軽い気持ちで始めたインソール比較だったが、相当奥が深いということに気が付いた。「今」の自分(使用シューズも含めて)に合ったインソールを選択するというのは、そう簡単なことではないようだ。まずは所有しているインソール比較。
比較走行で使用したシューズ:’07ターサージャパン 164.9g(25.5㎝片足インソールなし)。レース使用シューズ:ターサーRSアリビオ2 160.1g(25.5㎝片足インソールなし)。一応参考として。
○ターサーRSアリビオ2ノーマルインソール
重さ(片足):18.5g
つま先部の厚み:4㎜
かかと部の厚み:3.5㎜(50㎞ほど走行)
実際に比較走行で使ったのはターサージャパンだが、レースで使うのはRSアリビオ2。なので、アリビオのノーマルインソールも比較してみた。ジャパンもアリビオも、各インソールを何度も入れて歩いたり走ったりしてみた。裸足でも感触を確かめたりした。それで気が付いたのだが、実は靴そのものがある程度アーチをサポートするような形に出来ている。当たり前なのかもしれないが、自分としては意外だった。というのも、人それぞれ足の形が違うのに、靴自体がある形に出来上がっているということは、やはり人によって合う合わないがインソール云々の前に決まっているということだ。アスリートクラブがインソールと共に靴まで選ぶのも頷けた(出来れば自分で選ぶべきだと思うけど・・)。
同じターサーと名の付くアリビオとジャパン。アリビオはとても足に合っていてしっくりくるが、ジャパンは緩い感じでアーチ部分も結構隙間がある。テスト走行の時に「・・ほぼ同じ形をしているので」と気にしなかったが、これだけ違うとインソールによっては靴の中でだいぶ形状が変わってしまうと思う。そして実際履き比べてみて、インソールによってはかなり違った。
前置きが長くなったが、アリビオのノーマルインソールについて。ジャパンのと比べ、厚みが0.5㎜ほど厚く、重さが4gほど重い。写真は、左側は無荷重。右側はバイルを乗せてたわみ具合を見たもの。数値の違い以上にしっかりした感じがして、反発力も強いようだ。故障していなければ、横浜マラソンでも気持ちよく走れた,、このノーマルインソールが一番いいかもしれない。
○’07ターサージャパンノーマルインソール
重さ(片足):14.7g
つま先部の厚み:3.5㎜
かかと部の厚み:3㎜(けっこう走ってる)
下の写真はRSアリビオノーマルインソールを上に置いて、踵部の大きさを比較したもの。アリビオのより厚みで0.5㎜薄く、4gほど軽い。数値の違い以上に薄くて腰のない感じ。写真で見るように柔らかい。まるでカスタムインソール使用を前提に、とりあえず付属させたもの、なんていうとアシックスの人に怒られるだろうか。インソールなどに頼らない強靱なアスリートならこれでもいいのだろうけど、一般ランナーにはちょっと無理がありそう。そもそも自分が故障したのは、これで40㎞走をやったからだ(無茶だろバカ)。しかし軽さ薄さは一番なので、シューズの特性は一番出せると思う。それでもタイムが悪かったのは、故障に対する恐怖心からストライドが伸ばせなかったからだ。実際のストライドは1.17m(短かっ!)。靴自体のソールの反発力が生かせて、ピッチ数は上がっている。その分速かった。
○ソルボランニング
重さ(片足):48.7g
つま先部の厚み:3.5㎜
かかと部の厚み:4.5㎜・緩衝材あり(これもけっこう走ってる)
ノーマルインソールの約3倍の重さ。踵部に衝撃緩衝材があるが、全体が緩衝材という感じでブヨブヨしてる。いかにも衝撃を吸収しそうな感じ。コンフォーマブル・インソールを使うまではアーチサポートされているような気がしたが、それほどでもなかった。ノーマルインソールより一回り大きいが、柔らかいので靴の形になじんで収まる。これだけ柔らかいと、どんな靴にも収まりそうだ。足の中心よりもやや前方に盛り上がりがあり、それが気になる。
柔らかい素材なので痛みまではいかないが、ずっと押されてる感じで気にはなる。左右のブレに対する対策なのだろうか。あまり気持ちよくない。衝撃吸収と反発力は相反すると思われるので、反発力が弱まる分重たく感じる。なのでタイムが遅かったのだろう。LSDで距離を踏む時は、足が守られているなぁと実感出来ていい。ただし柔らかい分ブレやすく、ランニングフォームの崩れには注意した方がいいかもしれない。
○ランプラスTX
重さ(片足):51.8g
つま先部の厚み:5.5㎜
