鴉工房: がんばれ!図工の時間フォーラム
「鴉工房」corvo様は、古代生物の図鑑の絵などを描かれる画家さんです。とても造詣の深い方で、いつも大変勉強になるお話を伺えます。
今日のお話は、小・中学校ですっかり減らされてしまった「図工」の重要性をもっとアピールしよう、という催し物に参加された際の様子を書かれておいでです。
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なぜ、「がんばれ!図工の時間」いう活動が始まったのかというと、平成14年度に小学校の図工の時間数が削減されたことが発端である。
高学年は年間70時間から50時間。中学年は60時間に削減されてしまったのである。これまで週2時間連続で確保されていた授業が、隔週で週2時間と1時間が交互に入るという変則パターンになってしまっているのが現状である。これでは満足に実技の授業を行うことは困難だろう。道具の準備や片付けに時間がとられるし、正解のない完成に向かって様々な考えをめぐらせ、手を動かさなくては、作品を作り上げることは難しい。
(中略)
今回のようなフォーラムは自分自身の認識を新たにしたり、何か協力することは出来ないかと考えるきっかけにはなるのだけど、本当に聞いてほしい人、認識を改めてほしい人には、残念ながらそのメッセージは届かない。この場に来ているのは、図工教育に関心が高いか、教育現場に携わっている人たちばかりである。当然、参加希望者が時間を作って集まってくるのだから、最初から関心のない人間が聞きにくるということはまずありえない。
いくらインターネットが発達したといっても、メディアとしてはあまりに脆弱である。僕がネットの片隅でblogを書いたところでその影響力はたかがしれているが、何かのきっかけになってくれればと一縷の望みを込めていきたい。
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私は子供の頃は、如何にも下手の横好きな図工好きでした。私が小・中学生の頃は、今よりもっと写生がたびたびあって、街の中や神社や公園に出かけては、絵を描いていました。素晴らしい絵を描く同級生もいましたし、ずっとお喋りばかりしてる子や、全然絵なんか描かずに遊びまくっていた男子も居ました。でも、そんな自由でゆっくりとした時間を過ごせて、楽しかったなァという記憶しかありません。絵が苦手な子も、粘土が凄く上手だったり、版画の彫りが上手かったり、ポスターを描くのに、何日も居残りしてレタリングを完成させた子もいました。
「図工」はいわゆる「五教科」とも違う個性が、光る時間だったように思います。教室でみっしり勉強するのとは違う脳の使い方をするのも、大切だと思うんです。図工だけでなく「音楽」の時間もずっと減らされています。美術館に絵画を鑑賞しに行くのも、レコードで名曲を鑑賞するのも、近代美術の歴史やモーツァルトやバッハの名前を覚えるのも、とても大切な「教養の時間」だと思います。
私はごく単純に、生きていくのに色々な物事を知っていた方が、しんどい時、苦しい時の慰めや励みになると思うんです。将来何の役に立つとか、立たないとかではなく、ふと何かの時に「歓喜の歌」の最終楽章の調べを思い出して、頑張ろうと思ったり、モネの「睡蓮」の穏やかで綾かで濃密な緑の空気を思い出して、深呼吸してみたりする事が出来たら、少しだけ背負っている荷物が軽くなる気持ちになりませんか?
成長期の子供たちは、どんな芽が伸びるのか、どんな根を持っているのか、まったくの未知です。「ゆとりの時間」や「総合学習」は、子供たちが自分で考え学ぶ事を目標としていても、見ている限りでは、与えられた課題を調べて発表する事で終わっているようです。本来期待されていた「ゆとり」の意味とは、「静と動」「緻密と奔放」と言った、バランスの取れた授業カリキュラムだったのではないのでしょうか?形に囚われず、豊かな授業を受けられる教育の場を作って頂きたいと、保護者の立場からお願いしたいです。