一ノ倉沢・衝立岩雲稜第二ルート -1-

2010-05-29 01:09:53 | クライミング
有笠で遊んだ日はとても天気が良く、この1日で谷川の雪もだいぶ溶けた。なので、予定通り雲稜第二へ取り付く事にする。パートナーは山○さん。今年は雪が多い。出合からたっぷりと積もった雪の中を歩いて行く。途中で着けるのも面倒なので、最初から8本爪アイゼンを着けてみたが、必要なかった。

やはりこの時期のアプローチは楽でいい。2回目の衝立なので、今回はそれほど緊張感はない。しかし実際にはダイレクトカンテより遙かにしんどい思いをさせられた。

1ピッチ目(ま)
大ハングをやりたかったので奇数ピッチを担当。「日本の岩場」にはフェースを登るとあるが、分かりにくかったので、第一の凹角から入っていく。ポツポツとしたたる雪解け水でビチョヌル。出だしでまだ気合いが入っていないせいか、いつものチキン魂炸裂。結構ビビリながら上部はアブミで抜ける。最後の一歩がちょっと怖かった。

2ピッチ目(山)
スタートからしばらくはフリーで右上。大きな岩が浮いていたりするので、その辺は要注意。出だしは濡れていたが、スタンスもホールドもしっかりしているので、慎重にいけば問題ない。人工に入ってからも遠いピンもなく、そこそこ快適。頭上の小ハング手前で切ってしまったので、正規のビレイポイントへのトラバースは「ま」が行く。

3ピッチ目(ま)
ハングに入る前の1ヶ所遠い遠いところがあって、ハーケンを打つ。しばらく快適。ハング帯に入ってからが大変だった。敗退用以外の支点に巻かれたスリングは、ほぼ100%切れた。30㎝と60㎝のソウンスリングを多用して、タイオフで支点にする。30㎝ソウンスリングは安くて携行しやすく、人工の時は重宝する。下向きに口を開けてしまったリングに何重にも細引きがまかれ、ナイフで切ろうとしたが固着していて剥がし切れない。ちょっとだけ切り落として、6mmロープスリングをタイオフ。とにかく悪い体勢での作業が続いて疲れる。

なんとか最初のハング帯を抜け、抜け口のボルトを見ると、やっぱりまたしてもリングがない。そこから1.5mくらい先の支点に掛かったスリングが結構長く太めで使えそうだ。リングの飛んだボルトは無視して、左手でカチをとり、右足をちょっと遠目のスタンスにあげ、フリーで乗っ越しスリングに手を伸ばす。全体重を乗せたわけではなく、バランスを取る程度に掴んだ。「ギリ・・・」。しっかりしていそうなスリングから、いやーな音がした。山○さんに向かって「切れるかもー!」と叫んだ。叫んだとたんにスリングが切れた。

衝立スラブに顔を向けながら、ほんの数秒の無重力状態。ハングなので、かすり傷一つなく止まる。初めて本チャンで落ちた。ロープの伸びもあり、7~8mくらい落ちただろうか。乗っ越し地点に残置されてるアブミを眺めながら、しばらく呆然としていた。やはりフリーのゲレンデで落ちるのとは全く違う。相当気持ちが萎えた。この後どうするか考える。リードを交代する事も考えたが、このまま交代すると逃げるような気がして嫌だった。「核心は抜けたのだから、後はビレイポイントまでそう遠くないだろう」。気持ちを入れ替えて、ロープを登り返し始めた。





有笠

2010-05-23 23:38:42 | クライミング
幽ノ沢・V字状岩壁左ルートに取り付くために、幽ノ沢出合まで歩いた。出合から見る幽ノ沢はまるで冬山のよう。取り付くのを諦め、有笠の岩場に行くことにする。



有笠に行くのは今回が初めて。谷川から2時間掛からない距離にあり、敗退時にとても便利なゲレンデだ。しかし自分にとってはレベルが高く、なかなか取り付けるルートが少ない。この日はパスファインダー(11b/c)1本に絞って何度かトライした。

今年2度目のフリーゲレンデ。腕がパンパンになりながら登ったが、自分にとってはお買い得感があり、次回は確実に落とせそうな気配を感じた。この日は面白いおっさん達がいて、終始笑いが絶えず、楽しい時間を過ごす事ができた。






