「EU Film Days 2010」 で観たもうひとつの作品は、『パトリックは1.5歳』 という2008年のスウェーデン映画。
スウェーデン映画は、これが初めてだった。
新しい生活を夢見て郊外に越してきたゲイカップル。養子として1歳半の赤ちゃんを迎えるはずが、やってきたのはゲイ嫌いで犯罪歴のある15歳の少年だった――。
デリケートな題材を見事に描いた、各国で評判の話題作。(EU Film Days 2010公式サイトより)
日本の環境からは少し遠いテーマだが、セクシュアル・マイノリティが社会や文化において順応して行くことの難しさを、分かり易くユーモアを交えて伝えている。
新居を構え、養子を迎えようとする妻ゴランと夫スヴェン。条件は整っていても、ふたりの環境がネックとなってなかなか養子が決定しなかった。
そんなある日、養子が見つかったというセンターからの手紙に大喜びするふたり。手紙には “Patrik 1,5” と書かれていた。
子供部屋をおもちゃやぬいぐるみでいっぱいにし、パトリックがやってくる日までワクワクするふたり。しかし当日やってきたのは、15歳の不良少年だったのだから、さあ大変。
センターからの手紙はタイプ・ミスだったのだが、最悪な思い出しかない更生施設に戻されることを拒絶するパトリックを、ゴランは引き取ることに決めたものの、スヴェンは猛反対。パトリックを巡ってふたりの関係は気まずくなり、ついにスヴェンは家を出て行ってしまう。
その時のゴランのセリフ、「ここを出て行くのは君だよ、スヴェン。パトリックじゃない」。ふたりの愛より、ひとりの人間を守ったゴラン。このセリフにはジーンとさせられた。
それから、ゴランとパトリックの共同生活が始まり、悪ガキだったパトリックもだんだん明るくなって行き、ガーデニングやスケボーの技術を活かして、パトリックの存在が近所の人々の偏見を徐々に和らげて行くのだった。
やがてパトリックの計らいでスヴェンが戻ってくることになるのだが、結局全てパトリックがいたからこそのこと。
もし本当に1歳半の赤ちゃんが来ていたら、子育てに追われる日々の中で、本心は子供はあまり好きではないスヴェンとの仲はギクシャクして行くだけで、きっとこんな環境は築けなかっただろう。
日に日に仲良くなって行くゴランとパトリック、本当の親子のように見えて微笑ましかった。でもそんな時、パトリックに良い養子先が見つかったという連絡がきてしまう。果たしてパトリックはどうなる?どうする?(結末は敢えて伏せておく)
いろんな面で考えさせられることや共感できる部分が多々あり、観て良かったと思わせてくれるいい作品だった。
この鋭い目つきがだんだん優しくなって行く