マイナンバー制度がいよいよスタートしました。 私たちにとっては役所から書類を取る手間が一部減るくらいのメリットしかない(一年間にどんだけ書類を取るんだ)のに、政府は大金がかかるこの制度を(326.2億円)国民が知らないうちにどんどん進めてしまいました。
マイナンバーは賃金などをはじめ個人ごとに収入をすべてマイナンバーで管理するようになるので、基本的にすべての収入を国が把握できることになります。 税金は昔からトーゴサンピンなどといわれてサラリーマンは10割、事業者は5割・・・とか税の不公平が以前から言われてきましたので、財務当局にしてみれば脱税の撲滅や税の公平化に寄与すると本当はいいたいところですが、そんなことを言ったら法案が潰されてしまうので、子細な「面倒な事務手続きが簡素化される」などと差し障りのない説明に終始しているのでしょう。 以前「国民総背番号制」と批判されて潰されたときに国税庁は「これで税の不公平が解消されるのに国民はなぜ反対するんだ」と嘆いていたのを思い出します。
私を含め安サラリーマンにとっては税金公平性の面から言えばいい制度ではあるのですが、政府が個人のすべての収入を把握するということに不安を抱くのは自然なことと思うのです。 収入が把握されれば一人ひとりの生活が丸裸にされるという事です。 しかも福祉関連や医療、銀行預貯金など資産に関しても統合することで進んでいるのです。 もし役人が悪意を持ってこれらの情報を利用すれば(この悪意を持った行動も法律の許容範囲であるかもしれない)個人で相手が持つ個人データと権力に立ち向かうのは困難でしょう。
一方で絶大な行政権力を行使する政府のほうでは機密保護法などという法律をつくって国民に知られたくない不都合な情報は国民の目が触れないところに隠してしまいました。
もっともこれは先日成立したばかりの憲法違反の悪法=戦争法案の下準備であるわけですが、政治の流れが民主主義を合法的に暗い管理型の窮屈な社会制度に追い込んでいるように感じるのは私だけでしょうか。 戦争法案反対のデモが大きく盛り上がったのにはこれらの社会不安の増大が背景にあったのではないでしょうか。
さらに今後おおきな問題となるのが情報漏えいです。 マイナンバー制度によって扱うデータ量は爆発的に大きくなります。 当然これらのデータにふれることになる人員も大幅に増加するでしょう。 現在個々に分かれているデータに携わっている人員と比べたら逆に減るということもあるでしょうが、マイナンバーでくくられた重要な個人データにふれる人員が増えるという事はセキュリティ管理の面で考えると大変な弱みになります。 どんなに取扱いを厳重にしても中には毎日の作業の煩わしさから簡素化したくなるのが人情です。 いくらパスワードを設定しても忘れることを心配してパソコンのディスプレイに張っておいたりします。 そうするとこのパスワードは仕事を面倒にする邪魔者でしかありません。 悪意がなくとも操作者が情報の漏えい源になってしまうのです。
技術的にも情報をねらうハッカーからデータを守ることはかなり困難です。 以前にもこのブログで書きましたが、大手のIT関連会社でも情報漏えいが絶えないし、アメリカの国務省の機関や国防総省でさえハッキングされているのですから、情報は漏れるものと考えて対処するべきです。 日本の政府は重要機密をアメリカに盗み見られても官房長官が「大変遺憾です」などと記者会見しておわりにする国なので、国民個人の情報などなんとも思っていないのでしょう。 情報漏えいの被害を最小化するための有効な手段は情報の分散化です。 情報は集まってなんぼのものなので相反する理屈ですが漏えいを防げない以上漏れても最小限の被害にとどめるための見極めが大切です。 今の制度では国民の不安を解消することはできません。
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