台風21号の気配がやっと消えたと思ったら、22号接近中の報が。どうやら今週末もまた雨の予感です。
せっかくなので長雨にぴったりの話はないかと探していて目に留まったのが、池波正太郎の『鬼平犯科帳(18)「俄か雨」』。季節は少々違い、長雨ではなく俄かですが、雨によって思わぬ人生の転機を迎える男の話です。
学生の頃は「おじさま御用達」のイメージが強く、またシンプルな筋立てが多少物足りなかった鬼平犯科帳ですが、最近は池波節の滋味にハマるようになってきました。激しい雨や妻への土産に買った黒飴などの道具立てによって浮かび上がる情景や、部下の手落ちを厳しく戒めながらも、そこに働き盛りの男のやるせなさを感じ取って抜群の差配をする人情味溢れる鬼平の度量はしみじみと味わい深く、最後はよく出来たお芝居を観たような爽快感がありました。特に黒飴のエピソードは秀逸で、読みながら「舐めるんかい!」と突っ込んでしまいましたが(笑)、その一事で男の人間性が垣間見える見事な描写です。
ところで、この黒飴は目黒不動門前の『桐屋』のものですが、このお店、江戸時代には本当にあったようですが、残念ながら現在は存在しません。
同じ池波正太郎の小説『剣客商売』でも目黒界隈の描写があるので、以前何度か散策したことがありますが、なかなか当時の情景を見つけるのは難しいです。ただ、本編に出てくる目黒不動はもちろん、行人坂は今でもありますし(疲れた時にのぼると心が折れちゃうくらい急です^^; 普通の坂の五倍増しぐらい?)、富士山が見えるポイントもあります。
もともと目黒は大名屋敷が連なっていたところで、その敷地跡を利用した施設が結構あって、大きなところでは自然教育園(都心とは信じられないくらいの大きな森です)、また、道路沿いにもけっこうな大木が点在していますし、歴史ある街なんだなと思います。目黒駅近くの東京都庭園美術館は一時吉田茂の公邸だったそうで、渡辺謙さん主演のドラマでも使われていましたね。
池波正太郎の世界から脱線してしまいました^^; でも、目黒はこの他にも興味深いところがたくさんあって、絶好のぶらっとポイントです。
ちなみに今年2017年は鬼平誕生50周年だそうで、今年になって決定版(!)が順次刊行されています。秋の夜長に手にとってみるのもいいかもしれません。そして、想像力が必要とは言え、目黒の寺町や不動前門前はまだまだ古きよき日本の面影を残していますので、池波ワールドに浸りたい方には本を片手の訪問をお勧めします^^
【読んだら行ってみよう!】
目黒不動尊(東京都)
行人坂(東京都)