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毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

トム・フランクリン 『ねじれた文字、ねじれた路』

2011年10月14日 16時16分07秒 | 図書館で借りた本
○ トム・フランクリン 『ねじれた文字、ねじれた路』 (ハヤカワ・ミステリ)

 すごく静か。冒頭で、主人公の一人が突然侵入者に銃で撃たれて意識不明になるような展開で幕を開けるというのに、物語全体がひどく静かで、読んでいるとだんだ手が冷たくなっていく感じ。それぐらい、人が生きていくのに必ず抱えるであろう「孤独の重さ」が、ずっしり物語りを覆っていて、すごく静か。

この二日間、繰り返し読んでいるので、主人公が飼っているニワトリや土の臭いまで感じられそう(苦笑)以前に「物語は終わるから好き」という趣旨のことを書いたけれど、このお話は体験記とかエッセイを読んでいるようで(や、そんなに頻繁に殺人事件に巻き込まれることは無いでしょうけれども)お話が終わった後も、二人の主人公たちが歳を重ねていくのを感じられます。

人間が一人生きているだけで、そこには幾重にも出来事や人とのしがらみが重なって、絡み合って、ねじれて、本人にはまるで予想もつかない有様になっている、それが再確認できるお話でした。



★「翻訳ミステリー大賞シンジケート / 書評七福神の九月度ベスト発表!」( http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/searchdiary?word=%A4%CD%A4%B8%A4%EC%A4%BF%CA%B8%BB%FA%A1%A2%A4%CD%A4%B8%A4%EC%A4%BF%CF%A9&.submit=%B8%A1%BA%F7&type=detail )より引用

・吉野 仁
 今月の、というよりも間違いなく今年のベストに入る作品。少年時代を回想する過去の場面、中年のいまを描く現在のシーン、そのどちらも胸に迫るエピソードで埋め尽くされている。南部に生きる人びととその風土がこれ以上ないほど濃密に描かれた傑作だ。

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<追記>

 やっほう!『ねじれた文字、ねじれた路』が、CWAのゴールド・ダガー賞を受賞ですって

★「ハヤカワ・オンライン / 新着ニュース」( http://www.hayakawa-online.co.jp/news/detail_news.php?news_id=00000479 )より引用

 2011年の英国推理作家協会(CWA)賞が発表となり、ゴールド・ダガー賞(最優秀長篇賞)にトム・フランクリン『ねじれた文字、ねじれた路』(ポケット・ミステリ)が選ばれました。

また、イアン・フレミング・スティール・ダガー賞(最優秀冒険小説/スリラー賞)に、12月に早川書房より刊行予定のスティーヴ・ハミルトン The Lock Artist が選ばれました。同書は既にアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞を受賞しています。

フィルム・ダガー賞(最優秀ミステリ映画賞)はコーエン兄弟監督映画「トゥルー・グリット」が受賞しました。同作はチャールズ・ポーティスによる原作がハヤカワ文庫NVより発売中です。

いずれも読み応え充分の傑作ぞろいです。あわせてお楽しみください。

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