この製品、カタログには450gと書いてあったが、どう計っても520gある。どういうことだろう?この穴はCADで描いてからレーザーであけた。末広がりになっているスコップの形状に合わせるのが結構大変で、デザインに2時間も掛かってしまう。トータル4時間の作業。そして70gの軽量化。この状態で初めて450gになった。
強度は考えたつもりだが、はたして硬雪で使えるだろうか?壊れたら笑える(本当に壊れたら泣くけど)。
雲稜の1ピッチ目をステミングで登るクライマーの写真。他のブログでも大体この写真が載っている。下から見ているとかぶっているように見え、そこを登る姿はなかなかかっこいい。テラスでビバークした連中が後ろでぶつぶつつぶやいている。「おー、俺は体がカテーから、あんなに足ひらかねぇーよ。どうするぅ。あれじゃ途中で足がつっちゃうぜー」とかなんとか・・・あいかわらずのんびりムードだ。
1ピッチ目。コールがかかりいよいよ自分の番。緊張はあまりない。夕べはぐっすり眠れたおかげで心身共に万全だ。長~くのびる顕著な凹角。見た目よりホールドスタンスは結構あって、快適に高度を稼いでいく。しかし50m近くある長いピッチに、だんだんと厳しくなってきた。上部は少しかぶり気味になってくる。ステミングしている足が疲れてきて、最後の抜け口ではなかなかホールドが見つからない。リングボルトの頭をスタンスにして、とうとうA0にしてしまった。1度やってしまえばもう安心(^.^)
2ピッチ目。出だしの一歩で躊躇せずヌンチャクに手を伸ばした。これも1ピッチ目で早くもA0したおかげと言える(ちゃんとやれー!)。そこ以外はまじめにフリーで進む。しかしこの2ピッチ目の出だしはかなり怖かった。スタンスがほとんど見つからず、ヌンチャクに結構荷重をかけて通過してしまう。そこからピナクルを目指し右上。今度は左に見える扇岩目指して左上。2ピッチ目の核心は出だしの一歩だけだったようで、難なく扇岩テラスに到着。ここでなんと先行パーティーと出会う。1番に取り付いたと思ったが、どうやら扇岩テラスでビバークしたようだ。しばらく待たされてしまう。
3ピッチ目。岡○さんはこのピッチをフリーで抜けるという目標を持ってきたが、上部が濡れているのと出だしが厳しすぎるのとであっさりあきらめる。やはりここをフリーで行くにはゲレンデで5.12aは必要と感じた。アブミを出せばピンの間隔も狭いので難なくクリア。
4ピッチ目。トラバースに入る前の数メートルをまたしても人工。途中、切れそうな細引きをナイフで切断して新しいのに取り替える。トラバースはハングにじゃまされて普通に通過出来ない。バンドから一旦外に出て(要腕力)ハングをよけ、再びバンドに乗る。岡○さんは最初の人工部分(10a)をフリーで抜けてくる。さすが。
5ピッチ目。ここから東壁ルンゼ。前々日の雨の影響でヌルヌル。ちっとも快適じゃない。ぬめったスラブなど登れるはずもなくA0連発。それでも結構きびしかった。
6ピッチ目。ここは乾いていた。傾斜もゆるくなり、実質終わったようなもの。
7ピッチ目。ここも6ピッチ目と同じような感じ。屏風の頭に行くパーティーは上部の悪そうな草付きルンゼへ向かっていったが、我々はここから懸垂で取付に戻る。
懸垂中に落石にあった。傾斜がきついため谷川などの落石のように音がしない。近くを通過していく時に空気を切り裂く「ウォンッひゅんっブウォンっ!」という耳鳴りのような感じで落石だと気づいた。あんなの頭に当たったら、ヘルメットなど軽く通過しそう。頭が破裂してしまうだろう。こわっ!岡○さんはどうやらお尻をかすったようだ。危ないところだった。
無事テラスにたどり着くと、来るときにロープを落として何も出来ない単独の青年がいた。ロープがないので懸垂が出来ず、誰か戻ってくるのを待っていたらしい。彼と一緒に3人でT4の取付まで懸垂で降りていった。今年一番の目標であった屏風の雲稜を無事終えて、ほっとしたと同時に達成感が湧いてきた。好条件がそろい、とても快適な本チャン。これから屏風には何度か足を運ぶと思うが、こんなに気持ちよく登れる機会もそうないだろう。
