんな彼がオーケストラ&ストリングスをバックに従えて、クラシックのオリジナル曲を原曲とし、素材にして取り組んだ、意欲的な作品がこのアルバムです。

アルバムタイトル…ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ

パーソネル…リーダー;ビル・エヴァンス(p)
      チャック・イスラエル(b)
      ラリー・バンカー(ds)
      クラウス・オガーマン(編曲・指揮)
          オーケストラとストリングス

曲目…1.グラナダス(グラナドスのテーマによる)、2.ヴァルス(バッハのテーマによる)、3.プレリュード(スクリアビンのテーマのよる)、4.想い出の時、5.パヴァーヌ(フォーレのテーマによる)、6.エレジア、7.マイ・ベルズ、8.ブルー・インタールード(ショパンのテーマによる)

1965年9月29日(1,3,5,6曲) 12月16日(2,4,7,8曲)

演奏について…お薦め曲ですが、1曲目「グラナダス」は、曲のテーマが非常にロマンティックで、バックを彩るオケと、まるで「ジョン・ルイス」が弾いていると勘違いするほど、クラシカルで、リリックなプレイを奏でる「エヴァンス」に新たな魅力を発見するでしょう。

2曲目「ヴァルス」も、原曲のバッハの曲が素晴らしいので、この良い素材を活かして「エヴァンス」はストレートに料理するだけですが、そこは「エヴァンス」が「エヴァンス」たる所以で、原曲の素晴らしさに輪をかけて、スローテンポを選択して、素晴らしいピアノ・トリオ・インプロヴィゼーションに仕上げています。
「イスラエル」の締まっていて、カチッとくる硬派のベースもこの演奏のランク・アップに貢献しています。

5曲目「パヴァーヌ」も原曲自身が、非常にメロディックな美しい曲で、オーケストラの好演、サポートも良く、「エヴァンス」は品の良いリリカルなアドリブを演じています。
ここでの演奏もまるで、「ジョン・ルイス」が乗り移ったかの様な、クラシック的な知性を感じさせ、高貴な演奏に仕上げており、相変わらず「イスラエル」のベースも山椒の様にピリリと薬味を効かせています。

8曲目「ブルー~」は「オガーマン」のオーケストラ・アレンジの妙もあり、「エヴァンス」もショパンの曲らしく、ナイーブだが奥底にある芯の強さをチラ見せする様に、哀愁がありながらどこか知的な部分を感じさせる名演です。

6曲目「エレジア」は「オガーマン」のオリジナル曲と言うこともあり、このアルバム随一の映画音楽のような、色彩の強い絵画的な曲調で、オーケストレーションの非常に見事な演奏です。
「エヴァンス」は印象派のピアノ(ドビュッシー)を弾くように、空間を捉えて、良く思索されたアドリブを展開する。

4曲目「想い出の時」と7曲目「マイ・ベルズ」は2曲とも「エヴァンス」のオリジナル曲と言うこともあり、両曲とも「ジス・イズ・ビル・エヴァンス」と言えるぐらい一聴して、彼のピアノ演奏&曲と分かるほど、自らの個性を全面に打ち出しています。
正しく「エヴァンス」が「エヴァンス」たる所以の規範的な曲&演奏です。

ジス・イズ・ニュー~ケニー・ドリュー・クインテット(カルテット)

2007-07-12 23:20:01 | ジャズ・ピアノ・コンボ
この盤は、「ケニー・ドリュー」のカルテット演奏、クインテット演奏を収めた、彼の代表作です。
ピアノトリオ演奏には、「ケニー・ドリュー・トリオ」と言う名の超名盤(かつての幻の名盤)が、存在するのですが、ホーンが入ったアルバム演奏の中では、この盤が「ドリュー」のベスト演奏と言えるでしょう。
では、詳細を説明しましょう。

アルバムタイトル…ジス・イズ・ニュー

パーソネル…リーダー;ケニー・ドリュー(p)
      ドナルド・バード(tp)
      ハンク・モブレイ(ts)1曲目~3曲目のみ
      ウィルバー・ウェア(b)
      G・T・ホーガン(ds)

曲目について…1.ジス・イズ・ニュー、2.キャロル、3.イッツ・ユー・オア・ノー・ワン、4.ユーア・マイ・スリル、5.リトルT、6.ポールズ・パル、7.ホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー?

