太刀岡山・右岩稜

2010-11-09 02:15:12 | クライミング

相模アルパインの香○さんに声を掛けて頂き、まだ公表されていない太刀岡山・右岩稜を登ってきた。

このルートは山岳ガイドの松原尚之氏が開拓したルートで、12月のロック&スノーに公表されるらしい。8月以来フリーをやっていなかったので正直心配だったが、香○さんと登れる機会もなかなかないと思い、思い切ってご一緒させて頂くことにした。


1ピッチ目(10a)


最近登ってないからと遠慮がちに言ったため、ほとんどのピッチを香○夫妻がリードする。自信がなかったにもかかわらず、やはり岩を目の前にするとリードしたくなるのはクライマーの本能か。いまさら仕方がない。

太刀岡山自体初めてだったのでよく位置関係が分からなかったが、下部岩壁を右へ回り込んだところが取り付きだ。くわしくは松原氏のブログを参考にされたい。

1ピッチ目は10aとなっているが、ホールドスタンスともしっかりあるので、落ちついていけばグレードよりはやさしいと思う。



2ピッチ目(5.9)

出だしの一歩が「あれ?」という感じだが、この一歩だけ。あとは傾斜の緩いガレ場を登るだけ。



3ピッチ目(10a)

このピッチは結構怖かった。セカンドでも怖いと思ったので、リードはかなり思い切りがいると思う。核心部で支点が取れないのだ。しかも、まだ新しいルートであるため、乾いた苔が岩に密集していて、とにかくスタンスが滑りやすい。このあたりが本チャンぽくて、逆に楽しいところでもある。



4ピッチ目(5.7)

ここだけリードをさせてもらう。ん?と思う一歩もあったが、5.7は5.7。とくにこれといったものはないが、このあたりから景色がよく見えて気持ちが良い。



コルへの懸垂

短い空中懸垂。こういうところも本チャンぽくてよいかも。



5ピッチ目(10d)

出だしがボルダーチックで難しい。NPになっているが使わなかった。松原氏のブログの写真には、横に走っているクラックに1本かましている。カンテに届けばガバポケットがあるのだが、おそらく初見では見つけることが出来ないと思う。リードはかなり厳しいピッチだ。自分は静○さんがかけてくれたスリングでA0突破。次回来た時にチャレンジさせて頂きます。

ピークから1ピッチ懸垂でハサミ岩に降り立ち、そこからは登山道で下まで歩ける。太刀岡山はこぢんまりしたゲレンデだが、左岩稜もあって、結構変化に富んでいる。高速から近いこともあり、今度ゆっくり遊びにきたい。誘って頂いた香○さん。楽しかったです。本当にありがとうございました。




リーダー学校

2010-10-24 23:14:15 | クライミング
10月の始めの土日に、リーダー学校のお手伝いで臨時の講師をしてきた。もともと講師のたぐいは好きではないし、リーダー学校にも興味はなかったが、お世話になっている人からの依頼で引き受ける事に。

リーダー学校に興味がなかったのは、やはり山は山に通い続けて、体で覚えるものだと常に思っていたからだ。練習のための練習をやり続け、知識だけ増やして満足してしまう。そんなイメージもあった。しかし実際中に入ってみて、見方が変わった。学校と平行してどんどん山にも入っているし、しっかりと技術を身につけようという姿勢は、会で行う岩トレの時と違って真剣そのもの。山岳会でのトレーニングになると、どうしても食わず嫌い的な内容になりがちだが、必要と思われるものはちゃんと学んでいこうという姿勢は、自分自身も見直さなければいけないなぁと思わされた。

一ノ倉の中央稜でのお粗末なパーティーと遭遇したり、レスキューの初歩も身につけずに岩に入り込んでいるクライマーを見ていると、こういう学校やそれと平行して開催されるレスキュー講習会なども本当に必要だなと思った。とはいえ、やらない人間は遭難して人に迷惑を掛けたり、パートナーを救えなかったり、自分が怪我をして始めてその必要性を感じ、それまでは結局登ることしかしない。場合によってはクライミング能力すら高める事もせずにルートに入っていく。ルートを抜ければ何でもOKという姿勢は、いつか痛い目を見ると思うが、まぁ人それぞれ考え方が違うので仕方のない事なのかな・・・。もちろんリーダー学校の少ない講習を受けたところで、得られるものは少ないのも事実だが。

