ポエトリー・デザイン

インハウスデザイナーが思う、日々の機微。

GW。

2009年05月07日 | blog
いいGWでした。

ムスメといっぱいあそべました。
育児はふたり以上でするのがいいですね。

休みながら、デザインのことを考えていました。

このブログのもともとのモチベーションというのは、今の日本のプロダクトデザイン、メーカーのプロダクトデザインに対する、怒りのようなものでした。

なんでまともなデザインがないんだ!
なんでデザイン家電をみんな買わないんだ!
買わなきゃそういうデザインが増えないぞ!
商売にならなきゃ、そういうデザインができないぞ!

…。

ここ数年で、すごく変わってきたとおもいます。
端的に言うと、あまり腹が立たなくなってきた。

全体的にカデンなどのデザインがよくなってきた、ということはあるとおもいます。
これはー、いろいろ要因があるとおもいますが、消費者がどうのというまえに、サムスンの影響だとおもっています。サムスンが、「AXIS的な」「デザインらしいデザイン」でGマークを取りまくり、大手家電メーカーも「こりゃやばい」と思ったんじゃないでしょうか。「いいデザインができないのではなく、やらせてもらえないだけなんだ」、というのは何度か書いたことがありますが、やらせてもらえるようになってきているんでしょう。そういう想いを抱えてきた世代…私のような…が管理職になってきて、デザイン承認者の価値観が変わってきたこともあるでしょうし。

いまカデンを買いにいって、そんなに絶望的な気分になることはありません。「まぁ、こんなもんでいいんじゃないの」と思えるようになってきた。カデンに感動はいらないんです。ただ生活のなかに、違和感なく心地よく使いやすく、そっとあればいい。店頭効果なんか、どうでもいい。

いまでもデザイン家電はありますが、そんなに魅力的でもなくなっているとおもいます。私個人は、「カデンのデザインが美しいからといって、そこにそんなに豊かさはない」と考えるようになってきました。デザイン家電、デザイングッズへのこだわりは、「一人暮らしのモノ好き」の感覚であったのかもしれない。ムスメが産まれて、家族とともに生きてゆくことのすごさを知ってしまうと、そんなことにつきあっているひまはない、と感じるようになりました。デザインだけのために不当に高いとか、使いにくいようでは、もう買いません。適正な価格で、必要にして十分な機能があり、使いやすく、カデンとしての立場をわきまえた佇まいであれば、それでいい。

じつは、引っ越しにあたって、デザイン家電やらデザイングッズやらも、けっこう処分してしまいました。±0の加湿器は残っていますけど、無印良品の加湿器のほうが出番は多かった。
最近買ったカデンはこれとかこれですが、どっちもデザイン家電ではない。でもまぁ、いいかと思っています。

モノがほんらいあるべき姿にふたたび収まろうとしているのは、いいことなんだとおもいます。
そして、

それはそれとして、やっぱり感動をくれるモノは必要ですよ!
わくわくするモノ、カモン!
理屈なんかぶっとばせ!

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (松本)
2009-05-07 08:39:50
大学でデザインについて勉強している時に初代Infobarが発売されまして、画一的だった携帯の形態に一石を投じた、そんな印象を持った一方で、それこそ「え?Infobarって何?」っていう人たちがいたのも事実で、僕はそんな現実を目の当たりにして「何故こんなにすばらしいデザインが大衆に広まらない(受け入れられない)のか」と考えたことを、思い出しました。

エントリーにある「家族といることのすばらしさ」に気づくというのは、本当に所帯を持った人にしかわからないなぁと心底思いました。学生の時分では、なおさらわからなかったのだろうとすごい納得しました。

そして、当時の大学の先生がしきりに「デザインの良さは、その会社のトップの美的センスや審美眼による」と言っていたのを思い出しました。だから今は一周回ってポエリトーさんのような方が管理職になり、それこそ巷に魅力的なデザインがそこそこ見られるようになったのだろうなぁと。