1957年3月28日(1~3曲目)、4月3日(4~7曲目)NYにて録音

演奏について…まず、アルバム全編を通じて、どの曲、どの演奏もハード・バップのお手本の様な演奏がなされている。

その中で、クインテット演奏では、特にハード・バップ的な曲調で、3曲目「イッツ~」が特徴が出ていて、メンバー各々も乗った演奏をしている。
「バード」の輝かしい音色のアドリブ、「ドリュー」の知性と感性と、そしてバッピッシュな解釈、技術を全面に押出したピアノソロ、抑えたテナーで渋く決める「モブレイ」、「ウェア」のベースソロも「ホーガン」の華麗なドラミングも古き良きハードバップ時代の規範の様な演奏であり、非常に感銘を受ける。

カルテット演奏では、4曲目「ユーア~」が、取分け「バード」のきらびやかな音色で最初から最後までトランペットを吹き切るバラッドに心を打たれる。
「ドリュー」のピアノは、これぞバップピアノだと言わんばかりに、やや崩したマイナー調をベースにして、相変わらず冴え渡る。

他には、オープニング・タイトル曲「ジス・イズ・ニュー」は、上記2曲と同等かそれ以上の名演である。
リズムは、私の大好きなラテンリズムで始まり、「バード」、「モブレイ」の壷を押さえた、それぞれのソロも良いが、それ以上に痺れるのは、この後のリーダー「ドリュー」のピアノアドリブで、このマイナー調の佳曲には、ドンピシャはまりのもの哀しいトーンとアドリブ・メロディで、正しく「ドリュー節」全開です。
こう言う曲調、それもハードバップの演奏をさせたら、ジャズ界広といえども、「ドリュー」の右に出るやつはいないでしょう。

6曲目の「ポールズ・パル」は、「バード」と「ドリュー」の演奏が素晴らしいのは勿論だが、特にバックリズムの二人、「ウェア」と「ホーガン」のアドリブソロの持分が多く、脇役にもスポットライトをあてた演奏です。

他の曲もハズレはなく、「ドリューの代表作」の看板に偽りはありません。

フィル・トークス・ウィズ・クイル~フィル・ウッズ

2007-07-11 23:53:31 | ジャズ・アルト・サックス
今日は以前一度紹介した事がある、サックスのバトル物、「フィル・ウッズ」&「ジーン・クイル」の、別のハード・バップ名盤で行きましょう。

アルバムタイトル…フィル・トークス・ウィズ・クイル

パーソネル…リーダー;フィル・ウッズ(as)
      ジーン・クイル(as)
      ボブ・コーウィン(p)
      ソニー・ダラス(b)
      ニック・スタビュラス(ds)

曲目…1.ドキシーⅠ、2.チュニジアの夜、3.ヒム・フォー・キム、4.ディア・オールド・ストックホルム、5.スクラップル・フロム・ジ・アップル、6.ドキシーⅡ

1957年9月11日 N・Yにて録音

演奏について…まず、甲乙点け難いお薦め曲として、非常にポピュラーで恐縮ですが、2曲目「チュニジアの夜」と、4曲目「ディア・オールド・ストックホルム」の有名曲二つを挙げましょう。

「チュニジアの夜」は、サックスバトルとしては、非常にやり易い曲で、二人の熱いアルトサックスが、まるでK1の試合の様に、激しくぶつかり合う。
最初は「クイル」が非常に優れたアドリブフレーズで、先制攻撃を仕掛けるのだが、「ウッズ」はそれ以上のド迫力のソロで、突き抜ける様なアルトを吹き切って、リズムセクションの3人は、このフロント二人を全面的に盛り上げる様にあくまでバックに徹する。
この炎のバトル演奏は本当に聴き物です。

4曲目「ディア・オールド~」は、チュニジアとは正反対の表現がなされているのが、とても興味深い。
この演奏では、熱いアルトバトルがなされず、お互いを尊重し、アドリブもメロディを大切にした吹き方で、ユニゾンや絡みも効果的に使用して、コンボの妙技を堪能できる。
アドリブについて言えば、「ウッズ」が割りとメロディ・ラインに忠実にストレートに吹き、「クイル」はお洒落な程度にくずして、それぞれの個性を出している。
ピアノ「コーウィン」も非常にハードバップ様式を大切にしたソロを奏でていて、好感が持てる。

3曲目「ヒム・フォー・キム」では、ここでは先行が「ウッズ」で、バッピッシュな聴き応えあるピアノアドリブを「コーウェン」が弾いた後、「クイル」が煽るようにアルトを絡めて、見事なフィニッシュで仕上げる。

5曲目「スクラップル~」は、非常にハイテンポに進み、フロントライン二人に負けじと、ベースの「ダラス」、ドラムス「スタビュラス」も激しく煽る様にリズムを刻み、それに触発されて「ウッズ」「クイル」も高速調で吹き捲る。

2曲録音されている「ドキシー」も2管らしい演奏で、収録曲全てが楽しめる、名盤です。

20世紀随一の有名声楽曲…オルフ~カルミナ・ブラーナ レヴァイン&シカゴ響

2007-07-10 23:56:19 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
世界一のシェイプ・アップ&ビルド・アップされたマッチョなオーケストラ、シカゴ交響楽団を、ジャームス・レヴァインが指揮した、20世紀の名曲オルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」を紹介しましょう。

とにかく、この迫力ある重厚な楽曲に最もフィットするオケは、世界中でも「シカゴ響」に勝る楽団は無いでしょう。
率いるレヴァインの指揮も、演奏の詳細はオケのメンバーの自発性に委ねて、自らは自然体でオケをまとめることだけに専念していますが、これが世界一のオケをリードするのにとても素晴らしい効果を上げています。