と書いたものの、やっぱり自分は講師のガラではないし、今は走る事に情熱が傾いているので、たぶんもう講師はしないと思うけど。




一ノ倉沢・中央稜

2010-09-25 01:33:21 | クライミング
会の人の本チャンデビューのお付き合いと、たまにはのんびり岩登りしたいなぁという事で、一ノ倉の中央稜に行ってきた。5年前に初めて登った時は、核心で思わずA0してしまったので、今回はちゃんとフリーで抜けたい。

一番乗りを目指して3時半に駐車場を出発。この3連休はマイカー規制で出合まで歩かなくてはならない。が、最近よく歩いているので、歩く事はほとんど気にならなくなってきた。出合の駐車場で支度をしていると、なんとすでに後続パーティーが来るではないか。みんな早いなぁ。

今年は雪が多かったので、あわよくばヒョングリの高巻きをせずに行けるかな、と思ったらとんでもない!一ノ倉沢全体に全く雪渓が残っていない。かけらも一切ない。こんな一ノ倉を見たのは初めてかもしれない。偶数ピッチを担当したが、5年振りという事で核心部以外はルートの内容をほとんど覚えてなかった。核心部のチムニーはバック&フットまたはザック&フットで安定する。落ち着いていけば支点も豊富で問題はないが、今回は前夜の大雨のために右壁がびしょびしょで気持ち悪かった。もちろんフリーで突破。下降は同ルートを懸垂する事にする。

下降中出会ったバーティーはみんな個性的だった。1組目はビレイポイントを含め、支点をすべてカムのみで登ってきたという。その昔、中央カンテをフリーソロで登ったという強者だった。2組目と3組目は同じグループ。ところがこのパーティー、変則というか、マルチのやり方がめちゃくちゃ。2人ずつの2パーティーで登っていたが、トップが掛けたヌンチャクを4人目が回収。ギアがなくなったら4人目がテラスに到着するのを待って、また全部受け取ってからトップがスタート。時間が掛かって仕方がない。いくら初級ルートとはいえ、もう少し練習を積んでから来て欲しいなぁまったく。しかも、こちらは登りの邪魔をしないように横で待っているのに、おかまいなしにのんびりと行動食をほおばり、いつまでもおしゃべりして動かない。そのうち後続が来てしまう。一度は中央稜を下降しておきたくてわざわざ下りてきたが、こんなことならさっさと北陵を下降しとけば良かったと後悔した。最後に会ったパーティーはすでに敗退を始めていたが、うまく次のビレイポイントを見つけられないとのこと。なぜだろうと思ったら、40mのシングルロープで壁に取り付いたらしい。いくら中央稜とはいえ、本チャンは本チャン。いくらなんでも無茶でしょう。一緒に下りることにする。

途中2回もロープがスタックしてしまい、待ち時間と合わせて結構遅くなってしまう。しかし新人の人は本チャンデビューを果たすことができ、すごく喜んでくれて良かった。駐車場へ向かう林道で、山友会の河○さんとばったり遭遇。仙台に転勤になったと聞いていたので、まさか一ノ倉で会えるとは思ってもいなかった。いつものさわやかな笑顔。元気そうでなにより。また一緒に登りましょう。

南陵に行ったパーティーと合流して、一緒にユテルメ近くの焼肉屋で乾杯。この焼肉屋は始めて入ったが、すごくおいしかった。また来よう。この日の一ノ倉は、珍しく朝から夜まですっきり晴れて、気持ちの良い1日を過ごす事が出来て楽しかった。



甲斐駒・Aフランケ赤蜘蛛ルート

2010-09-23 22:34:51 | クライミング
9月の第一土日に甲斐駒に行ってきた。パートナーは去年と同じ山○さん。去年は3回も予定しながら天気に恵まれず、1年越しでなんとか成功させる事が出来た。