ジャンダルム飛騨尾根

2010-05-06 00:43:33 | クライミング
丸いジャンの頭から右へ段々と落ちていくのが飛騨尾根

GWは雪童の岡○さんと川○さんと3人で、ジャンダルム飛騨尾根に行ってきた。谷川のダイレクトカンテ以来、久しぶりにすっきりと完登出来て大満足の山行だった。

1日の夜、道の駅「奥飛騨温泉郷上宝」にて仮眠。2日朝に新穂高に移動して、7時前後だったかなぁ・・・出発。穂高平避難小屋までは雪はなし。小屋前の広場で休憩をしようとしたら、なんと兵庫に帰った門○さんがいた。年末の遭難者の遺体捜索に来ているとの事。きっちりと発見される事をお祈りしています。本当にお疲れ様です。

白出沢はデブリだらけの雪で埋め尽くされ、そのまま歩いて行く事が出来た。天狗沢の出合に10:00前に到着。ここで一本。最高の天気で暑いくらいだ。出合から200m程天狗沢に入り、左側の尾根の適当なルンゼから取り付く。ここはよくF尾根って言われているみたいだけど、D尾根でしょ?違う?かなりの急登でふくらはぎが張ってくる。稜線上に出るまで1時間も掛かった。ふぅ。

尾根上に出てからは樹林帯の中のヤセ尾根。樹林に囲まれているために高度感はないが、結構やせている。しばらくすると2300mの幕営適地と言われているコルに到着。やせているので大きなテントは張れないだろう。まだ12時前なので、一本取ってさらに標高を上げる。2400mを過ぎたあたりで若干傾斜もゆるみ、視界も広がってきた。



テントを張れるような平地はなく、2520mあたりの斜面を1時間近く掛けて切り、テン場をこしらえる。13時前には到着していたので、のんびりと土木作業を楽しんだ。今回は軽量化のために酒すら置いて来たので、食事が済むとすることもなく、翌日に備えて明るいうちからシュラフに潜り込んだ。

翌日は4時半出発。GPSのセットや写真を撮っているうちに、岡○さん川○さんはどんどん離れていきあせって追いかける。C尾根へのトラバースはなるべく上まで上がってから移動。下から取り付いて岩場を登るより、雪の締まったルンゼを登った方が早いとの岡○さんの判断だろう。



3人とも三ツ峠でⅣ+のアイゼン登攀は落ち着いてこなしているので、岩場に入ってからもしばらくはノーザイルで進む。ちょっと先が見えにくくなったあたりから、ロープを結んだ。



1ピッチ目(岡○さん)
スタートがちょっと体が外に出るので緊張するが、落ち着いて見ればホールドスタンス共盛りだくさん。とはいえ本チャンなので慎重にいく。

2ピッチ目(まっち)
正面のフェイスも行けそうだが、左に回り込んだ方にトレースがありそちらへ回る。あー下から見えた凹角だ!凹角に入る手前がちょっと悪く感じたのでハーケンを打とうとしたら、丁度いいのを落としてしまった。あちゃー。ばっちりではないけれど、なんとか別のサイズで決めて、凹角へ突入。しっかりと凍っていて、傾斜の緩いアイスクライミング。ここが一番楽しかった。



3ピッチ目(岡)
このあたりから似たような岩場ばかりで、あまり記憶がない。大体岩場と雪壁のミックスだ。

4ピッチ目(岡)
一旦クライムダウン。ここはT2か?コルにおりて岡○さんがアックスでビレイ。

5ピッチ目(ま)
手前から見ると結構立っているように見えた岩場も、取り付くと快適。どんどん高度を上げていく。

6ピッチ目(岡)
岩場の続き。やはり似たような岩場と雪壁のミックス。

7ピッチ目(ま)
ロープ不要的斜面だが、一応ビレイをしてもらう。もうちょっとでジャンの頭なのに(この時は気付いていない)、ロープが足らずにもう一度後続をビレイ。

二人にはそのままビレイポイントを通過して先に進んでもらう。目の前の頂きへ進んだが、その先へ降りられないという事で、クライムダウンして縦走路へ向かった。そのまま自分も二人の元へと、縦走路へ向かい、広いコルでゆっくりと一本取った。そして後で気が付いたのだが、結局自分はジャンの頭を踏むことなく、下山していくのだった(涙)。

ジャンの直下は急斜面。緊張のトラバースで進んでいく。



その先も数カ所緊張するトラバースやクライムダウンが続く。ロバの耳は飛騨側から巻いて、12時に奥穂到着。写真を何枚か撮って下ろうとすると、ここから涸沢へ下ろうとするスキーヤー2名とボーダー1名に遭遇。斜面を下ってゆくのをじっくりを観戦させて頂きました。



穂高岳山荘への下りが結構急。しかし雪面はしっかり締まっているので、バイルとアイゼンの爪を効かせて、ザクザクとクライムダウン。安全地帯に12:45到着。ここで大休止を取って白出沢から下山。風もなくなり暑くてマイッタ。白出大滝の巻き道が雪がくさって悪かったが、15:20過ぎに白出沢出合に到着。2日の夕方に白出沢下部で雪崩があったようで、来る時と景色が変わっていた。

