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『THE ハプスブルク』 と 『やすらぎのオーストリア』

2009-10-30 | art


去年、チェコとオーストリアを旅行する前に、いろんな本を読んでそれぞれの国の歴史なんかを勉強した。
世界史は苦手だったのに、人は興味を持つと面白いくらいに頭に入るものだ。(笑)
そして、特にその中で頻繁に登場する “ハプスブルク帝国” に興味を持ち、今もハプスブルクに関する本をいろいろ読んでいる。
ハプスブルク帝国は、“幸いなるオーストリアよ、戦いは他の国に任せるが良い。汝は結婚せよ” という家訓が示すように、結婚政策によって領地を増やし、600年以上同じ家系が続いたヨーロッパ最長の王家である。
そんなハプスブルク家のお宝コレクションが、現在東京の国立新美術館で開催されていて、ウィーンの美術史美術館とハンガリーのブダペスト国立西洋美術館所蔵の絵画や工芸品が出展されている。
ウィーンでの滞在期間中は美術館に行ってゆっくり鑑賞する時間がなかったので、「日本オーストリア交流年2009」 のイベントの一環の、とても楽しみにしていたこの 『THE ハプスブルク』 と題された展覧会に、先週行ってきた。
朝一で行けば空いているかなと思い、開館時間を少し過ぎた頃に乃木坂に着き、荷物をロッカーに預けて入場。列が出来るほどではなかったが、それでも場内はもう既にたくさんの人で混み合っていた。(実はこの朝一で行ったのが失敗だった。理由は後ほど・・・)

まず最初に、このうりざね顔のルドルフ2世がお出迎え。何となく愛嬌のあるこのお顔が好き。ルドルフ2世は、教養に富んでいたが政治的には無能だったらしく、何となくわかるような気がする。
その横には、栄光のハプスブルク家の家系図が掲示されていた。興味を持ち出した当初は、同じ名前で1世とか2世とか付くだけなので、どれが誰なのかさっぱり分からなくて覚えるのにひと苦労したが、今ではだいたい把握できるようになった。
 ハンス・フォン・アーヘン 『神聖ローマ皇帝ルドルフ2世』(1600~03頃)

で、いきなりハプスブルク家の肖像画の部屋。見渡すと、大勢の人が群がっていたのはシシィの愛称で知られる絶世の美女、皇后エリザベートの肖像画の前だった。日本ではシシィ・ファンが多いようなのだが、私は断然マリア・テレジア派。
“女帝”、“国母” と呼ばれているマリア・テレジアは、マリー・アントワネットのお母さん。
父親カール6世の肖像画の隣りに、11歳とはとても思えぬそれはそれは美しい彼女の肖像画はあった。
キリッとした眼差し、凛とした表情、可憐な指先、細いウエストetc...その全てに目を奪われた。23歳で相続したマリア・テレジアの肖像画は、どちらかと言えば肝っ玉母さんのようなふくよかな姿のものが多いので、この絵は珍しいのかも知れない。
 アンドレアス・メラー 『11歳の女帝マリア・テレジア』(1727)

シシィの肖像画前は塊りのような人だかりだったが、ひときわ大きな絵だったので、少し離れたところからでもちゃんと見ることができた。
ひととおり見たあと、再びマリア・テレジアの前に行ってじっくりと鑑賞したあと、次のセクションへ。ハプスブルク家の肖像画の中に、皇帝マクシミリアン1世がなかったのは残念だった。
次のセクションは “イタリア絵画”。チラシや公式サイトなどでピック・アップされているジョルジョーネの 『矢を持った少年』 よりも、私のお気に入りはラファエロの 『若い男の肖像』 だった。素朴な青年だが、なんとなく気品のある表情が魅力的。ラファエロは、これに似たような肖像画をたくさん残している。
 ラファエロ・サンティ 『若い男の肖像』(1503頃)

それからこちら。宗教画に多い 『受胎告知』 なのだが、この絵の天使ガブリエルがとても美しく、背景の色使いにも惹かれた。
天使が持っている白いユリの花は、マリアの処女性を表しているのだそうだ。
 ベルナルド・ストロッツィ 『受胎告知』(1643~44頃)