前泊の道の駅「はくしゅう」から、朝、竹宇の駐車場へ移動。のんびり歩いても6時間は掛からない。あまり早く行っても飲み過ぎるだけなので、のんびり9時過ぎに出発する。それにしても今年は暑い。5時間半で七丈小屋のテン場に到着すると、すでに下のスペースは一杯。ギリギリ自分達のテントを張る事が出来た。テントを張って小屋に戻り、いつものようにビールで乾杯。ベンチで飲んでいると、どこかで見たことのある顔。柴笛の岩○さんだ。しばらくお話をする。後で分かったのだが、岩○さんはこの日、松茸をゲットしていたらしい。しかしその事には一切ふれなかった。話題にすると分け前が減ると思って警戒していたのだろう。

このテントの多さだと、きっと渋滞になるだろうとの予測で、朝1時半に起きて出発する事にする。しかし、結果的にAフランケ赤蜘蛛は我々1パーティーだけだった。上のテン場も一杯だったのに、あそこにいた人達は一体どこへ行ったのだろう。

2時半にテントを出て、真っ暗な中を取り付きへ向かう。3度目のアプローチとはいえ、真っ暗な中では踏み跡を追うのも一苦労だ。結局途中で踏み跡を見失ってしまう。イケイケの山○さんはさらに下降しようとするが、とにかく急斜面の草付きで危ない。ルート中よりもこういうところの事故の方が重大になりがち。ここはひとまず登り返すことにする。少し戻るとトラバース気味の踏み跡を発見。そちらに向かうと、やっとピンクテープが出てきた。少し下ると見慣れたガレ場に出た。なんと岩小屋を通らず、ずっと左側からガレ場まで来てしまったらしい。ここからはフィックスロープまかせに行けば取り付きまで到達する。

取り付き到着が4時半。当然1番乗りだ。夜が明けるまで時間があったので、しばらく座ってうとうとする。この時、うなじとおでこに20ヶ所以上ブヨの攻撃をくらい、帰宅してから首周りのリンパが腫れまくった。虫除けをテントに置いてきたのが悔やまれる。明るくなってから登攀準備。5時20分くらいにスタートか。

1ピッチ目(まっちー)
とにかく1ピン目が遠い。こんなとこで頑張って時間を掛けても仕方がないので、すぐにチョンボ棒をだしてテイクオフ。あとは掛け替えだが、最後がちょっと面倒だったので躊躇せず残置。セカンドに回収してもらう。この時、山○さんがアブミを落としてしまい、懸垂で回収。

2ピッチ目(山○さん)
このルート唯一といっても良いくらい、フリーで快適に登れるルート、と、どこかのサイトに書いてあった。ちっとも快適ではない。フットジャムの足がめちゃくちゃ痛いよ。ほんとに痛かった。フリーもちょっと厳しく、登り甲斐のあるピッチ。プロテクションとしてキャメの#1と#2を使ったような。

3ピッチ目(ま)
ハング下までの移動ピッチ特に印象は残っていない。

4ピッチ目(山)
ハング越えのピッチ。といっても左側から巻くので、実際にハング越えはない。ここも特に印象にない。掛け替えのピッチ。大テラスまで行かず、ハングを越えたところでピッチを切る。

5ピッチ目(ま)
うっかり直上してしまう。あまりにピンがないので、周りをよく見渡すと、右の方にスリングの巻かれた木を発見。ハーケンを1本打って、微妙なトラバースで移動。ここが大テラスだったのだが、後で気が付く。

6ピッチ目(山)
珍しく快適なピッチ。核心ピッチの手前まで。

7ピッチ目(ま)
チャレンジアルパインクライミングでは6ピッチ目となっている核心のピッチ。見上げると少し緊張する。気合いを入れて出発。ほとんどアブミの上段に立たなくてはいけないが、クラックをうまく使うことで、それほど気合いを入れなくとも立てる。しかし、これが何度も続くと、それなりに疲れるものだ。ピッチ中間部は支点が抜けていて、ここからカムの出番だ。キャメロットの#0.3、#0.4、#0.5、BD・C3の#2、計4ヶ所くらいカムに乗ったと思う。休憩用にリンクカム#1も使用。ちょっと重めだが、これを1個持っていると、いざという時に心強い。ピッチ上部は、ピンが豊富に打たれて、やっと息を抜ける。クラックと別れ、カンテ方向に進み、カンテ手前でハンギングビレイ。



