ミャンマー語の人称代名詞は多様です。
自分が男か女かによって「私」に当たる言葉が異なるし、相手の年齢によって「あなた」にあたる言葉が違う。
そのかわり、ミャンマー語の文において主語は必須の成分ではない。聞き手にとって自明であれば、主語を言う必要はありません。
日本語と同じですね。
文法的に主語が重要な言語(例えば英語やフランス語)では、人称代名詞は比較的単純。逆に主語があまり重要ではない言語(日本語や韓国語やミャンマー語)では、人称代名詞がむしろ多様、というような法則がありそうです。
では、ミャンマー語で「私」はなんというか。
男の場合はチャノ、女の場合はチャマ、男女どちらにも使えるのがンガーだそうです。
私が買った『ミャンマー語が面白いほど身につく本』にそう書いてありましたし、大阪外国語大学がフリーで提供しているミャンマー語学習サイトにもそうなっていました(→リンク)。
ところが、この二つの資料は、ミャンマー文字の表記が異なる。どう異なるかは、このブログでミャンマー文字を書けないので、見せられないのですが、大阪外大のほうが複雑です。そして、大阪外大の説明には、「綴りとは異なり「チャノ(チャマ)」と読む」とあります(→リンク)。
私が持っているもう一冊の学習書『はじめてのミャンマー語』では、どうなっているかというと、「私」を表す言葉が男用と女用にそれぞれ二つずつ掲載されていて、男がチャノとチュンド、女がチャマとチュンマ。
そして、チュンド、チュンマのミャンマー文字表記が、大阪外大サイトの「チャノ」「チャマ」と一致している…。
これをどう理解したらいいのでしょうか。
実は、『面白いほど』と『はじめての』は著者が同じでチェリー・マーラー・トゥインさん。1989年以来日本にいるミャンマー人です。そして『はじめて』のほうは2004年の刊行、『面白いほど』のほうは2012年。同じ人が、8年後に記述を変えているわけです。一方、大阪外大のサイトは2011年に開設されています。
ここからは私の推測です。
もともとミャンマー語の「私」は、男はチュンド、女はチュンマを使っていた。
ある時期から、チュンドはチャノに、チュンマはチャマに変化した。
しかし、書き言葉では依然としてチュンドやチュンマという表記を使っていた。
最近、チャノ、チャマを発音通りに書く書き方がされるようになった。
しかし、学校教育や正式な文章では、昔通りの綴りを守りながら、それをチャノ、チャマと読ませている。
当たっているかどうかわかりません。もしミャンマー語に詳しい人がこのブログをご覧になっていたら、真実を教えていただけるとありがたいです。
ところで、日本語の私という漢字は、学校や放送では長らく「わたくし」が唯一の読み方とされていました。私の字に「わたし」という読みが認められたのは、2010年のことです。
でも、多くの人はかなり前から私と書いて「わたし」と読んでいたんですけどね。
ミャンマー語の場合も、それと同じようなことが現在進行しているんじゃないかというのが私(わたし)の考えです。
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Wikipedia でも取り上げられています。
私は、ぼく、おれ、わしなど平凡な言葉しか思いつかなかったのに、我が輩とか拙者などという言葉を書いた塾生がいて、びっくりしました。