ナポリの巨匠ルカ・ジョルダーノの 『物乞い』 は、この男性の優しくて淋しげな目が印象的で、今でも心に残っている。
 ルカ・ジョルダーノ 『物乞い』(1650頃)

フィレンツェのシニョーリア広場を描いた絵があり、まるで写真のように忠実かつ鮮明に描かれたその風景に、旅の思い出が蘇るようだった。
次のセクションに行く前に、映像コーナーでちょっと休憩。「芸術を愛した王家の物語」 と題された20分ほどの映像で、今回出展されている作品以外のものも紹介され、絵にまつわる話を知ることができた。
次は “ドイツ絵画”。ここではアルブレヒト・デューラーが中心だったのだが、最初に展示されていた 『バラ冠の祝祭』 という絵に惹かれた。作者は不明のようで、“アルブレヒト・デューラーに倣う” となっていた。たくさんの宙を舞う天使の表情が何とも言えず、思わず笑みがこぼれた。この画像ではわからないが、クシャッとした笑顔がパッと見ちょっと不気味なのだが、ずっと見ているとそれが逆に可愛くて可愛くて・・・。
その天使が、バラの花で作った冠をみんなの頭に載せている絵で、聖母の優しそうな表情と天使の可愛さにほのぼの。聖母の右隣りにいるのは、皇帝マクシミリアン1世。
 作者不明 『バラ冠の祝祭』(1606~12頃)

次のセクションの入口が列になっていた。何だろう?と見ると、今回特別に出展された、明治天皇がフランツ・ヨーゼフに贈った蒔絵や画帳の展示。
壁に掛けられているのではなく、ガラス・ケースに入った棚に置かれ、覗き込むようにして見るようになっていたのだが、列が進みそうにない。
じっくり見るのは諦めて、隙間からチラ見して、同じ部屋の “工芸と武具” を鑑賞。
カエサルやソクラテス、プラトンらの胸像や、甲冑や盾、食器などが展示されていた。
中でも目を惹いたのは、貝殻のカメオで出来た 『シャーベット用センターピース』。パール・ピンクの貝殻の器が天秤のようにぶら下がっていて、とてもステキだった。
盾の細かい装飾も素晴らしかった。戦いの時に持つにはさぞかし重かっただろうに・・・という感じだったが・・・。

ここでふたつ目の映像コーナーに立ち寄り、「ハプスブルク物語」 という10分ほどの短い映像を鑑賞。シェーンブルン宮殿やブルク公園などの映像を見ていると、ウィーンにまた行きたいという気持ちがつのった。
次のセクションは “スペイン絵画”。ここでは、ベラスケスのふたつの肖像画が群を抜いて素晴らしかった。
ひとつは、お人形のようなおすまし顔の、スペイン王女マルガリータ・テレサの肖像画。マルガリータは幼い頃からレオポルト1世のいいなずけだったので、未来の皇后の成長を肖像画で記録し、ウィーンに送っていたらしい。
もうひとつは、女の子みたいな王子フェリペ・プロスペロの肖像画。この王子は生まれた時から病弱で、4歳で亡くなったらしい。病弱ゆえ、白いエプロンに悪霊祓いの鈴や、伝染病除けのハーブ入れなどがぶら下がっている姿に胸が痛んだ。
先日この展覧会の特集番組が三輪明宏のナビゲーターで放送され、これらの絵に込められている事柄を知ったのだが、そういう内容を知った上で見ると、より一層感慨深かった。
 ディエゴ・ベラスケス 『皇太子フェリペ・プロスペロ』(1659)

この部屋で、今回いちばん好きになった絵に巡り会った。大天使ミカエルを描いた作品で、色使いと大天使ミカエルの表情が鳥肌が立つほどステキで、かなりの間その絵の前に立ち尽くして眺めていた。
その素晴らしさは言葉で表現するには難しいが、とにかく大天使ミカエルに吸い込まれるようだった。
 バルトロメ・エステバン・ムリーリョ 『悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル』(1665~68頃)

