天気予報ではくもりか雪。あまり天気は期待できない予報だったが、気圧の谷と谷のちょうど間に入る。それほどひどくはならないだろうと思い、予定通り涸沢岳西尾根に向かった。
みどり湖SAにテントを張り仮眠。早朝新穂高温泉に着いて準備をして歩き出すと、なんだか物騒がしい。どうやら前日に抜戸岳で雪崩事故があったようだ。取材してきた記者の中に、昨年も取材をしてきた女性記者がいた。相手も覚えていたらしく、なつかしく感じると共に、1年の早さを感じた。この日も横尾で雪崩事故や西穂の滑落などがあり、この年末は山岳事故が多いようだ。自分達も気をつけなくては。
1週間前は春山のような雰囲気だったこのあたりも、クリスマス寒波の通過で一気に冬山へと変身。せっかく雪山へ来たのだから、当然雪があった方がいい。新雪を踏みしめながら、西尾根の取付へと向かう。
白出沢を越えてから取付を探したが、よく分からない。地形図上の尾根の末端から、忠実に登ることにする。当然ラッセル。倒木や藪の上に積もった新雪のラッセルで、しかも急登。なかなか標高があがらない。1時間半費やして、やっと標高差100m!1670m付近で他パーティーのトレースを発見する。なーんだ、このトレースのわずか40mくらい北側をラッセルしてたのだ。
このペースだと2400m地点まで明るいうちに到着するのは難しいと判断。1770m付近のなだらかになった地点で、早々と幕営する事にした。この時点で奥穂は断念。涸沢岳往復とする。さてどうなるやら・・・
この一週間、左方カンテの事で頭が一杯だった。仕事は忙しいのだが、頭から抜けない。手袋も少し厚手のBDの「センセイ」を購入。はたしてどこまでやれるのか。
クリヤ谷の岩小屋に着くと先客のテントあり、さらに上に行ってテントを設営する。ここまで2時間ほどの行程だが、幕営道具とミックスの道具が入ったザックはとても重く、慢性寝不足の体に結構こたえた。さっさとテントを張り、左方カンテの取付へ向かう。途中三ルンゼの様子を観察したが、ほとんど凍っていない。いやな予感・・・
取付に到着して壁を眺める。かろうじて1ピッチ目は雪が乗っているが、その先は無雪期と同じ状態。これでは冬期登攀とは言えない。一気にテンションダウン。せっかくここまで来たので、偵察とアイゼントレを兼ねて、行けるところまで行く事にした。
1ピッチ目(ま)
スタートしてすぐに岩溝に挟まって難儀するが、ベルグラにバイルをひっかけ、やっとこさずり上がる。その後も、また岩溝に挟まり、やっとこさずり上がる。無雪期の支点は一切見つからない。支点整備のさいに全て抜かれたのか、雪の中に埋まっているのか。どちらにしても、立ち木で支点が取れるので、問題はない。50m近くのばして、左側にビレイポイントらしき場所を発見するが、自分が登ってきたルンゼからちょっとだけトラバースするのを嫌って、木の根っこでビレイポイントとする。
2ピッチ目(岡○さん)
天気が良いおかげでとても暖かい。薄手の手袋でガンガン行ける。壁が立ってきてからの数手がちょっと緊張。やはり厚手の手袋と氷の世界になれば、A1になるのだろうな、と思いながら、アイゼンクライミングを楽しむ。
3ピッチ目(岡)
スタートこそテンションダウンしていたが、いつの間にか結構楽しんでいる。おそらくこのピッチで最後になると思われたので、リードを岡○さんに譲った。気合のA0で抜けていく。さすが!自分は自作のアブミを使いたかったので、スタートからアブミを広げる。最初はトラバース気味なので、アブミのバランスが悪い。例の抜け口のガバを掴んだ後は、一旦体を上げなくてはならず、そのままではアブミが回収出来ない。次の支点にアブミを掛けてから、下のアブミを回収する。おそらく次は自分がリードするので、このパターンは覚えておこう。ガバの後も、ちょっとバランシーな感じ。ここも手袋が厚ければ、かなり怖いかもしれない。
核心になるであろう4ピッチ目を観察してから下降に入った。テントに戻ったのが15:00頃。三ルンゼも登れる状態ではなく、泊まっても仕方がないので撤収する事にした。岩が露出してところどころ凍った道は歩きにくく、重荷での下りはかなり疲れた。帰りはいつもの「竜島温泉」で汗を流し、帰途につく。週間予報支援図によると、26日頃と大晦日から元旦に掛けて気圧の谷が通過するようだ。年末山行はまた悪天の予感・・・
とにかく今月は忙しかった。冬山のために体調を整えておきたかったが、不景気のさなか贅沢など言ってられない。作業が夜中になろうと、来る仕事拒まずでこなした。疲労をためて入山したくなかったが仕方がない。まぁ、毎度の事だ。
