一ノ倉沢・衝立岩雲稜第二ルート -2-

2010-06-01 02:12:52 | クライミング
写真は2ピッチ目上部の小ハング


気持ちがあせっているせいか、登高スピードがあがらない。アブミに届いた時には、けっこう息があがっていた。呼吸が整うのを待って、また登り始める。今度は乗っ越した先のピンの状況が分かっているので、すぐにセット出来るようリベットハンガーを口にくわえて乗っ越す。すばやくピンにリベットハンガーを掛け、アブミをセット。さっきの切れたスリングの一部が残るハーケンまで、今度はうまく手が届いた。

この先もピンが飛んでるのか、難しいフリーの一手があったりしたが、とにかく気合いで進む。そしてまた行き詰まる。軽くかぶった場所で、右側のハーケン以外には3m程先のリングボルトまで支点がない。下向きだが、なんとかハーケンを打てるリスを発見。打ち込んだが、ガッチリとは決まらなかった。「このハーケン抜けるかもー!」とあらかじめ声を掛けておく。すると「下まで落ちないからだいじょーぶ!!」と、暖かい励まし?の言葉をもらい、そーっとアブミに乗る。その先のクラックにカムを入れ、またアブミを掛ける。そこから1.2m伸びる特製チョンボ棒を使い、やっとこさ支点に届く。そこから数手は掛け替え。

「あと10m!」の声が掛かったあたりで、やっとハングがすべて終わり、上部の視界が開けた。5mくらい先にスリングが見える。おそらくビレイポイントだろう。しかしそこまでの支点がない。ここから数手はフリーなのか。リングの通った穴が腐って大きくなり、かろうじて薄皮で残ってるリングにアブミを掛け、フィフィにぶら下がり考える。右にトラバース気味に一歩踏み出す。右手のガバに届いた。そこから先の手が見つからない。細かいスタンスやカチを取って行けるほど、もう体力気力ともに残っていなかった。もう一度アブミに戻り、ジャンピングを探す。と、そのとき、「もう時間切れなので、適当な支点があったら懸垂で降りてきてくださーーい!」と、下から声が掛かる。丁度良い。1本打って敗退だ。

途中で腐ったスリングが切れた際に、人差し指と親指の間を一皮むいてしまい、ハンマーを振るたびに痛みが走る。岩が硬い!なかなか入っていかない。自分の命が掛かっているので、必至になってハンマーを振った。そのうちに痛みも麻痺して感覚がなくなった。5mmくらいで全くキリが入らなくなる。新しいキリに交換したが、今度は15mmくらいでまた粉が出なくなってきた。なんて硬い岩なんだろう。打った場所が悪かったのだろうか。もうすでに1時間以上ハンマーを振っている。仕方がない。浅打ちになるが、残置のリングとの分散で支点を作った。万が一支点が抜けてバックアップのマッシャーが焼き切れても、山○さんが末端をビレイしているので、結び目で止まって下まで落ちる事はないはずだ。たぶん・・・

乳酸が溜まりまくった腕での大ハングの支点回収は、想像以上に難儀した。体力的には登るよりも数倍疲れる。しかも一ヶ所回収が終わる度に空中に放り出され、懸垂支点からの距離も増えてゆき、生きた心地がしなかった。しかしこれをやらないと帰れない。最後の力を振り絞って、支点を回収する。やっとの思いでビレイポイントに着いた時には、「生きてるよぉー」と思わず言葉がもれた。



---支点に使ったカラビナはほぼ回収しましたが、ハーケン3本、キャメ0.3、リベットハンガー3本、30㎝と60㎝のソウンスリング数本、敗退用のリングボルト、240㎝のソウンスリング、カラビナを残置してしまいました。ちらかしてすみません。雲稜第二を成功させるには、ハングでいかに体力を使い切らずに登るか。そのために支点工作の慣れと、さらなる軽量化が必要だと痛感しました。この日は「人工はもうお腹一杯だー!」と思ったけれど、やはり数日経つとくやしさがこみ上げてきて、いつかすっきり成功させてやる!という気持ちになっています。でも、一緒に行ってくれる人、いないんだよなぁ---




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