中には、回り舞台やせり上がりに奈落もある、文化財です。
天気がいいと、季節と歴史が親和します。
50歳になって初めての混成競技です。
全日本混成への参加は5年ぶりになります。
先月の全日本マスターズと、この大会が私にとっては双璧で、
一年で最大の目標になっているのですが、
46歳から毎年、全日本マスターズまではなんとか体の故障をごまかしつつ、
全日本混成までは体がもたず、エントリーするも参加できずが続いてきたのでした。
しかし今年はアキレスの違和感はあるものの、体は動くし、
全日本後にパワーアップトレーニングもできたので、やや意気込んで会場に乗り込みます。
もちろん、タイガースがクライマックスシリーズで勝ち続けていて、
今日ジャイアンツに勝てば、日本シリーズにコマを進めるという、信じられないような事態が進行しているのも
気分を後押ししています。
競技場に到着してプログラムを開くと、M50にはよく知っている名前が5名、初めての方が2名がエントリーしています。
KAZさんいわく「(混成競技の)身内のようなグループ」での戦いとなります。
つまり、お互いの実力をなんとなく知っているので、どこで頑張るかなんて作戦も立ててみたりするのです。
①第一競技 走り幅跳び 午前10時30分スタート
私の専門競技ですから、得点を稼いで最初だけでもトップに立ちたいものです。
気持ちのいい追い風で、助走もこの一ヶ月の下半身基礎トレのおかげで、リズムよくブレることなく進みます。
一本目で5m41の記録を残し、二本目は踏切への力をさらに加え、着地にも気を配り足を前にほおり出します。
5M58(追い風1.1m)、シーズンベストが出ました。尻餅をついたぶん10センチはマイナスになってますが、
踏切板をうまく叩いて飛び上がったのは間違いありません。
これでまずはトップに立った、と思っていたら、5m73を神奈川のK林さんがぶっちぎりで跳んでいました。
さすが短距離の専門家、助走のスピードを最大限に生かしてジャンプすると結果も大きいのです。
3本目は、ホームランを狙ったゴメスのような大ぶりの踏切でファール、残念ですがそんなもんでしょう。
②第二競技 やり投げ 午後0時30分スタート
大好きなやり投げですが、今年は出場する機会がなく初めてです。
しかもM50になると800グラムから700グラムのヤリに仕様変更となるのも
筋力のない私にとっては楽しみなところ。
しかし、期待を寄せる人に罠を仕掛けてくるのが人生というものです。
第一投擲者として投げ出したやりは、軽くなったぶん腕が大きく振れて上にあがります。
ただ、回転が少ないのは指の引掛けができていないからでしょう。
ストンと胴体着地して赤旗です。
いつもならとってくれるくらいだけどな・・・と少々ぼやきつつ見ていると、
次に投げた方も痕跡残さずの赤旗・・・今日の審判は厳しめのようです。
2投目、同じような弧を描きますが、腕を振り抜いたぶんやや中間で伸び、頭から地面に向かってくれました。
白い旗があがりますが・・・見やっていた自分の体がぶれて、右足が左足にひっかかり、たたらを踏みます。
おっとっと、と足は白線の上。審判がさっと赤旗を、見る限り嬉しそうな顔をして上げてくれました。
楽しみにしていたやり投げでも、残りは1投となると、焦りが先に立ちます。
混成競技が辛いのは、ひとつの競技で記録が出ないと、0点を引きずったまま次の競技に臨まなければならないことです。
とはいえ、安全策に出過ぎるのも悔しい。
だから選択は一つです。
踏み出し足を強くブロックして体を弓なりにして、思い切った腕振りをするイメージは持ちながら、
踏切線は超えないようにするため、投げ出しをずっと手前で済ませました。
たぶん計測開始ラインまで2メートルはあったでしょう。
それでも、やりは3投のなかで一番綺麗にフライト姿勢を保ってくれました。
記録35m21、幅につづきK林さんの後塵を拝します。
③第三競技 200m 午後1時50分スタート
秋の日はやや斜めから差してきます。それでも直射日光に当たると頭が暑くなるくらいの力は持っています。
フルで3回ずつパワーを使った2種目の後、200mのスタートを待つ体は、なかなか言うことを聞いてくれません。