かかと部の厚み:6.5㎜・緩衝材あり(20数㎞走行)
比較した中で一番厚く、一番重い。特に踵の衝撃緩衝部分が厚く、見た目の通りにショックが吸収されていると感じる。全体が厚いので、ソールの厚いシューズを履いているような感じになる。
熱成形なので足にピッタリフィット。そのおかげで比較インソール中、一番ブレが少なく感じた。すべりにくい素材である事もブレ防止に一役かっている。踵以外は結構反発力を感じる素材なので、ソルボよりは軽快な感じはするが、結局ソールの厚いシューズを履いているようなものなので、重たく感じてタイムは遅くなる。このソールの最大の特徴であるフィット感はすばらしく、アーチサポートが抜群で、故障時の練習やリハビリには比較ソール中いちばんいいと思った。ただし、熱成形だからと言って一発で完全にフィットするかと言えばそうでもない。自分も一度成形しなおしてもらった上に、一部削り落としてもらった。その上にドライヤーで部分的に修正もしてる。あまりピッタリし過ぎているとランニング時に違和感を感じるので、成形時に少し前後に動いて緩めにフィットさせた。この辺りは人それぞれ感覚が違うだろう。このソールのいいところは、何度でも成形し直せて(ポディアでは再成形料1050円)、自分でもある程度調整出来るところだ。現在、練習で一番使っている。
○アスリートクラブインソール
重さ(片足):43.1g
つま先部の厚み:3.7㎜
かかと部の厚み:4㎜・緩衝材なし(5㎞~走行)
仕上がってすぐに履いたときは、違和感があって使う気になれなかった。なのに比較走行の時はそうでもない。?と思ったが、違和感を感じたのはアリビオで使った時で、ジャパンで使うとわりと良い感触だった。後で気が付いたのだが、このソール、アーチ部分から踵に向けてのベース形状がアリビオと全く合っていない。なので、無理に入れると中で変形し、変なあたりが発生する。踵周りは厚い部分もあり、バイルを乗せた写真でも分かる通り結構硬い。硬い上にノーマルインソールより二回りほど大きいために、この部分は靴の方が変形する。なので、アリビオでは使えない。アリビオに合うブランクがないのなら、そう言ってくれればいいのにと思う。緩衝材がついてない分、ソールの反発を使い軽快に走れるかと思ったが、タイムは遅かった。理由としては、ブレが原因かもしれない。踵がルーズなので収まりが悪く、生地のせいかつま先側もすべる感じがして常に落ち着かない。生地の滑りについては滑り止め付きのソックスを履く事で解消するかもしれないが、同じ条件でこのソールだけそう感じたのだから、やはり滑りやすいのだろう。
生地が簡単に剥がせたので見てみた。裏も表も特に削った痕跡がない。感圧紙で取った足型を、どう生かしているのだろう。アリビオでは違和感があったが、ジャパンで走った時には一番素直な感触だった。ジャパンのノーマルインソールよりはサポート感があるので、ノーマルよりはいいかもしれない。しかし衝撃吸収もなくフィット感もないというのでは、使用する目的が絞れない。HPではあらゆる問題が解消されると謳っているが、何かアスリートクラブのインソールには、素人には分からない魔法でもあるのだろうか。
○ランプラスナロー
重さ(片足):46.5g
つま先部の厚み:4㎜
かかと部の厚み:5㎜・緩衝材あり(5㎞~走行)
このインソールの測定結果が一番意外だった。もっと薄くてもっと軽いと思っていたのだ。確かにTXより5g軽いが、重いと思っていたソルボと大して変わらない。厚みもTXよりは薄いものの、ソルボやアスリートクラブより厚い。なのに一番速いタイムになってしまったのは、薄い緩衝材のために靴の反発力を活かせた事と、フィット感が高いためにブレがなかった事、それとサポートが効いているために故障に対する恐怖心が働かなかった事だと思う。とにかく走っていて気持ちが良いのだ。ストライドが他のインソールの時より10㎝以上伸びて1.27mだった。
成型時もTXでの経験を生かして、ほぼ一発で納得のいく形状に仕上がった。今一番気に入っている。しかしフルに向いているかと言えば、まだよく分からない。この軽快感が、逆に後半の疲労につながるかもしれないし、緩衝材が薄いということ自体、負担が大きいのは間違いないので、故障が悪化する可能性が高い。それと、TXにも言える事だが、グリップがいい素材がとても蒸れやすそう。TXでもナローでも30㎞以上走ったことがないので、蒸れに関してはぶっつけ本番になる。