寄り道

忙しいのに
車のウインカーをつけていた。
あっ!と思ったらもう国道を曲がり
小さな道に入っていた。

遠い昔子供の頃住んでいた家が近い。

理由は何も無かった。
きっと先ほど買った和菓子が
助手席でほんのり甘い香りを漂わせていたかも知れない。

細い裏道にわずかな隙間をみつけて
車を止める

家は新しく住んだ方の色に変わっているが
振り返るには十分の名残を見せていた。

もう何十年も前のことなのに
幼い日の記憶が蘇る。

2階の子供部屋に行く急な階段の隙間に
見せられなかった×点だらけのテストを
そっと落とした。
秘密のゴミ捨て場である。
何枚落としたか分からないのだけど
きっと改装してあるなら
見つかってしまったと思う。
今さらながらちょっと恥しいなぁ~なんて・・、
だってひらがなでフルネーム書いてあるのですからね!

弟が飼っていた100羽の鳩
中庭の鳩小屋
ふっと独特の鳩の鳴き声を思い出す。

既にないことは分かっていても
なんだか覗き込んで
嫌だった鳥の糞臭い匂いを確認したくなる。

隣に和菓子屋さんがある。
今はその匂いがしない。

幼い頃お隣さんの甘い香りに誘われて
裏口からお邪魔しては
カステラの隅の欠片をもらっていた。

既におやつもある時代
甘いものが珍しくも無いのだが
隣のおじさんから頂く
カステラの欠片は特別美味しかった。

管理人はおやつのプリンが大好きだった。
三人兄妹で一つずつ
一番年上の私はいつも一番に食べ終わってしまった。
「一度大きな器で食べてみたい」と言ったら
母がどんぶりでプリンを作ってくれた。
もちろんとても喜んだのだけど
しばらくドンブリプリンが続き
プリンは小さい方が美味しいことを知った。
今思うと変な光景ですね。

隣のおじさんの
カステラの欠片の味を占めた幼い管理人。
いつしか友達も引き連れ
お菓子屋さんの裏口には
悪ガキのちょっと汚れた小さな手が並んだ。

幼い頃いつも通っていた路地は
単に家と家の小さな隙間。

皆が集まった立派な神社と思っていたところは
小さなお稲荷さんのお社があるだけだった。

広いと思った悪ガキの集合場所は
本当に隠れるところも無いほど小さく見えた。

ちょっと地べたに座り小さくなってみた。
幼い頃の皆の声が聞こえてきそうで・・・

静かだった
実に静かだった。

こんな寄り道
二度目になる
以前はいつ来たんだろう・・・





コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« 意味なく ついてないね2 »
 
コメント
 
 
 
Unknown (くちぶえ)
2009-04-29 15:36:25
永い時間を通り過ぎてきますと
幼き日を思い出します。
戻れない事がわかった時点で
ともだちを思い出して、浸ってしまいますね。
平等じゃないのに、同等だったような気がします。

寄り道しても、迷子になっても、
ちゃんと帰ってきてくださいね。
SFチックなお話ですが、
けして霧の中には入っていかれませんように。

いらした方たちにたくさんの愛を
いらした方たちもたくさんの愛を管理人さんへ。
 
 
 
ありがとうございます。 (管理人)
2009-04-30 22:13:28
くちぶえ様コメントありがとうございます。

はい!霧の中は決して入りません。
中から好奇心をくすぐる声さえ聞こえなければ・・

「いらした方たちにたくさんの愛を
いらした方たちもたくさんの愛を管理人さんへ。」

優しく暖かい音色のくちぶえを
いつもありがとうございます♪

時々聞きたくなる
こころに沁みるくちぶえの音色です。


 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。