美濃戸までの林道はまだ問題ない(凍結状態)だろうと思っていたが、意外としっかり凍っていた。例のヘアピン後の登りで、若干滑りながら登っていく。帰りが心配だ。美濃戸からの歩きでも、つるつる滑って結構疲れた。鉱泉に着くとメーグリ家の三○氏とグッさんに会う。グッさんは目出帽を被っていてトレードマークの髭が見えず、かわいい顔をしていたので、最初は誰だか分からなかった(失礼)。
大同心稜の急登はいつ登っても疲れる。大同心の基部に近づく頃には、早朝から降り続いていた雪も小降りになっていた。岡○さんはあっという間に裏同心方面に駆け下りていく。すごいなぁ。後からゆっくり追っかけていく。ルートがよく分からなかったが、それらしい凹角状の下の木でビレイをとって登りだした。
1ピッチ目は岡○さんリード。見た目ではそうでもないが、あまりよくないようだ。フォローに入った自分が行き詰る。初めて本番で使うBDの「グリセード」だが、とても寒い!冬壁では薄すぎなのか自分の気合いが足りないのか、手の感覚がなくなってしまい、このピッチでえらく時間が掛かってしまった。
2ピッチ目の歩きをリードしたが、ルンゼ内に入ってからルートが良く分からない。適当にピッチを切る。岡○さんに聞くと、ルンゼ右側の稜線がルートらしい。スタートが遅かった(鉱泉発8:20)せいと1ピッチ目で時間を食い、この時点ですでに12:00になっていた。残念だが、この先も時間が掛かる事が予想出来たし、若干戦意喪失気味(情けなっ!)でもあったので、ルート変更する事にした。ルンゼ内を登り、右岸側から稜線へ抜け、大同心ルンゼから大同心稜を降りてきた。またしても反省点だらけの山行になってしまったが、翌週の錫杖に向けて良い練習にはなったと思う。
美濃戸からの帰り、案の定ヘアピンの手前で車が滑った。慎重に降りたが、5mほど滑ってしまう。あの感覚、ほんと恐ろしい。何度味わってもどきどきする。やっぱり4駆・スタッドレス・チェーンがないと、あそこは厳しいなぁ・・・
来週は忘年山行で岩トレになるため、長く歩いておこうと西丹から大倉を計画。一人でいく予定だったが、新入会員の安○さんから同行したいとの申し出があった。距離もあるしトレーニングなので、体力に自信がないときついですよ、と言ったら、技術はないけど長年ラグビーで鍛えたので、体力には自信があるとの事。それならと、お付き合い頂くことにした。
西丹沢自然教室8:50-檜洞丸10:40-臼ヶ岳11:43-蛭ヶ岳(昼食)12:39~13:06-丹沢山14:12-塔ノ岳(待機)14:55~16:00-大倉18:02
ゆっくり歩いてはトレーニングにならないので、マイペースで行く事は事前に確認をとってある。離れた時に連絡を取れるように、無線をもっていった。落ち葉の絨毯はいつ歩いても気持ちがいい。空も良く晴れていて、絶好のハイキング日和だ。歩き始めはスローペースだが、沢を渡って尾根に取り付くと、少しずつペースを上げていった。
振り向くと富士山がとてもきれいだ。雪もだいぶついてきたので、あちらも登りたいなぁーと思いつつ、せっせと標高を上げる。すでに安○さんの姿はない。要所要所で無線連絡を取りながら、マイペースで歩き続ける。初めての会山行なのに、冷たくてすみません。翌週の岩トレでは楽しみましょう。
蛭への登りは結構きつかった。蛭ヶ岳の山頂でゆっくりと昼食。とにかく天気が良くて気持ちがいい。昼食が済んで安○さんの現在地を確認すると、山頂より150mほど下にいるようだ。時間が掛かりそうなので、申し訳ないが出発する。
丹沢山へ向かう道は霜が溶けて、びちょびちょ。とても歩きにくかった。丹沢山へ着く頃にはどんよりとした雲が空をおおい、日差しがなくなって寒くなってくる。出発前の天気図では冬型だったので、稜線では冷たい北西風を予想していたが、風はほとんどなかった。冬型が弱まって、雲が出始めたのだろうか。耐寒訓練のつもりで、塔ノ岳までは半袖一枚で歩き続けた。
塔ノ岳14:55に到着。途中30分近く休憩して約6時間。大倉まで下りは1時間半なので、全工程7時間半というところか。実際下山して確定したかったが、安○さんはヘッデン下山になるので、さすがに一人では置いていけない。ここで到着を待つことにする。あるもの着込んでうつらうつらしていたら、もう寒くてたまらない。人のほとんどいなくなった山頂で、一人走りまわった。
1時間ちょい遅れて16:00時に安○さん到着。水飲み休憩だけして、すぐに下山を開始する。3週連続でヘッデン下山だ。烏尾山荘のオヤジに見つかったら、絶叫しながら浮石でも投げつけてくるかもしれない。幸いここは大倉尾根。暮れてゆくきれいな空と富士山のシルエット、下界の夜景を楽しみながらゆっくり下った。大倉到着18:02。安○さんはだいぶお疲れのようだったが、その分充実感もあったようで、渋沢で軽く一杯やって帰路についた。
-写真は塔の山頂で迫ってくる鹿-