独唱は、ことさらバリトンの「ベルント・ヴァイクル」が優れた名唱で、この楽曲のステイタスを何ランクも上げています。

アルバムタイトル…カール・オルフ作曲~「カルミナ・ブラーナ」

演奏…ジャームス・レヴァイン指揮
   シカゴ交響楽団 
   グレン・エリン児童合唱団
   ジューン・アンダーソン(ソプラノ)
   フィリップ・クリーチ(ソプラノ)
   ベルント・ヴァイクル(バリトン)

曲詳細…1.おお、運の女神よ、2.運の女神の傷手を、「第1部」3.春の愉しい面ざしが、4.万物を太陽は整えおさめる、5.見よ、今や楽しい、6.おどり、7.森は花咲き繁る、8.小間物屋さん、色紅を下さい、9.円舞曲、10.たとえこの世界がみな、「第2部」11.胸のうちは、抑えようがない、12.むかしは湖に住まっていた、13.わしは院長さまだぞ、14.酒場に私が居るとにゃ、「第3部」15.愛神はどこもかしこも飛び廻る、16.昼間も夜も、何もかもが、17.少女が立っていた、18.私の胸をめぐっては、19.もし若者が乙女と一緒に、20.おいで、おいで、さぁ来ておくれ、21.天秤棒に心をかけて、22.今こそ愉悦の季節、23.とても、いとしい方、24.アヴェ、25.おお、運の女神よ

1984年7月 シカゴにて録音

お薦めの詩(歌)は…まず第1は、最も有名なオープニング&エンディングの「おお、運の女神よ」における合唱&フルオーケストラの迫力は感涙ものです。

次いでは上記の「ベルント・ヴァイクル」が独唱しているパートはいずれも聴き物です。4曲目「万物~」、第2部の11曲目「胸のうち~」、16曲目「昼間も~」、18曲目「私の胸~」この辺りは良いですよ。

それから、「おお、女神よ」の次に有名な、22曲目「今こそ~」の恋の讃歌のフルオケ&フル合唱も、パワー全開でマッシヴな演奏です。

他には、オーケストラ&合唱の曲でありながら、ピアノが使われていたり、打楽器を多く使用したりと、オーケストレーションの妙を満喫出来る、曲&アルバムです。

ギターの異邦人の最高傑作、ガボール・ザボ~スペルバインダー

2007-07-09 22:15:18 | ジャズ・ギター
このアルバムは、チコ・ハミルトン・クインテットのギタリストであった「ガボール・ザボ」の最高傑作であり、ジャズ・ギター・アルバムとしてだけでなく、ギター・トリオ+パーカッションと言う編成から、ラテン・インストゥルメント・アルバムとしても第一級の名盤である。

アルバムタイトル…スペルバインダー

パーソネル…リーダー;ガボール・ザボ(g)
      ロン・カーター(b)
      チコ・ハミルトン(ds)
      ヴィクター・パントーヤ(perc)
      ウィリー・ボボ(perc)

曲目…1.スペルバインダー、2.ウィッチ・クラフト、3.イット・ウォズ・ア・ヴェリー・グッド・イヤー、4.ジプシー・クイーン、5.バン・バン、6.チーター、7.マイ・フーリッシュ・ハート、8.ヤーニング、9.枯葉~スピーク・トゥ・ミー・オブ・ラヴ

1966年5月6日録音

演奏について…時々書いている時がありますが、このメンバーを見て皆様も思う事があるはずです。
そうです、失礼ながら、リーダー「ガボール・ザボ」が一番地味で無名ですね。
しかしながら、ラテン・ロックの元祖的なミュージシャンとして、またギター・プレイヤーとして、技術も非常に優れており、他の一流所に全く引けをとっていない処か、逆にリーダーとして全員を強烈に引っ張っています。

特にお薦め曲について書きますが、個人的には貴重な「ザボ」のヴォーカルも聴けて、哀愁のメロディにKO寸前の、5曲目「バン・バン」なんか最高ですね。
曲調は、ジャズ界の「ダンシング・オール・ナイト」ですね。

タイトル曲「スペルバインダー」は、序奏から、二人のパーカッショニストの激しいリズムに導かれて、「ザボ」の力強いアドリブソロが展開して、ギター・トリオにパーカッションが加わった編成の演奏として、正しく王道を突き進むような曲となっており、オープニングを飾るのに相応しい。

7曲目「マイ・フーリッシュ・ハート」…一言で言えば「泣ける…」
このアルバム随一の聴き物「ラテン・ラヴ・バラード」であり、「ザボ」のフレーズの一つ一つのロマンティシズム&センチメンタリズムは最高だし、演奏的に言えばエフェクターの使い方が抜群に上手いんです。
バックメンバーの中では、ここでは特に「ロン・カーター」が、ハードな指捌きと、ボウイングで随所に見せます。

