永遠の運動。
東福寺にある重森三玲の庭と言えば、本坊庭園を思い浮かべる方は多いと思います。
三玲40歳代の野心溢れる人気のお庭です。
実は、その本坊庭園の近くにある塔頭『龍吟庵(りょうぎんあん)』も三玲の作庭だということをご存知でしょうか。
こちらが現在、特別公開中と聞いて行ってまいりました
既に盛りを過ぎたとは言え紅葉を求めて未だ賑わう通天橋をすり抜けて、さらに奥へ。
室町時代初期! の国宝である方丈がまずお出迎え。扁額は何と足利義満。さすが京都です。
もちろん紅葉は欠かせません。
『龍吟庵』は本坊庭園から二十年余り後の昭和39年(1964年)の作。東京オリンピック・イヤーですね。三玲64歳。
人間性の深みを増しつつ、創作意欲はまだまだ旺盛な、そんな頃でしょうか。
何もないことが類まれな緊張感を生む「無の庭」。
黒雲を得て海から昇天する龍を現した「龍の庭」。
そして、赤い砂が印象的な「不離の庭」
の3つがあるのですが、迫力があるのは何といっても「龍の庭」です。
まず、三玲らしい茶目っ気すら感じるリズミカルな曲線と石の配置に目を奪われますが、一旦、龍と目が合ってしまうと、それ以降は庭全体がもう龍にしか見えません(笑)。
かわいい
左上部の飛び石たちがうねる龍の身体を表しているのがおわかりになるのでしょうか。残念ながら石たちのエネルギーは写真ではなかなか伝わりません。
考えてみれば、三玲自身に関する文献はあまり目にしたことがなく、どういう意図をもってこのような曲線を生み出したのかは分かりませんが、回転を続ける渦巻きや流麗な波線には、宇宙の真理が潜んでいる気がします。三玲は、自分の存在と世界とを、これらの線によってつなぎ合わせようとしたのではないでしょうか。
稲妻を表す竹垣。
『無の庭』
『不離の庭』
こちらは、今にもとびだしそうな躍動感ある直線が素晴らしい
石や砂は無機質でそっけないものの代名詞ですが、ここにある石たちが生き生きとして見えるのは何故なのか。
きっとそれは、明確なビジョンを持って石を削り、線を生み出した三玲の意志があるからです。
この曲線がたまりません
ふと、永遠の命というのはこういうことかもしれない、と思いました。
肉体は滅びてしまっても、そこに刻まれた命は生き続けている。
そう考えると、石の中に三玲の思いが見えてきます。初めて三玲の心に触れた気がして、嬉しくなりました
興味ある方はこちらもどうぞ→『若々しい三玲~東福寺本坊庭園~』『重森三玲最後の庭~松風苑~』