ぶらっとJAPAN

おもに大阪、ときどき京都。
足の向くまま、気の向くまま。プチ放浪の日々。

菜の花忌【司馬遼太郎記念館】

2018-02-12 21:38:02 | アート

雪のあとの快晴。

当ブログにお越しくださる皆様

ご無沙汰しております。寒い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか

カメラを持つ手もかじかむ今日この頃、外に出る気になれずに読書をする時間が増えています。最近ハマッているのが司馬遼太郎作品。

というわけで、司馬先生の命日である本日、東大阪市の司馬遼太郎記念館に行ってまいりました。

ご存知の方も多いかと思いますが、今年は『菜の花忌』と呼ばれる命日にちなんで、地域の方々が丹精した菜の花が直前に大量に刈り取られるという心痛む事件がありました。

実際、最寄り駅から記念館へと続く菜の花の列は黄色よりも緑色が目立ち、無残に刈り取られた跡を見て心が沈む道中でした。

ところが、その気持を一気に明るくしてくれたのが、展示室の入り口にずらりと活けられた満開の菜の花たち。今回の事件を知った鹿児島県指宿の方たちが励ましの思いをこめて1500本の菜の花を贈ってくださったんだそうです。

人を傷つけるのも人間、そして救うのもまた人間。輝く黄色が心にしみます。

雪だるまくんがお出迎え。

そして圧巻の展示室。なだらかな曲線を描く壁一面に司馬作品と蔵書の一部が、11mの高さの天井の上までびっしりと並べられています。まさに司馬遼太郎の『宇宙』です。

これだけたくさんの知識や物語が一人の人間の頭脳の中に収められていたなんて信じられません。(しかも蔵書は一部しか展示されていないらしいです。)『竜馬がゆく』執筆当時は、古本屋から龍馬関連の本が無くなったなど、その読書量の多さはよく耳にしますが、実際に物量として目撃するとそのすさまじさが身体にびしばし伝わってきます。安藤忠雄氏設計の建物の形がまた良いんですよね。絶妙な採光と宮殿のような高い天井は、司馬氏の脳の中にすっぽり包まれるようでとても落ち着き、世界の豊かさを感じられます。今、ここに存在していることが嬉しくなる、そんな空間です。

展示室の後は庭を散策しました。自宅の書斎を庭側から見学できるようになっています。もちろん家には塀があって外の世界から隔絶されているのですが、門を一歩出れば普通の町ですし、近くには学校や病院もあって市井の人々の日常生活が営まれています。そんな中にある書斎にこもって、歴史の渦に飛び込み、あの数々の作品を生み出す想像力。作家という人種の凄さです。

 

執筆の合間にサンルームで庭を鑑賞していたそうです。

「私には、幸い、この世にすばらしい友人がいる。歴史の中にもいる。」(21世紀を生きる君たちへ)

司馬氏は創造空間で数多の英雄豪傑と交流し、親交を重ねていったのでしょう。あの展示室を見れば、歴史の中に友人がいると司馬氏が書いた意味が、よくわかります。

『21世紀を生きる君たちへ』は全文が展示室に額装されていました。司馬遼太郎の世界への愛と憂いと希望に満ちた言葉です。今、世界はその希望どおりになっているのでしょうか。21世紀に生きる人間の一人として、少しでも力になれるよう真摯に考え未来のために努力していきたいです。

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