4曲目「ジプシー・クイーン」は、各人の演奏技術とバランス感覚は、本アルバム中ナンバー1であろう。
「チコ」のお上品なシンバルワーク、「カーター」のズシンとくるベース、「ボボ」達の廻りを激しく煽るパーカッションと掛け声に乗って、「ザボ」が超絶技巧のギターをぶいぶい弾き廻す。
余談だが、幼い頃の「カルロス・サンタナ」が、自身のアイドルだったと言う「ガボール・ザボ」がここに居るのだ。

8曲目「枯葉」は、私の(聴く)ライフワークとして、代表的な曲ですが、ここでは、「ザボ」はまず非常に原曲に忠実に導入部分のメロディを奏でて、ここから一気にパーカッションの二人のリズムに乗って、「スピーク~」へと曲を変える。
「ガボ」は太目の音色でアドリブを展開して終焉となる。

ライトな演奏のボサノヴァ、2曲目「ウィッチクラフト」は、寛ぎ系のサウンドで、「ザボ」とパーカッションの演奏は勿論素晴らしいのだが、特にブラシ&シンバル演奏に徹している「ハミルトン」が、目立たないが影のMVP級の活躍を見せる。

3曲目「イット~」は、「カーター」のベースがグイグイとドライヴィングして、パーカッションとドラムスとのトライアングル・リズム・サポートが完璧に機能して「ザボ」を援護する。

グレン・グールド新録音’81~ゴールドベルク変奏曲

2007-07-08 22:16:46 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
随分とジャズばかり紹介しておりまして、今日は久しぶりにクラシックの王道的なアルバムを紹介したいと思います。

奇才、孤高の天才と言われるピアニスト、「グレン・グールド」が突然死の直前に再録音したのが、1981年録音の、この「ゴールドベルク変奏曲」です。
この曲は「グールド」にとっても、クラシック音楽界にとっても非常にエポックメイキングな曲でして、おりしも奇才「グールド」がデビューし、一世風靡を巻き起こしたのが、旧録音1955年の「ゴールドベルク変奏曲」だったからです。

「ゴールドベルク変奏曲」旧盤は、非常にスピーディな解釈で、「グールド」の若々しさと閃きが随所に見られる、正しく天才がなせる演奏で、クラシック業界&音楽業界にセンセーショナルを引き起こしました。
又、「グールド」は1964年に、ライブ演奏(ステージ演奏)からの引退を表明し、その後の彼の演奏は、レコードからしか聴く事ができなくなりました。
そして、そのレコーディングにしても、生来の奇行癖や人嫌いもあり、多くのアルバムを出す人でもありませんでした。
その中で、このアルバムはデビュー盤以来の再録音と言うこともあって、満を持しての登場となった矢先の訃報により、追悼盤となったのです。

この新録音は、演奏解釈アプローチはデビューアルバムとは全く異なり、一聴した時、「グールド」の演奏だと教わらなければ、同一人物が演奏した曲と思えない程違います。
序奏のアリアから、非常にゆっくりのテンポで演奏し、ジックリと空間を活かした、絵画で言うところの水墨画のような「ワビサビ」をイメージさせられます。
アリア以降も、旧盤に比べて全体的にもゆっくり調で、そして「音符の強弱」、「ディテイルの描写」、そして取分け「間」について、非常に思索され、熟考された「グールド」の解釈が、とにかく際立っている演奏なのです。

全30曲の変奏の詳細については、私のCDの解説書に、作曲家の諸井誠先生の専門的な解説がありますので、興味ある方は是非このアルバムをご購入下さい。
※現在発売のアルバムに、諸井先生の解説が使用されているかどうかは、私自身は知りませんので、間違いでしたら始めに謝っておきます。

私の個人的な見解ですが、クラシック界のレコードに於いて、「3大バッハ演奏」と言うのを勝手に決め手言っています。
1つは、以前紹介した「リヒター指揮・ミュンヘン・バッハ・オーケストラ」の旧盤、2つめがこのアルバム、3つめは、「パブロ・カザルス演奏の、無伴奏チェロ組曲全曲」の有名な3アルバムです。

アルバムタイトル…バッハ作曲 BWV988 「ゴールドベルク変奏曲」

演奏…グレン・グールド(p)

1981年4月22日、5月15日、19日、25日録音

とにかく理屈ぬきで聴いて下さい。

チャーリー・ラウズ~「ヤー!」

2007-07-07 23:55:08 | ジャズ・テナー・サックス
今日紹介するアルバムは、「セロニアス・モンク・カルテット」のテナーマンとして知られる、「チャーリー・ラウズ」の代表作です。
バックの3人はチョイ渋めのメンバーですが、そこはかとなく、リーダー「ラウズ」をしっかりサポートしています。

アルバムタイトル…「ヤー!」

パーソネル…リーダー;チャーリー・ラウズ(ts)
      ビリー・ガードナー(p)
      ペック・モリソン(b)
      デイヴ・ベイリー(ds)