これだけ快適な山行も滅多にないだろうというくらい、気持ちが良かった。誘って頂いた岡○さん、同行の川○さん、本当にありがとうございました。って、二人共このブログ知らないんだな。




鹿島槍北壁に向けて -備忘録2-

2010-05-05 18:12:15 | クライミング
暗い内にテントを出た。第1クーロアールに着く頃にはすっかり夜が明ける。せっかくロープを出したので、そのまま第1クーロアールもロープを引っ張る。稜線上に出る数手がちょっと悪かった。帰りは懸垂になるだろう。

第1クーロアール
第1クーロアール

新雪の下はあちこち雪が切れているので、慎重に歩く。しばらくすると長ーい第2クーロアールが見えてきた。


第2クーロアール

これが結構長い。登っても登ってもまだ先がある。傾斜もゆるみやっとの思いで天狗の鼻についた。そして目の前に鹿島槍北壁が。『かっこいい・・・・!』。なんてかっこいいのだろう。八本歯から見る北岳バットレスと同じようなアングルだが、受ける印象がまったく違う。圧倒された。


中央が正面ルンゼ

結局あちこちに隠れたシュルンドのために4・5回はロープを出し、上部岩壁まで行かずに下山することにしたのだが、この景色を見ることが出来ただけでも大きな収穫だった。来シーズンは必ず成功させたい。出直して来るから待ってろよ、鹿島槍北壁!




鹿島槍北壁に向けて -備忘録1-

2010-05-04 22:36:41 | クライミング
なかなか忙しくてPCに張り付けなかったが、GWの最後の今日、久しぶりにのんびり過ごす事が出来たので記事更新。とにかく忘れっぽい今日この頃。来年また「一目惚れしました・・・」なんて言わないよう、記憶を記しておかないと。

パートナーは1月のアイゼントレ以来の山○さん。もともとはこの山行、自分としてはそれほど思い入れはなく、山○さんの希望で決めたもの。しかし色々と調べていくうちに段々とはまりだす。雪崩の多いこのルート。1週間前からの天気はまさに雪崩にうってつけのサイクル。いやが上にも緊張がたかまる。

22時に八王子で待ち合わせ、大谷原へ向けて中央道を飛ばす。が、飛ばせたのは勝沼あたりまで。ちらついていた雪が段々と強くなり、吹雪になる。なんで4月の第三に!?諏訪南手前あたりからチェーン規制渋滞が始まる。


チェーン規制渋滞中

関門を過ぎてからさらに降りが激しくなり猛吹雪。豊科ICを出る頃にはだいぶ収まっていたが、あたり一面はまるで真冬のような雪景色が広がっている。予定よりだいぶ遅くなってしまったので、大谷原まで行くのは諦め道の駅「安曇野松川」に車を駐め仮眠する事にした。翌朝ものんびりと明るくなってから出発する。大谷原に車を止め、歩き出したのが8時頃だろうか。ようするに天狗尾根に対してあまり意識していなかったのだ。まあ遅くとも夕方には天狗の鼻に着くだろうと高をくくっていた。

アラ沢出合に着くまでに4・5回は徒渉しただろうか。最後の堰堤?は右岸から入り、いったん橋を渡る。渡ったら下に降りて、堰堤上をジャブジャブと歩き、また右岸にもどり雪渓に乗って通過。水量が少ないから出来たのかな?アラ沢では微妙なスノーブリッジを渡って徒渉なしで通過。出合から300m程歩き、若干傾斜の落ちた左岸の尾根に取り付く。傾斜が落ちたと言っても、かなりの急登。1時間は登っただろうか、やっと傾斜がゆるみ尾根上に出る。黙々と歩いていた時には体調万全と思っていたのに、また傾斜がきつくなりだしたあたりから、珍しく右足太腿が攣りそうになり始めた。それほど重荷でもないはずなのに、なんでだろう。山○さんからちょっと遅れ始める。本気で攣らないようにだましだまし歩き、ようやく第1クーロアール手前に着いた時には15時近くになっていた。



季節外れの大雪で蓋をされたシュルンドが、ちょっとだけ顔をのぞかせている。こんなところでロシアンルーレットをしても仕方がないので、先へ進むにはロープを出したい。しかし時間的にあまり余裕もなくなってきている。幕営するなら少し標高を下げないと適地がないため、降りるならもう引き返さなくてはいけない。しかし戻れば正面ルンゼには取り付けないだろう。悩んだ末に結局戻ることにした。1800m強あたりで幕を張る。翌日は偵察も兼ねて、せめて天狗尾根だけでも登る事にした。