8ピッチ目(山)
正直7ピッチ目で疲れた。山○さんも疲れたようで、お互いリードを譲り合うが、やはりツルベなので交代で行った方がスムーズだと思い、山○さんに行ってもらう。このピッチもアブミの上段に立たなくてはいけない。しかし傾斜も寝てくるので、うまくバランスを取れば上段に立つのにそれほど苦労はしない。しかし大したピッチではないと思ってギアをあまり渡さなかったせいで、ワンポイント苦労したようだ。

9ピッチ目(ま)
もう実質的に終わったと思っていたら、まだ数手人工あり。テラスに上がる一歩が微妙。木でビレイ。システムをセットしている間に雨がポツリと来始める。山○さんが登り出すと、一気に豪雨に。下着までびしょ濡れになってしまった。実質的なクライミングはここで終了。

10ピッチ目(山)
草付き、ルンゼ、木登り。

11ピッチ目(ま)
草付きと歩きで岩小屋までロープを引っ張っていって終了。この頃には雨もやんでいた。

終了が16時と、ちょっと時間が掛かりすぎたが、なんとか無事成功させる事が出来た。テントを撤収して18時に小屋から下山開始。この下山が一番核心だったかも。とにかく黒戸尾根の長さにへろへろ。駐車場着が22時。須玉ICの近くのガストで夕食を摂って、帰宅が2時半と、ハードな1日だった。

アブミの上段に乗る場面が多く、身長の低い人間には辛いルートだが、一ノ倉の衝立のような不安感はなく、高度感も少ない。そういう意味で怖さはないが、やはりアプローチの長さが辛く、2日で行くには体力勝負のルートだなぁと思った。とはいえ、ずっと行きたかったルートだったので、無事完登することが出来て本当に良かった。黒戸尾根3回目だが、まだ甲斐駒の頂上に立ってない。次は奥壁から山頂かな。でもしばらく黒戸尾根はいいや・・・




4年振りのJウォール

2010-07-06 02:43:18 | クライミング
雪童OBの後○さんと一ノ倉の予定だったが、谷川方面の予報が悪く中止。ジム&飲み会に予定を変更。4年ぶり2度目のJウォールに行ってきた。

ここは相模アルパインの方達がよく利用されるようで、この日も香○さんご夫妻、○澤さん、宮○さん、吉○さんが登りに来ていた。香○さんと久しぶりに少しだけ話をしたが、いつも話に奥深さを感じる。もちろん数多くの山の経験がそうさせるのだが、それ以外にもこの人の人間性もあるのだろう。自分も将来、こういうクライマーになれたらいいなぁと思った。

あまりジムにも行かないので、5.9から順番に登ってみた。

5.9 OS
5.10a OS
5.10b テープが見づらいのでパス
5.10c 1テン(最後のムーブが分からず思わず1テン)、RP
5.11a OS
5.11b 1テンで上まで

まぁ、練習してない割には上出来か。それともJウォールはグレード低め?そんなことより、もっと練習しなさいっ!って感じです。はい。

帰りは湘南台で飲み過ぎました。後○さん。またよろしくお願いします。




某登高会の例会in小川山

2010-06-15 23:16:17 | クライミング
6月の頭に小川山を企画しようとしたら、いつもお世話になっている某登高会の例会を小川山で行うとのこと。登れないので迷惑と思いつつ、登れる人達と交流する絶好の機会なので、参加させて頂いた。

久しぶりの小川山はやっぱり登れない。スラブは怖いなぁ~。日曜は仕事になってしまい、朝帰ってきてしまったが、前日の宴会ではたくさん楽しい話を聞かせて頂いた。自分にとってはとても刺激的な話が多く、パートナーに不自由してテンションが下がっていたところを、少し元気にさせて頂いた。いま目先の目標がなくモチベーションが上がらないが、めげずにコツコツ力をつけていこう。