曲目…1.恋の味をご存知ないのね、2.リル・ラウジン、3.ステラ・バイ・スターライト、4.ビリーズ・ブルース、5.ラウゼス・ポイント、6.ノー・グレーター・ラヴ

演奏について…それでは、お薦め曲を言いましょう。
まず、参加メンバー作曲のオリジナル曲だが、「ビリーズ・ブルース」が非常にソウルフルで、ジャジーなナンバーで聴き応えがある。
「ラウズ」と「ガードナー」の丁々発止も良いし、アルバム唯一のベースの「ペック・モリソン」のアドリブソロも、この演奏を2ランクぐらい上級にしている。

3曲目「ステラ・バイ・スターライト」は、モンク学校?出身の人とは思えないくらいにロマンティックな名旋律&フレーズを奏でる「ラウズ」の演奏技量に感激する。
同じくロマンティックなブロックコードを繰り出す「ガードナー」の演奏も目を見張るものがあり、両者によって素晴らしいバラードが仕上がった。

オープニング曲「恋の味をご存知ないのね」は、飾り付けの少ない非常にストレートな表現・演奏ではあるが、「ラウズ」のテナー・ソロは装飾が少ないにも拘らず、とても歌心溢れていて、すごく魅了される。
「ベイリー」のブラシ・ワークはじめ、バック3人はとても控え目だが、しっかりとしたサポートをしています。

5曲目「ラウゼス・ポイント」は、ファンキーでアップテンポな曲だが、「ラウズ」はとても乗った演奏をしており、ベース「モリソン」も激しいドライヴィングの演奏をして、それに触発されて、ピアノ「ガードナー」も乗ってきて、中途では遊びで他曲のフレーズを弾いたりして、曲にアクセントをつけている。
「ベイリー」はバランスの良いタイムキーピングをして、4人の融合を図っていて、さすがベテランドラマーの職人仕事だと、うならせる。

ラストナンバー「ノー・グレーター・ラヴ」も、非常に寛ぎと余裕を持たせた、ミドルテンポ・バラードで、「ラウズ」以下全員も、緊張感などとは全く無縁の、大人の遊びジャズを演っていて、終曲を飾るのに相応しい演奏です。

「枯葉」名演の一枚…ウィントン・ケリー~「枯葉」

2007-07-06 23:53:20 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
ジャズの名演に枚挙に暇が無い名曲「枯葉」のこれまた名アルバムを今晩は紹介します。

アルバムタイトル…「枯葉」

パーソネル…リーダー;ウィントン・ケリー(p)
      ポール・チェンバース(b)
      サム・ジョーンズ(b) 
      ジミー・コブ(ds)

曲目…1.降っても晴れても、2.メイク・ザ・マン・ラヴ・ミー、3.枯葉、4.飾りのついた四輪馬車、5.ジョーズ・アヴェニュー、6.サッシー、7.ラヴ・アイヴ・ファウンド・ユー、8.風と共に去りぬ、9.チャーズ・ブルース

1961年7月20・21日録音

演奏について…やはり、アルバム表題曲「枯葉」が第一のお薦め曲であることは間違いない。
この演奏には「ケリー」の己を追い込み過ぎない余裕のあるピアノ・インプロビゼーションの魅力がタップリで、ほぼ同時期に録音された「枯葉」のピアノ・トリオ演奏の決定版「ビル・エヴァンス盤」と比べて、どちらが勝かと問うたら、万人が「エヴァンス」と言うでしょうが、だからと言って「ケリー盤」の価値が落ちる事は100%ないでしょう。
何故ならば、何度も言っておりますが、自らを究極に追い込むジャズも、寛ぎと余裕&楽しさ満載のジャズも、音楽としての普遍さは何ら変わりはなく、時に「追い込み型ジャズ」は聴いていて苦しくなる事(つまり苦痛になる時)があるが、寛ぎジャズにはそれは絶対に無いからです。
かと言って「寛ぎ系ジャズ」は、決してふざけた演奏をしている訳では無いので、何回もの視聴に絶えうる事ができる。
言わば、「普遍的価値」は、逆にこう言う演奏の方が実は高いのかもしれません。
何か学者気取りの発言をしてしまってすみません。

次いでは、正統派4ビートのブルース調佳曲の6曲目「サッシー」は、トリオ3人の持ち味がバランス良く形成された好演です。
「ケリー」の遊び心と、ほんの一寸の「哀愁」スパイスを効かせたシングル・トーンと、空間を活かすドラミングをする「ジミー・コブ」、そしてベースソロも素敵で、言う事なしの演奏です。

非常に短い曲だが、7曲目「ラヴ・アイヴ~」は、乙女心を直撃する様なラヴ・バラードで、こう言う曲を弾かせたら、ジャズ界広しと言えども「ケリー」の右に出る者はいない。
いや、「トミフラ」「ケニー・ドリュー」「レイ・ブライアント」あたりは好勝負をしそうかな。

2曲目「メイク・ザ~」も7曲目とほぼ同系統の演奏で、一言で言うと心が切なくなるバラッドです。
「コブ」のブラシ・ワーク、「チェンバース」のサポート・ベースも品良く「ケリー」をアシストしていて、goodです。

