武道・禅の心で臨床を読み解く(武道、禅、心理療法、ボディワークを学ぶ理学療法士)

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生態心理学とフェルデンクライス・メソッドとの共通点

2010年07月13日 | 心理・催眠療法
生態心理学といえばギブソンさんです。
少し勉強している方ならご存知だと思います。

その考え方は既存の心理学に多大な影響を及ぼし今や理学療法界でもちょっとしたブームです。

ギブソンは第二次世界大戦前後にアメリカ空軍からその実験心理学的手法と業績を認められあるプロジェクトを依頼されます。それは『パイロットが地面をどのように認知し着陸するかを解明する』というものでした。

皆さんも知っての通り真珠湾攻撃を皮切りに戦争は航空戦が主体となりました。特に当時の空母(航空母艦)への着艦は危険と隣り合わせでパイロットの経験だけが頼りです。失敗すれば高価な飛行機が壊れるどころかパイロットも死にます。へたをすれば空母もおしゃかです。パイロットの養成にはかなりの金がかかります。飛行機もそうですが航空母艦は破格の値段であるだけでなく戦局そのものも大きく左右してしまいます。

そんな背景もあり多額の研究費が国から出されましたがギブソンは最後までこの問題を解決できませんでした。
つまり生態心理学は貢献した面も沢山あるのですがその理論に限界もあるようです。最近の心理学でもこの点がかなり指摘されています。この記事の最後で紹介する本などを読むと生態心理学だけで水平面の知覚を説明するのは苦しいと感じてしまいますね。

一方、フェルデンクライス・メソッドです。
今でこそ平和なテクニックですがフェルデンクライスがこのメソッドを作り上げた原点は『いかにして即席の兵士を育成するか?(いかにして相手を倒すか?)』という観点からでした。

創始者であるフェルデンクライスが青年時代に移住したイスラエルはまだ独立してなくとても治安が悪く危険でした。しかも当時統治していたイギリスから武器の携帯を禁止されていました。
それでフェルデンクライスは無手(武器無し)での自衛術を模索していきました。このあたりは薩摩潘支配下で対日本刀(日本人による日本刀試し切りなどの劣悪な植民地支配で多くの琉球の方たちが犠牲になったとわれてます)として成熟していった沖縄空手(唐手、手(ていや那覇手))などとも共通点がありそうです。
そしてヨーロッパで柔道創始者の嘉納治五郎と出会い現在のメソッドの骨格を作り上げます。
その後、独立したイスラエル軍から兵士育成の依頼があり養成法に着手していきます。当時の中東は情勢が不安定で何度も戦争が起きていました。
彼の著者『HADAKA-JIME(裸締め)』はそんな中出された本です。しかし彼の兵士育成方法は一部の特殊部隊に採用されただけで終わったようです。

生態心理学とフェルデンクライスに共通する兵士育成という戦争の陰。

科学は戦争によって飛躍的に進歩すると言われますが、兵器だけではなくそれを扱う人間(科学)もまたしかりなんですね。ちなみに理学療法や作業療法も戦争での傷病兵の社会復帰が欧米で必要になりできた職種でしたよね。

私は武道を愛してますが暴力や戦争は断固反対してます。
あと合氣道をやってますが、合氣道は『倒しに来た相手とお友達になることを目指している』ので大好きなんです。そして多くの礼儀と理学療法へのヒントを教えてくれます。
過去の過ちから多くを学び未来につなげていきたいと考えてます。



空間での水平面の定位に興味がある方は
ヒトはなぜまっすぐ歩けるのか 「めまい」とバランスを科学する』小滝 透著 第三書館
めまいを考える 過去・現在・未来』檜 學監修 金原出版
などの著書を当たってみて下さい。檜 學氏はNASAの宇宙開発にも関与した日本人です。「ヒトはなぜまっすぐ歩けるのか」はそんな檜 學氏の逸話や突発性脊柱側弯症や鞭打ち症によるむまいの仮説などを紹介した本です。両著とも読み応えたっぷりです。

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