
生誕100年を記念して開催されている、『ダリ回顧展』 に行ってきた。
とりわけ絵画や美術に精通しているわけでもないが、海外では時間のある限り美術館に行く。
とっても落ち着く、美術館の空間が好き。
でも日本で美術館に足を運ぶのは、よっぽど興味のある作品の展覧会がある時だけ。
何故なら・・・ま、その理由は最後に書くことにして、本題ダリ展のこと。
好きなアーティストは何人かいるが、Salvador Daliはその何人かには入っていない。
でも、彼の作品には何か惹きつけられるものがあった。
今回間近で作品を見たことによって、その何かが少しだけわかったような気がする。
Daliと言えば、溶けてゆがんだ時計に代表される、シュールレアリスム。
“シュールレアリスム” について、辞書では 「20世紀を代表する芸術思潮のひとつ。ダダイスムの思想を受け継ぎつつフロイトの深層心理学の影響を受け、理性の支配をしりぞけ、夢や幻想など非合理な潜在意識の世界を表現することによって、人間の全的解放をめざす芸術運動。」 とあるが、なるほど~と思ってもピンと来ない・・・。
Daliの作品からは、現実世界の中に見る幻視、意識と無意識、夢と現実、生と死、存在と虚無・・・そんなものを感じる。
きっとそれがシュールレアリスム?
あのピンと左右に跳ねたヒゲとギョロっとした目の外見からは想像できないくらいに、Daliという人は儚いくらいに繊細でモロい人なんだな~ってことが、作品を通じて感じられた。
そのひとつひとつに描かれた非現実な世界、見つめれば見つめるほど様々なものが見えてきて、中には鳥肌が立つものもあった。
そして、じっくりと注意深く見なければ見落としてしまうような、隅っこや背景の奥の方にも、細か~い描写がされていて、それに目が釘付けになった。



特にビビッと感じ、惹かれた作品がこの3点。
①邦題は、「夜のメクラグモ・・・・・希望!」。
メクラグモは、ヨーロッパでは “見つけると幸福になる” という言い伝えがあり、そのメクラグモが女性の顔を這っている。
Daliの作品の中にたくさん見られる、蟻や松葉杖も描かれている。
戦争を描いたこの作品には、希望と絶望が同居している。
ぐにゃっととろけたチェロを弾く女性を見つめていると、ゾクっとした。
②邦題は、「三世代 老年、青年、幼年」。
まるで騙し絵のようなこの作品。Daliが絵の中に上手く仕組んだ目の錯覚を起こすトリック。
間近で見たあとに離れて見て、再び近づいてみると、その面白さと素晴らしさが更に深まった。
③邦題は、「生きている静物(静物-速い動き)」
正にタイトルどおりの作品で、水差しや林檎やトレイが本当に生きているようだった。
躍動感とスピードが絵の中に滲み出ていて、今にも動き出しそうだった。
音楽もそうだが、絵画の鑑賞で感じるもの、見方(聞き方)は人それぞれ。決まった定義などない。
今回、Daliの作品約60点を通して感じた繊細さ、不思議さ、幻想感は、間違いなく私の心と頭の中を刺激してくれた。
さて、私が日本であまり美術館に行かない理由・・・。
具体的にこれこれだからというのはないのだが、強いて言えば鑑賞のスタイルが好きではない。
何故もっと自由に見ることができないのだろう・・・。
それと、やたらと照明を暗くするところも好きではない。
今日は平日ということもあって、ちっとも混んでいなかった。
2~30分並んで入ったニューヨークのMOMAでは、あんなに混んでいたのに、何のストレスもなく自由にいろんな角度から鑑賞できて、気に入った作品は時間をかけて見ることができた。
でも、さほど混んではいなかった上野の森美術館には、私の好きな落ち着く空間がなかった。
生誕100年記念 『ダリ回顧展』
東京上野の森美術館
2007年1月4日(木)まで開催
午前10時 ~午後6時(会期中無休)