オープニング曲「降っても晴れても」の、「ケリー」のブロックコード一小節だけで、このアルバムの楽しさと期待が聴衆に伝わってくる。
演奏しているメンバー(トリオ全員)が最強の「マイルス・クインテット」のリズム・セクションであり、粗を探しても、悪い演奏になる理由は全く見つからない。
チェンバースの音色だが、VEE JAYの録音だと、ブルーノートなどの演奏よりは、締まったトーンで録音されていて、聴いているととても新鮮な印象です。

ビバップ・リヴィジテッド!~チャールス・マクファーソン

2007-07-05 23:58:25 | ジャズ・アルト・サックス
今日は、モード&フリーの全盛時代に、あえて古き良き時代?的な「ビバップ」スタイルでアルトサックスを吹いていた、チャールス・マクファーソンの初リーダーアルバムを紹介します。
しかし、この「マクファーソン」はただの懐古趣味男ではございません。
2日続けてご紹介した、「テッド・カーソン」達とともに、「ミンガス・ワークショップ」のメンバーでもあり、このアルバム録音時にも、まだメンバーとして在籍し、稼動していたのですから、モードやフリースタイルを理解し踏襲しつつも、あえてこのレコーディングに挑んだ、「勇気ある挑戦」と見るべきでしょう。
では詳細を。

アルバムタイトル…ビバップ・リヴィジテッド!

パーソネル…リーダー;チャールス・マクファーソン(as)
      カーメル・ジョーンズ(tp)※1~4、6曲目
      バリー・ハリス(p)
      ネルソン・ボイド(b)
      アル・ヒース(ds)

曲目…1.ホット・ハウス、2.ノスタルジア、3.ヴェリエイションズ・オン・ア・ブルース・バイ・バード、4.ウェイル、5.エンブレイサブル・ユー、6.シ・シ

1964年11月20日 録音

演奏について…まず、演奏曲目をご覧になると分かるように、チャーリー・パーカー縁の曲がズラリと並んでいます。

この中で最もエキサイティングで、ビバップの真髄とも言える演奏は、4曲目バド・パウエル作曲の「ウェイル」でしょうか。
「マクファーソン」、「ジョーンズ」、「ハリス」の3人それぞれが素晴らしいアドリブ・ソロを演奏して、心を揺り動かされ、特に後半のクライマックスで、アルト・サックスとトランペットが絡む「バトル」は最高に盛り上がりを見せます。

5曲目「エンブレイサブル・ユー」のトランペットが抜けたカルテットでの、バラード演奏も見事です。
「マクファーソン」は、まるで「パーカー」が乗り移ったかのような、炎のアルトを吹き、それをサポートするバップピアノの化身「ハリス」のつぼを射た伴奏(演奏)も見事に調和を見せて、このアルバムに咲く一輪の花の様な美しき曲に仕上がっています。

オープニング曲「ホット・ハウス」は、先だって紹介した「タッド・ダメロン」オリジナル曲で、鼻から「マクファーソン」が熱いアドリブソロで飛ばし、全員を煽り始める。
受けた「ジョーンズ」はやや抑え目に、しかし的確に流麗なメロディを紡いでいき、「バリー・ハリス」は、完全に仮想「バド」状態になって、この曲のアドリブ演奏は秀逸で、ビバップの申子と言える名フレーズを弾く。
「ボイド」もガッツリ骨太のベースでグイグイ攻めて、全員がトランス状態になって曲を〆る。

パーカー作、6曲目「シ・シ」でも「マクファーソン」がアルトでブイブイ言わせた後、「ジョーンズ」が華麗で明るいトーンのアドリブソロで応戦する。
「ハリス」はバド・パウエル的に少しだけ音を崩して、和音を中心に組み立てて飾りつけを施す。
ドラムス「ヒース」のソロも当然あって、最後は全員のユニゾンで締め括られる。
これぞ、60年代の「ビバップの王道」ですね。

昨日サイドメンとして紹介した、テッド・カーソンのワンホーンアルバム

2007-07-04 22:43:39 | ジャズ・トランペット
昨日ミンガスのアルバムで、ブリリアントな音色で名盤に色を添えた「テッド・カーソン」がリーダーとなったワン・ホーン・アルバムを紹介します。
昨日の反逆者的な演奏、コンセプトとはガラリと変わって、楽しく健康的でとても美しいアルバムに仕上がっています。

アルバムタイトル…ファイアー・ダウン・ビロウ

パーソネル…リーダー;テッド・カーソン(tp)
      ギルド・マホーネス(p)
      ジョージ・タッカー(b)
      ロイ・ヘインズ(ds)
      モンテゴ・ジョー(conga)※1、3~5曲目

曲目…1.ファイアー・ダウン・ビロウ、2.ザ・ヴェリー・ヤング、3.ベイビー・ハズ・ゴーン・バイ・バイ、4.ショウ・ミー、5.恋に恋して、6.オンリー・フォーエヴァー