一ノ倉沢・衝立岩雲稜第二ルート -2-

2010-06-01 02:12:52 | クライミング
写真は2ピッチ目上部の小ハング


気持ちがあせっているせいか、登高スピードがあがらない。アブミに届いた時には、けっこう息があがっていた。呼吸が整うのを待って、また登り始める。今度は乗っ越した先のピンの状況が分かっているので、すぐにセット出来るようリベットハンガーを口にくわえて乗っ越す。すばやくピンにリベットハンガーを掛け、アブミをセット。さっきの切れたスリングの一部が残るハーケンまで、今度はうまく手が届いた。

この先もピンが飛んでるのか、難しいフリーの一手があったりしたが、とにかく気合いで進む。そしてまた行き詰まる。軽くかぶった場所で、右側のハーケン以外には3m程先のリングボルトまで支点がない。下向きだが、なんとかハーケンを打てるリスを発見。打ち込んだが、ガッチリとは決まらなかった。「このハーケン抜けるかもー!」とあらかじめ声を掛けておく。すると「下まで落ちないからだいじょーぶ!!」と、暖かい励まし?の言葉をもらい、そーっとアブミに乗る。その先のクラックにカムを入れ、またアブミを掛ける。そこから1.2m伸びる特製チョンボ棒を使い、やっとこさ支点に届く。そこから数手は掛け替え。

「あと10m!」の声が掛かったあたりで、やっとハングがすべて終わり、上部の視界が開けた。5mくらい先にスリングが見える。おそらくビレイポイントだろう。しかしそこまでの支点がない。ここから数手はフリーなのか。リングの通った穴が腐って大きくなり、かろうじて薄皮で残ってるリングにアブミを掛け、フィフィにぶら下がり考える。右にトラバース気味に一歩踏み出す。右手のガバに届いた。そこから先の手が見つからない。細かいスタンスやカチを取って行けるほど、もう体力気力ともに残っていなかった。もう一度アブミに戻り、ジャンピングを探す。と、そのとき、「もう時間切れなので、適当な支点があったら懸垂で降りてきてくださーーい!」と、下から声が掛かる。丁度良い。1本打って敗退だ。

途中で腐ったスリングが切れた際に、人差し指と親指の間を一皮むいてしまい、ハンマーを振るたびに痛みが走る。岩が硬い!なかなか入っていかない。自分の命が掛かっているので、必至になってハンマーを振った。そのうちに痛みも麻痺して感覚がなくなった。5mmくらいで全くキリが入らなくなる。新しいキリに交換したが、今度は15mmくらいでまた粉が出なくなってきた。なんて硬い岩なんだろう。打った場所が悪かったのだろうか。もうすでに1時間以上ハンマーを振っている。仕方がない。浅打ちになるが、残置のリングとの分散で支点を作った。万が一支点が抜けてバックアップのマッシャーが焼き切れても、山○さんが末端をビレイしているので、結び目で止まって下まで落ちる事はないはずだ。たぶん・・・

乳酸が溜まりまくった腕での大ハングの支点回収は、想像以上に難儀した。体力的には登るよりも数倍疲れる。しかも一ヶ所回収が終わる度に空中に放り出され、懸垂支点からの距離も増えてゆき、生きた心地がしなかった。しかしこれをやらないと帰れない。最後の力を振り絞って、支点を回収する。やっとの思いでビレイポイントに着いた時には、「生きてるよぉー」と思わず言葉がもれた。



---支点に使ったカラビナはほぼ回収しましたが、ハーケン3本、キャメ0.3、リベットハンガー3本、30㎝と60㎝のソウンスリング数本、敗退用のリングボルト、240㎝のソウンスリング、カラビナを残置してしまいました。ちらかしてすみません。雲稜第二を成功させるには、ハングでいかに体力を使い切らずに登るか。そのために支点工作の慣れと、さらなる軽量化が必要だと痛感しました。この日は「人工はもうお腹一杯だー!」と思ったけれど、やはり数日経つとくやしさがこみ上げてきて、いつかすっきり成功させてやる!という気持ちになっています。でも、一緒に行ってくれる人、いないんだよなぁ---