最後のセクションは “フランドル・オランダ絵画”。出展数は多かったが、さほど印象に残る作品はなかったのでサクッと回り、最後にもう一度マリア・テレジアの肖像画を見ておきたくて、最初の部屋まで戻った。
じっくりとこの目に焼き付けた後、ここに載せたお気に入りの絵をもう一度見ながら回り、再び大天使ミカエルの前に行ってから会場を出た。
出たところにあるミュージアム・ショップは激混み。やっとのことで、お気に入りの絵のポストカード数枚と、マリア・テレジアの肖像画のポートレートなどを購入。
最初に朝一で行ったのが失敗だったと言うのは、殆んどと言ってもいいくらい年配の人ばかりで、しかも私語の声が大きくてうんざりだったから。
話しをするなとは言わない。でも、近所の公民館にでも来ているような感じで、大声で世間話しているのが背後から聞こえてくるのは我慢ならなかった。
おまけに立ち止って見ているところを、後ろから来てまともに被るように前に立ちはだかられる始末。こういうことが多々あった。
加えてショップでの押し合いへし合い、我先にという割り込み。久しぶりに “オバタリアン” という死語を思い出した。平日だし朝一で行くと空いてるだろうなと思ったのだが、年配の方たちは朝が早いんだった・・・ということを忘れていたのだった。

最後のショップでの超満員に少しぐったりしてしまったが、渋谷に行ってよく行くお店でパスタ・ランチをしたあと、向かったのは公園通りにあるたばこと塩の博物館。
もう何百回というほどこの前は通っているが、中に入ったのは初めて。今ここで、『やすらぎのオーストリア ~カフェとたばこにみるウィーンの文化史~』 という特別展をやっている。入場料が300円という安さ!
まず、その会期中のイベントである映画上映に参加。DVDの映写だったが、『プリンセス・シシー』 という1955年のドイツ映画を鑑賞した。シシィと言えば、姑との確執や最愛の息子の死など、悲劇的なことが頭に浮かぶが、この映画はフランツ・ヨーゼフ1世と出会って恋に落ち、結婚するまでを描いた作品だったので、ハッピー・エンドで終わった。
映画鑑賞のあと、特別展を鑑賞。王宮で使用された家具や食器、皇帝や皇妃の肖像の入った調度品、皇帝愛用のシガーホルダー、ウィーン万博に出品された見事な装飾のパイプなど、貴重な品々を見ることができた。
ベートーヴェンの肖像入りのスナッフ・ボックス(嗅ぎタバコを入れるケース)は、なんと髪の毛入りだった。
 フランツ・ヨーゼフ1世肖像付金製スナッフ・ボックス(1908頃)
 ベートーヴェンの肖像・巻毛入り張り子スナッフ・ボックス(1830頃)


『THE ハプスブルク』
東京国立新美術館
12月14日(月)まで開催
午前10時 ~午後6時(毎週火曜日休館・金曜は午後8時まで)
※11月3日(火・祝)は開館、翌4日(水)休館

京都国立博物館
2010年1月6日(水)~3月14日(日)
午前9時半 ~午後6時(毎週月曜日休館・金曜は午後8時まで)
※1月11日(月・祝)は開館


『やすらぎのオーストリア ~カフェとたばこにみるウィーンの文化史~』
東京渋谷たばこと塩の博物館
11月3日(火)まで開催(月曜日休館)
午前10時 ~午後6時


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2 Comments

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はろ~! (amour)
2009-10-31 09:57:24
オバタリアンという言葉に反応しちゃった 笑
我先にって、さっき私もブログに書いたとこだったし。
おばさんだけじゃないけど。
美術館とかでバトルするって、本当に嫌だわ。
芸術観賞して心を癒そうと思っていくのに。

この間の旅行の時は、みんなが映画見ている時に日本人カップルが話し始めたり
最近は、図書館でずっと話し続ける日本人みたり
日本人の印象がとても悪い私だった。
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やっぱり? (bloom)
2009-10-31 21:56:12
反応しちゃいましたか。ははは。
この私のうんざり具合、きっとamourちゃんならわかってくれると思ったわ。

旅行に行った時だけでも同じ日本人と思われたくないと感じてしまうことが多くて嫌になっちゃうのに、そっちに住んでたら余計感じるよね。
今回はオバタリアンだったけど、去年はローマやフィレンツェで、卒業旅行のお○か丸出しのグループいっぱい見たわ。
何かの入場時は、日本人の前後に並ばないようにしてるくらいよ。連れだと思われたくないもん。
あれよね、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」、仲間がいると自己中発揮ってやつ。(苦笑)
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