紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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清々しい!ヘルベルト・ブロムシュテット指揮/ドレスデン・シュターツカペレ~ブルックナー交響曲第7番

2008-03-18 22:09:25 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
ここで展開される音楽を一言で言うなら、バカラ製のショット・グラスの様な…重厚で、崇高で、透明感が鋭利…と言ったらようだろうか?

大河の様にゆったり流れる雄大さよりも、とても清々しく透き通る、清流の様なイメージの演奏がされているのです。

ブルックナーの朴訥さに加えて、人間の手が入った、つまり人工美の美しさが加えられた名演…そう、世界遺産で言えば、自然に調和した…白鳥城…ノイシュバシュタイン城の様な演奏なんですよ。

煌びやかでは無いが…とても優美、優雅で…心を清らかにしてくれます。

アルバムタイトル…「ブルックナー交響曲第7番ホ長調」

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮

ドレスデン・シュターツカペレ

第1楽章…アレグロ・モデラート(21:07)

第2楽章…アダージョ;非常に荘厳に、かつ非常にゆっくりと(24:32)

第3楽章…スケルツォ;非常に速くートリオ;やや遅く(9:39)

第4楽章…フィナーレ;快速に、しかし速すぎずに(12:25)

1980年6月30日~7月3日 東ドイツ、ドレスデン、ルカ教会にて録音

原盤…DENON 発売…日本コロムビア
CD番号…33C37-7960

演奏について…前説で殆ど述べてしまっているが、とにかく透明度が抜群に高い演奏なんです。
管楽器も弦楽器も、とにかく透き通っていて…しかし、決してガラス細工の様に繊細で壊れ易い訳ではない。
バカラのショット・グラスと比喩したが、透明で有りながらもガッチリとした重厚さを持っている。
「ブルックナー」の演奏と言えば、厳格、或いは朴訥のどちらかの範疇に属する演奏が多いと思う。
或いは、ものすごく自然体で、マッシブな音の洪水、楽器群に見も心も自然に任せて委ねる演奏、が多いのも事実です。

しかし、「ブロムシュテット」&「ドレスデン・シュターツカペレ」は、それらの演奏のどれとも違うんです。

自然体に身を任せる部分が有るんですが、その自然は穏やかな春ではなく、かと言って厳格な真冬ではない。
良く晴れた冬の暖かい日中…或いは、無風で暖かさをほんのり感ずる様な晩秋が相応しいだろうと思う。
甘すぎず、厳しすぎず…この背景はとても中庸である。

オーケストラについて言えば、この当時の「シュターツカペレ・ドレスデン」は、東欧諸国のオケの中では、最も洗練されていた楽団と言っても良いでしょう。
いかにも無骨な…いや、野暮ったい楽団ではないので有るが、しかし、西側のオケ程、洗練されてもいない。
つまり、シカゴ・シンフォニーの様なヴィルトオーゾ集団でも無ければ、ウィーン・フィルの様な優雅さがある訳ではない。
しかし、無骨な国の中のさりげない洗練…実はこれがこの名演奏の味噌(秘薬)だと激しく思う。

この自然の秘薬によって、正しく「ブルックナー」と言う作曲家を表現するのに…他の指揮者、楽団との決定的な違いを導き出しているんです。

特に第1楽章~第2楽章の出来は抜群だと思います。
透明感を全面に押し出した指揮&演奏で、得も言えぬ美空間を演出しているのです。

逆に、第3楽章では、かなりマッシブでパワフルな演奏をするんですが、この楽章、この演奏表現は、「ブロムシュテット」&「ドレスデン・SK」の持ち味を少し殺してしまった感が有るんですが…。
彼等には激しい、厳しい(厳し過ぎる)表現は似合わない。
もう少し抑制した演奏の方が良かったかも?

第4楽章の表現もまずまずでしょう。
荘厳さと透明感が程好く混じって、精緻さが有っても、細々しさは入っていない。
管楽器の透き通った響きが…とにかく美しいんですよ。

この演奏…最後まで聴いていると、とにかく心が洗われる気がします。
そう、クールではなく、クリヤーなんです。どこまでもクリヤーなんです!!!


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