一ノ倉沢・衝立岩雲稜第二ルート -1-

2010-05-29 01:09:53 | クライミング
有笠で遊んだ日はとても天気が良く、この1日で谷川の雪もだいぶ溶けた。なので、予定通り雲稜第二へ取り付く事にする。パートナーは山○さん。今年は雪が多い。出合からたっぷりと積もった雪の中を歩いて行く。途中で着けるのも面倒なので、最初から8本爪アイゼンを着けてみたが、必要なかった。

やはりこの時期のアプローチは楽でいい。2回目の衝立なので、今回はそれほど緊張感はない。しかし実際にはダイレクトカンテより遙かにしんどい思いをさせられた。

1ピッチ目(ま)
大ハングをやりたかったので奇数ピッチを担当。「日本の岩場」にはフェースを登るとあるが、分かりにくかったので、第一の凹角から入っていく。ポツポツとしたたる雪解け水でビチョヌル。出だしでまだ気合いが入っていないせいか、いつものチキン魂炸裂。結構ビビリながら上部はアブミで抜ける。最後の一歩がちょっと怖かった。

2ピッチ目(山)
スタートからしばらくはフリーで右上。大きな岩が浮いていたりするので、その辺は要注意。出だしは濡れていたが、スタンスもホールドもしっかりしているので、慎重にいけば問題ない。人工に入ってからも遠いピンもなく、そこそこ快適。頭上の小ハング手前で切ってしまったので、正規のビレイポイントへのトラバースは「ま」が行く。

3ピッチ目(ま)
ハングに入る前の1ヶ所遠い遠いところがあって、ハーケンを打つ。しばらく快適。ハング帯に入ってからが大変だった。敗退用以外の支点に巻かれたスリングは、ほぼ100%切れた。30㎝と60㎝のソウンスリングを多用して、タイオフで支点にする。30㎝ソウンスリングは安くて携行しやすく、人工の時は重宝する。下向きに口を開けてしまったリングに何重にも細引きがまかれ、ナイフで切ろうとしたが固着していて剥がし切れない。ちょっとだけ切り落として、6mmロープスリングをタイオフ。とにかく悪い体勢での作業が続いて疲れる。

なんとか最初のハング帯を抜け、抜け口のボルトを見ると、やっぱりまたしてもリングがない。そこから1.5mくらい先の支点に掛かったスリングが結構長く太めで使えそうだ。リングの飛んだボルトは無視して、左手でカチをとり、右足をちょっと遠目のスタンスにあげ、フリーで乗っ越しスリングに手を伸ばす。全体重を乗せたわけではなく、バランスを取る程度に掴んだ。「ギリ・・・」。しっかりしていそうなスリングから、いやーな音がした。山○さんに向かって「切れるかもー!」と叫んだ。叫んだとたんにスリングが切れた。

衝立スラブに顔を向けながら、ほんの数秒の無重力状態。ハングなので、かすり傷一つなく止まる。初めて本チャンで落ちた。ロープの伸びもあり、7~8mくらい落ちただろうか。乗っ越し地点に残置されてるアブミを眺めながら、しばらく呆然としていた。やはりフリーのゲレンデで落ちるのとは全く違う。相当気持ちが萎えた。この後どうするか考える。リードを交代する事も考えたが、このまま交代すると逃げるような気がして嫌だった。「核心は抜けたのだから、後はビレイポイントまでそう遠くないだろう」。気持ちを入れ替えて、ロープを登り返し始めた。





有笠

2010-05-23 23:38:42 | クライミング
幽ノ沢・V字状岩壁左ルートに取り付くために、幽ノ沢出合まで歩いた。出合から見る幽ノ沢はまるで冬山のよう。取り付くのを諦め、有笠の岩場に行くことにする。



有笠に行くのは今回が初めて。谷川から2時間掛からない距離にあり、敗退時にとても便利なゲレンデだ。しかし自分にとってはレベルが高く、なかなか取り付けるルートが少ない。この日はパスファインダー(11b/c)1本に絞って何度かトライした。

今年2度目のフリーゲレンデ。腕がパンパンになりながら登ったが、自分にとってはお買い得感があり、次回は確実に落とせそうな気配を感じた。この日は面白いおっさん達がいて、終始笑いが絶えず、楽しい時間を過ごす事ができた。