スタブロの練習をするだけでも、足が重くなってきます。
目標タイムは全日本で出した25秒81ですが、せいぜい26秒を切るのが順当な目標のようです。
この時間帯は朝と風向きが変わってホームストレートが逆風になっていました。
すると、静岡マスターズの審判団は粋な計らいを見せてくれます。
スタート地点の変更です。
つまり第一コーナーからバックストレートを走ってゴールする方向に変えてくれたのです。
孤独な8コースという位置と、体の疲労があっても、この静岡マスターズの英断で、タイムは救われました。
短距離本職のK林さん、ケガから回復中とはいえ自力の違いを見せるアッキーさん、そして
私の5種モチベーションを最大に引き出してくれるKAZさんが後ろから抜き去っていくのを
バックストレートでなんとか視界に入る範囲での遅れにとどめることができました。
25秒90(追い風0.9メートル)、組で4位ではありますが、良かったーと声を上げそうになる私です。
④第四競技 円盤投げ 15時スタート
最も不得意な競技で、どうにも飛ばせるイメージがありません。
とはいえ、ヤリと同じく道具が軽くなるといいうM50特典があるので、
自己最高記録となりました。
21m52、立ち投げで踏ん張った成果です。
今回の円盤でもっとも嬉しかったのは、高校生補助員の活躍です。
実にキビキビと動き回って、五枚しかないディスクをフィールドから選手に届けて
また戻っていきます。
円盤投げは、わりにこの回収システムがうまくいかず、延々と競技が長引き、
みんなの試技が終わる頃には、もう1500mのスタート時間が迫っている
なんてことがよくありました。
⑤最終競技 1500m 16時20分スタート
マラソンとマスターズ陸上を両方やっていた頃は、1500mが怖くありませんでした。
今は、つらいです。昔戻りしています。
しんどい1500が最後に残っているのが、ある種、混成競技の醍醐味です。
地獄に突き落とし這い上がってくるのを待つ閻魔さんの意思を感じるような、
試練を与えて、最後の栄光に導く神様のような。
10分ほどJOGをしてから聞いた号砲に足を機械的に前へ出すように心がけ、
5番目に位置を保ちます。
KAZさんアッキーさんが先行するのを眺めつつ、
1周目に私の体がどのくらいの負荷を感じているかを観察していました。
ありがたいことに、これまでも混成競技会でしばしばご一緒した、同郷のE本さんが
時間を読み上げてくれます。
81秒。
織田での練習通りです。
5分15秒の目標を達成するためには、1周目で余裕を持ってこれくらいで入らないはず。
一人練習だと、2周目はぐんとペース下がりますが
そこはレースで、みんなの力がトラックに渦巻いています。
その力を共有していれば、極端なタイムの落ち込みはないはずです。
2周め86秒、悪くない、ここでもE本さんが励ましてくれたので、へこたれずに済みました。
1100では最終周の鐘音が気分を鼓舞してくれ、1250mで2位に上がり、
コーナーを耐えて走ったあとはストレート。
すでにゴールに入っているKAZさんを見てから、私もラストスパートを始めて、
なんとか走りきりました。
5分16秒49、
バタンキューも笑顔です。
次々にゴールする選手たちと握手をするのは、
ラグビーのノーサイドのような気持ちでしょうか。
よく頑張ったよね一日。
体を使い切って走り跳び投げた6時間。
閻魔様と神様が最後に用意してくれた大切なレッスンも正面から受け取り乗り越えました。
だからもういいのです。
終わりです。
汗でいっぱいの手で、お互いの努力と健康をたたえ合いましょう。
後で言葉にするならそんな思いを込めるアスリートのおじさんたち、
いいものですよ。
5つの競技が終わった私の得点は3052.
M45では3025点がベストでしたから、自己最高!とも言えます。
ご褒美もいただいた、ということでしょう。
そんなこんなで、マスターズでは2度目になる表彰台にも立たせていただき、
すっかり疲れを忘れてしまいました。
選手の皆さん、静岡マスターズの競技役員に補助員の皆さん、
おかげさまで楽しいく充実した一日をいただくことができました。
感謝しています。