ぶらっとJAPAN

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若々しい三玲 ~ 京都 東福寺本坊庭園 ~

2015-06-21 22:35:49 | 京都

 

 紅葉の名所として名高い東福寺。青紅葉もまたみずみずしくて素敵です。これ全部紅葉したら凄いでしょうね。

 しかしながら、本日のお目当ては紅葉ではありません。先日、松尾大社の記事でも触れた重森三玲43歳の最初の作庭、東福寺本坊庭園です。

 以前、訪れた時は“東福寺方丈「八相の庭」”という名称でしたが、2014年に“国指定名勝”に登録され、「国指定名勝 東福寺本坊庭園」と改まったそうです。方丈を中心に、東南西北の四方に庭が配置されています。

 中に入ってまず目に入るのが、東のお庭。庫裡と方丈を繋ぐ渡り廊下の右手にあります。

 三玲が作庭の際に示された唯一の条件は「一切の無駄をしてはならない」という禅の教えに従って、本坊内にあった材料はすべて廃棄することなく再利用するというものでした。この東庭の円柱は、山内にあった東司(便所)で使用されていた礎石が再利用され、北斗七星の形に配置されています。

 

この写真からはわかりづらいですが、北斗七星の形に並んでいます。

 

奥には天の川も。

 伝統的な日本庭園の手法の上に子供の頃から馴染ある星座の存在が、とてもモダンに感じます。

 渡り廊下を挟んで左側は、枯山水の南庭です。蓬莱神仙思想に基づいて、石は蓬莱、濠洲などの山を、奥の築山は京都五山を表しています。

 つい先日、松尾大社のお庭を見たばかりだからかもしれませんが、庭からあふれ出る情熱的な若々しさに目を見張りました。数年かけて全国の庭を見て歩き、新しい日本の庭を作ろうとした三玲氏の思いが、ド直球で伝わってきます。

茶目っ気すら感じる躍動感に思わずテンションが上がりました(笑)。

  

とび魚みたい。今にも飛び出しそうです。

エッジの効いた黒。

宇宙を感じさせる渦巻きはすでにこの頃から。

 

いい石、使ってますね!

京都五山を表す築山。三玲氏の瑞々しい感性の発露である可愛らしい丸み。

 西と東のお庭で使われている市松模様は、廃材利用であるため、ふつう庭石では使わない直線を持った石を利用するための苦肉の策だったそうです。でも、それが見事に日本のモダンな美に昇華されています。

 

西庭。作庭当時はさつきがこれほど育っておらず、もっと市松模様に見えたとか。でも、育ってきた分、迫力はきっと増してますね(^^)/

北庭。石は勅使門から方丈に敷き詰められていた切石を再利用したもの。なのでまっすぐ。

 

 市松が崩れ、石がぽつんぽつんと一つずつになるところは、はじめは白川砂の上に置かれていたそうです。ところが、この場所が苔の生育に適した環境だったため、あっという間に今のようになってしまったんだとか。設計図が残っているので復元は可能ですが、今の風情も捨てがたいということでそのままにしてあるそうです。

  

 逆向きにではありますが、庭を通して図らずも三玲氏の生涯を肌身に感じることになりました。東福寺の庭はまだどこか人間くさくて、作られた庭も具象の世界から抜けきれず、人間界にとどまっています。一方、松尾大社の、特に上古の庭は、その人間臭い部分が浄化されて、透明度が増していた気がします。三玲氏が到達した枯淡の境地です。そんな境地への憧れはありますが、今はまだ東福寺の人間臭い三玲氏に愛着を感じてしまいますね。少しばかり青臭い野心も魅力的です。

 じめついた梅雨空の下での訪問でしたが、爽やかな風が吹き抜けるような庭に、心が明るくなりました。元気がなくなった時は、ここに来ればいいですね(^0^)

 なお、庭の解説については、東福寺のホームページを参考にさせていただきました。


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