10月頭の連休に屏風の雲稜ルートを登ってきた。屏風の話が出てから約半年。その間、いつも屏風の事が頭の中にあった。
登りたいという欲求と怖いという緊張が入り交じりずっとテンションが高かったが、なぜか屏風を目の前にしたとたん緊張が解け、気持ちが落ち着いていくのには不思議な感じがした。河原にテントを張ってからは、大きな石の上で昼寝をしたり、焚き火をしたりしてのんびりと過ごす。翌朝は2時起きなので早めに食事をとりすぐに寝た。
腕時計の目覚ましは気がつかなかったが、ほぼ2時頃目が覚める。朝食のお茶漬けを流し込み出発の準備。パートナーは何度も穂高に足を運んでいるベテランの岡○さんなので、なんの心配もいらない。むしろ頼る気持ちが起きないよう、気をつけなくては。
T4尾根の取付に着いたのが、4時ころだっただろうか、まだあたりは真っ暗。三日月の照らす明かりは弱く、ヘッデン頼りの登攀が始まる。あとから思えばこの時が一番緊張していたと思う。赤岳主稜の上部で夜になった事はあったが、核心は過ぎていたので慎重に歩けばよく、今回のように暗い中での登攀は初めての経験だ。1ピッチ目を岡○さんが登り、2ピッチ目に入る。途中のルンゼ状の箇所がびしょびしょのヌルヌル。う~う~・・・・動けなくなってしまった。暗いなかでヌルヌルのスラブなんか登れるわけねーべっ!とふてくされそうになったが、よく見ると左下あたりにリングボルトと、それに掛かるよごれたスリング発見。そーっと手を伸ばしてそれをつかみ、A0でなんとか切り抜けた。あとは危ないところもほとんどなく、最後のチムニー状の岩でちょっとズリズリしたが、無事に取付に到着。あたりはすっかり明るくなっていた。
テラスには前夜から来ていたパーティーがいたが、夕べだいぶ盛り上がったようでずいぶんのんびりしている。「まだ岩は冷たいですよねー?もう少し暖かくなってからスタートしようかと思って・・・・」。やった。おかげで1番に取り付ける。懸垂で戻ってくるので、余計な荷物はここにデポ。準備を終えて6時過ぎに岡○氏リードでいよいよ雲稜ルートの登攀開始だ。
結局ほとんど眠れなかった。そのかわり夜中に雷鳥の鳴き声を聞いたり、満天の星空を眺めたり、冷えだした朝方にツエルトの奪い合いをしたりと、思い出に残る一夜を過ごした。
前日約束していた時刻に定時通信を行い、出発準備を始めた。すると朝焼けにそまる対岸の尾根が強いコントラストでオレンジ色に染まりだした。すばらしい景色だ。これはシャッターチャンス!プチップチッ!?。いくら電源ボタンを押しても無反応なデジカメ。どうやらバッテリーが上がったようだ。でもいい。こういう景色はあえて記録に残さず、自分の記憶にしまっておいた方が色褪せないものだ・・・ふんっ・・・
ビバーク地点から30分で前々日あるいた源次尾根の稜線ルートに飛び出す。とにかくすばらしい景色だ。当然稜線上にはどのパーティーも見あたらない。クライミングシューズから登山靴に履き替え、本峰へ向かうことにする。たいした食事もとっていないが、朝の足取りは軽かった。
Ⅱ峰の懸垂を終え本峰へ向かうあたりから疲れが出始めた。前日の朝から水を800ccくらいと雑炊と菓子パン2個しか口に入れてないので、さすがにエネルギー不足。天気がいいので水を制限するのが辛かった。予定通り昼過ぎに剣沢のベースに到着。小屋に飛び込んでお茶とスポーツドリンクを一気に飲み干し、カップラーメンで腹を満たした。
無線連絡をして頂いた門○さんにお礼を言ってから帰りのパッキングを始めた。色々と話しを聞くと知り合いの佐○さんとモリモリさんがチンネに行ったらしい。もう戻ってくる予定なのに、だいぶ遅れていてちょっと心配そうにしていた。自分も心配だったが待っているわけにも行かず、出発することにする。5分くらい歩いただろうか、遠くから「まちださ~ん!」と呼ばれているような気がした。テン場の方を見ると、遠くで佐○さんとモリモリさんらしき人が大きく手を振っている。無事に戻ってきたようだ。こちらも大声でさけんで大きく手を振ってお別れした。
今回は下山遅れで事故扱いとなり帰宅してから大変だったが、今年一番の目標だったルートを無事終えてとても満足な山行だった。来年は上部岩壁に行こうかな・・・