えー、色々と書きましたが、いつもブログを拝見する度に新しい知識や知見を知ることができて本当に楽しいというかうれしいというか、大きさの程度はあれど、とても感銘をうけています。なのでこれからも世の中に発信しつづけてください。応援しています。
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Unknown (MJ2040)
2009-05-07 23:11:53

>理屈なんかぶっとばせ!
 安心しました。
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Unknown (詩人)
2009-05-07 23:47:32
過去と他人は変えられない、
未来と自分は変えられる…と、お寺の掲示板に貼ってありましたが。

コメントありがとうございます。うれしいです。

なんだ日和っちゃったなぁ、とおもわれるかもしれませんが、どうでもいいと思っているのではなく、むしろハードルを上げているつもりです。たとえばiPhoneには感動がある。そういうものが現れれば、また飛びつくとおもいます。

じぶんがそういうモノを作れるか、作るべきかということは…うーむ。カデン的な、黒子に徹するべきものもあるし、嗜好品的なものもあるのし。可能性はあります。
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Unknown (Wataru)
2009-05-08 00:32:03

お久しぶりです。

僕から見た詩人さんは精巧なレプリカントみたいな感じで...。
人間以上に人間味のある精密機械と言うか...。

でも、環境変化がもたらす視点の変化をblogを通じて見る事ができて、詩人さんへの印象がまた変わったような気がします。


僕も理屈をぶっ飛ばせますように。

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共感! (mizuha)
2009-05-08 14:07:40
初めて投稿します!

かわいい赤ちゃんだなぁと思って入ってきたら、がっつりの素敵な論理に、感動しました!


「カデンのデザインが美しいからといって、そこにそんなに豊かさはない」

そのとおりですよね!それってカデンだけでなく何事にも通じるなぁとしみじみ思います。


華美なものも素敵なんだけど、それだけにとらわれていると、求める気持は底なし沼だし、、、
本当に満たされるのは、詩人さんがおっしゃる、家電でいうところの、「適正な価格で、必要にして十分な機能があり、使いやすく、カデンとしての立場をわきまえた佇まい」なんですよね~~

これからも詩人さんのブログ、応援しています!!たまに来させてください★
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Unknown (みさこ)
2009-05-09 09:12:58
こんにちは。
私も以前ほど「デザイン、デザイン」と思わなくなりました。
デザインが良いものはやっぱり好きなんですが、大切なのは性能。
その上で、性能の良さや作る側の意思がデザインに滲み出ている、
そんな製品に出会うとワクワクします。
そう考えるとデザインは性能の一部なのかも。

> それはそれとして、やっぱり感動をくれるモノは必要ですよ!

同感です!!!

そして、育児はふたり以上でするのがいいですよね。これも同感です。

ブログのタイトルお褒めいただきありがとうございます。
私もミクロとマクロの目で多面的に物事を捉えたい・・・と思いつつ
最近は実生活でもブログでもただの眼鏡で見ている内容ばかりになっているような。
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みなさんコメントありがとうございます。うれしいです。 (詩人)
2009-05-10 22:05:33
レプリカント…
わたしのただひとつ変わらない考えは、
自分の考えは絶えず変わってゆく、ということなのよ。

***

なんかね、作り手はみんな、ガンバリすぎちゃうんですよ。まじめだから。
だから、過剰になっちゃう。
「おいしいものを作ろう!」という想いは正しいんだけど、
軽いものを食べたいときもあるのに、こってりフルコース出されちゃう。
食べ物だったら胃袋のことだから胃袋が決めるけど、
カデンなんかは付加価値は高いほうがいい!というふうに、なっちゃうからねどうしても。
そこをあえて、そうめんとネギだけに抑えられるか…というのは、すごく難しい。

でもヒットしているものって、そういうわかりやすさがあるとおもう。

***

「たかだ」と「されど」のくりかえしです。
間で揺れて、やがて収まるべき塩梅に落ち着くのがいい。

そして、「つい、ミクロになってしまう」ということを「知っている」だけで、ずいぶん違うとおもいます。
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