演奏について…最初に言っておくと、全6曲ともスタンダードナンバーの演奏であり、昨日の様な演奏内容を期待されると、見事に裏切られるでしょう。
しかし、この盤でのカーソンの演奏には寛ぎと余裕が感じられて、大名盤「ミンガス・プレゼンツ・ミンガス」の片棒を担いだカーソンではありますが、案外、彼の演奏の本質と言うのは、この盤で見られる演奏の方なのかもしれません。

オープニングタイトル曲「ファイアー~」は、コンガの「モンテゴ」の軽快&スーパーテクのリズムに乗って、「カーソン」が明るいトーンで、このカリプソ(ラテン曲)を気持ち良く吹く。
バック・サポートのヘインズのタイム・キーピングも見事で、ラテンタッチの「マホーネス」のブロックコードも彩を寄せる。
このアルバムのコンセプト(明るさ、楽しさ)をのっけから聴衆に認識させるのに充分な名演です。

5曲目「恋に恋して」は、非常に軽快な4ビートジャズで、「カーソン」は明るめの音色で、ミュートプレイに終始する。
「マイルス」の様なクールだが凄みのある様なミュートではないが、ほのぼの吹くミュートも(ファーマーほどほのぼのではないが…)味わいがあって良いと思う。

2曲目「ザ・ヴェリー~」と終曲「オンリー~」はバラード曲で、「カーソン」のとてもメロディックなプレイが堪能できて、彼の真の実力を見せつけられる。
ピアノ「マホーネス」の非常に控えめでお上品なアドリブも良く、リズムセクションの大御所二人は、もちろん完璧なバック演奏をしていて、他言は無用です。

4曲目「ショウ・ミー」はピアノレスのワンホーン(ミュートプレイ)演奏で、「カーソン」の歌心ある演奏にご注目&ご一聴下さい。
ドライヴィング推進力がすごい、リズム・セクション3人のプレイも必聴物です。

3曲目「ベイビー~」は、「カーソン」自身、とても肩から力の抜けたプレイをしていて、楽しんで演るジャズの本質というのはこういうプレイだろうと言うのを再認識させられます。

怒る魂が叫ぶ…チャールス・ミンガス・プレゼンツ・チャールス・ミンガス

2007-07-03 23:11:02 | ジャズ・ベース
最初に一言言っておきましょう。
カテゴリーは、「ミンガス」のリーダーアルバムなので、「ジャズ・その他」の項目に入れましたが、「エリック・ドルフィー」が参加しているので、「ドルフィー」の項目に入れようか最後まで考えた結果こうなりました。
このアルバムは、とにかく怒れる「ミンガス」ジャズの最高傑作であります。
「ミンガス」としては、小編成?のピアノレスカルテット演奏ですが、フロント2管が「エリック・ドルフィー」と「テッド・カーソン」ですので、メンバー的には申し分無いですね。
演奏曲は4曲だけですが、非常に内容が濃い4曲ですので、このアルバムを聴かれた方は、きっと満足されると思います。

アルバムタイトル…チャールス・ミンガス・プレゼンツ・チャールス・ミンガス

パーソネル…リーダー;チャールス・ミンガス(b)
      エリック・ドルフィー(as、b-cl)
      テッド・カーソン(tp)
      ダニー・リッチモンド(ds)

曲目…1.フォーク・フォームズ№1、2.フォーバス知事の寓話、3.ホワット・ラヴ、4.汝の母もしフライトの妻なりせば

1960年10月20日 録音

演奏について…アルバム曲中最も有名な曲(演奏)は、ミンガス・ミュージックの代名詞、2曲目の「フォーバス知事の寓話」である。
とにかく力強くグイグイ引っ張る「ミンガス」のベース音に、「ドルフィー」がアルトサックスの絶叫で絡みつく。
曲の所々で、皆でフォーバス知事を揶揄するトーキング・セッションも、曲の高揚と、怒り魂の燃え上がりに一役買っている。

3曲目「ホワット・ラヴ」は、表面的には怒れる「ミンガス・ミュージック」には、やや不釣合いなバラード的な曲調で、特に序奏部分の「カーソン」のブリリアントでメロディックなアドリブには目を見張らされる。
しかし、これはほんの序の口で、本当のクライマックスはこの後やってくる。
それは、曲中から「ミンガス」が「怒り」を心の奥底にあえて閉まって、表現するベース・ソロから始まる。
この後、「ドルフィー」がアルトサックスで熱き「絶叫」を言葉のシャワー如く、雨あられの様に吹きまくる。
それに対して「ミンガス」は、風林火山の動かない山の様に、大きく静かに、しかし野太いベース・サウンド&ソロで応戦する。
この二人の掛け合い・バトル・デュオは、このアルバム全体を通してのベスト1の白眉の名演奏である。

