焦りながら仕事を終えて、20時ちょっと前に織田フィールドに着きました。
金曜の定例夜間開放、あと閉門まで一時間しかありませんが、人出も引いていく時間帯なので、
比較的たっぷりとグラウンドを利用できます。
ナイターのあかりで浮かび上がる赤い走路に立つ自分、うっとりします・・・
ほど自己陶酔はしませんが、ちょっと舞台に立つというシチュエーションには高揚します。
さっさと走りたいと思いつつ、怪我を抱えている体に焦りは禁物。
どうしてもスピードがでるJOGも押さえつつ、下半身のストレッチをたっぷり入れます。
落ち着くために寝ころんで、足を左右に振って腰もストレッチ。
さらには、軽くパワーを使って筋肉を目覚めさせるという金 哲彦流アレンジを試みます。
V字腹筋、腕立て伏せ、その場ジャンプ。
瞬発力をすこし使った筋肉は確かに繊維の間の距離を縮めて、
次のドリルがリズミカルにこなせました。
ますます気持ちよくなって、まずはいつものコーナーからの130m流し。
分厚い底のナイキズームではスピードの出しようもありませんが、その分着地の踏み込みを
はっきりと感じ取ることができます。
ゴールまで回転もほとんど落ちないので、さらに気分が良くなります。
続けても一本走り、スパイクに履き替えます。
今日はいつもより短いピンをつけています。
足への衝撃を少なくするためなのですが、意外にスピードも落ちない気がします。
というより、長いピンを使いこなせないからかもしれません。
ウレタンゴム素材のトラックをくぼませるのがピンの役目ですが、長すぎるとその分深くゴムをしならせねばならず、
当然パワーが必要になります。
でも、私の下腿筋肉には9mmピンなどを押しつけるだけの力がないようなのです。
中途半端な深さで止まったピンは、ちょっと不安定なまま地面から押し返されてしまい、
十分な走力に結びつきません。
それに対して、5mmピンならウレタンゴムトラックに奥まで押しつけ、
靴底前部も表面にタッチするため、すべての地面反力を受け取ることができると考えられるのです。
たわむゴムが浅い分、当然反力は小さくなりますが、使いこなすことができるので無駄がないのです。
だから短いピンだとゴールまで足が動き続けます。
130m×3本、息は上がりますが、体は元気です。
さあ、次は何をしようかと歩いていると、後ろから声をかけられました。
あ、久しぶり。
東京マスターズの幅跳びと5種競技仲間、同じ時期にマスターズ競技に参加し始めた
T橋さんです。
お目にかかるのは7月の千葉マスターズ以来、織田フィールドでは1年ぶりかもしれません。
最近のレースのことを話しつつ、2週間後の岡山全国大会のことをうかがいました。
T橋さんは幅跳びとヤリ投げに出場されるそうです。
ランシャツが重そうに汗を吸っている様子を見ると、今日もかなり練習をされているようです。
では岡山で、と別れて、私は200mのスタートに向かうことにしました。
頑張っている仲間を見れば、練習にも力が入ります。
岡山で今年初めて走る200m、少しは追い込んでおかないと。
だからスタートもクラウチング姿勢、MAXで飛び出し、思い切り上半身で引っ張りながら
絶対スピードは落とすまじと、最後の50mは使い切っていない大腿四頭筋に意識を集中して、
走りきりました。
MAXな分、ゴールでの息は荒れまくり、でも時間は20時42分。
もうすぐ照明が落ちます。
あと一本。どうするか・・追い込めるか?
歩いて息を整えながら考えます。
大丈夫、あと一本なら、
300mにしました。
さすがに休憩2分でクラウチングをもう一度とるのは無理でしたが、
リズムだけは作り姿勢を高くたもってバックストレートを駆け抜けます。
そこからあとは、頭が真っ白、
機関車のようにハアハア声を出していたような気もします。
崩れるな膝、下がるな腰、腕を高く大きく・・・
はい、倒れ込んでゴールです。
そのままゆっくりJOGに入り、少しだけ体操。
すぐに照明も消えました。
結局着替える時間もなくなり、ランニングウェアのまま家路についた夜には、
蝉の声がいつの間にか消えて、虫の音が静かに響いているのでした。
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