4曲目「汝の母~」は、名曲「オール・ザ・シングス・ユー・アー」を元にディフォルメして書かれた曲だが、原曲の美しさは殆ど分からないと言って良い。
しかし、この曲でもペットの「カーソン」&バスクラ「ドルフィー」のアドリブ・ソロは秀逸で、「ミンガス」も前曲とは異なって、自ら前面に出てきて、非常に攻撃的で熱いベース・ワークで、「ドルフィー」をアシストする。
その二人を更にサポートする「リッチモンド」も、アグレッシヴな演奏で煽りまくり、この曲のフィナーレはカルテット演奏と思えないほど重厚ですさまじい。

オープニング曲「フォーク~」は、4人がフリージャズの演奏の様に、それぞれ自己主張をしたアドリブソロを奏でるが、しかし時代はまだモード&フリーの入口なので、コンボとしての統制はしっかり取れている。
この中でもリーダー「ミンガス」の分厚いベースサウンドが、各人のファイティングスピリットを呼び起こす火付け役になっているのは、誰にも異論の無い所であろうし、さすが名バンドリーダーの貫禄だと認識させられる。


コルトレーン初期のサイドメン参加の名盤…ザ・キャッツ~トミー・フラナガン&ジョン・コルトレーン

2007-07-02 23:35:50 | ジョン・コルトレーン
時は1957年、「コルトレーン」がやっとジャズ界&世間に認知されつつあった時、彼は多くのセッションに参加して、自己のサックススキルを研鑽していた。
この「ザ・キャッツ」は、そんな「コルトレーン」とピアニスト「トミー・フラナガン」が世に送った、双頭リーダーアルバムです。
※因みに、「キャッツ」とは、英語で男性ジャズマン(メン)を意味する俗語であり、このアルバムでは正しく「cats」らしい「cats」が集まった熱き演奏がなされていて、「コルトレーン」達にとっても若き1ページを彩った名盤になっています。

アルバムタイトル…「ザ・キャッツ」

パーソネル…リーダー;トミー・フラナガン(p)
      サブ;ジョン・コルトレーン(ts)
      アイドリース・シュリーマン(tp)
      ダグ・ワトキンス(b)
      ケニー・バレル(g)
      ルイ・ヘイス(ds)

曲目…1.マイナー・ミスハップ、2.ハウ・ロング・ハズ・ジス・ビーン・ゴーイング・オン?、3.エクリプソ、4.ソラシウム、5.トミーズ・タイム

1957年4月18日録音

演奏について…まず、お薦め曲をいくつか紹介すると、「トミー・フラナガン」作曲で彼の代表作の3曲目「エクリプソ」がラテン調で、セクステット全員が非常にノリが良く好演している。
リズムの3人(フラナガン、ワトキンス&ヘイス)を起点として、丁寧なアドリブを吹く「コルトレーン」、華麗なソロの「シュリーマン」、とてもジャジーで技巧が冴える「バレル」、と皆それぞれ個性的な素晴らしい演奏をしている。

これと同評価で、アルバム唯一の「フラナガン・ピアノ・トリオ」の奏でるスタンダードナンバーの2曲目「ハウ・ロング~」は、「フラナガン」の魅惑的なソロと「ワトキンス」のベースライン演奏の魅力も合わさって極上のトリオ演奏になっていて必聴すべし。
ナオさん流のポエム的言い方をすれば、早朝の静寂の湖面を、静かにそして優雅に泳ぐ一羽の白鳥をイメージした様な演奏と言うと分かり易いかなぁ?

個人的には4曲目「ソラシウム」が、遊び心と寛ぎに溢れた演奏でとても趣味に合い、曲調もハード・バップお決まりのマイナー・メロディで最高です。
演奏では、特に「フラナガン」が、ベサメムーチョやショパンの練習曲などの別の曲の美味しいところをアドリブフレーズとして、つまみ喰いするところや、「シュリーマン」のトランペットもとても流麗で歌心がありとても楽しいです。
「コルトレーン」はあくまでも真面目にアドリブを吹き、「バレル」はこの時代の黒人ナンバー1ギタリストたる、余裕があって名フレーズを連発していて、とにかくかっこ良いんです。

オープニング曲「マイナー~」もその名の通り、マイナー調の佳曲で、若き「キャッツ」のハードな演奏が、胸を躍らせる。

ラストナンバー「トミーズ・タイム」は、ミディアム・テンポのブルースで、やはり曲調的に万人の予想通り「バレル」が十八番で、素晴らしいアドリブソロを弾いている。
「シュリーマン」は高らかに吹き切って、メンバー中一番知名度が低い?彼の意地の演奏を見せつけられる。(※実際はシュリーマンの知名度が低いのではなくて、他のメンバーがBIGネームで凄すぎるだけなんだけどね。)
「トレーン」は、だんだんソロフレーズが流麗になってきており、このアルバムで彼のベストプレイはこの曲であろう。
「ワトキンス」の長めのソロも、ハードでいながらどこかウォームで、goodな演奏です。

最後に「フラナガン」は全般に渡って、可憐なアドリブソロを多発して、このアルバムを大変魅惑的な作品に仕上げている。