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サーチュイン遺伝子とレスベラトロール

2012-11-12 09:37:44 | 健康・病気

2011年8月6日、NHKサイエンスzeroでサーチュイン遺伝子に関する放映があった。サーチュイン遺伝子は、長寿遺伝子または長生き遺伝子、抗老化遺伝子とも呼ばれ、その活性化により生物の寿命が延びるとされる。サーチュイン遺伝子の活性化により合成されるタンパク質、サーチュイン(英語:Sirtuin)はヒストン脱アセチル化酵素であるため、ヒストンとDNAの結合に作用し、遺伝的な調節を行うことで寿命を延ばすと考えられている。この様なサーチュインの作用メカニズムはマサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテのグループが1999年に見出した。酵母のSir2遺伝子がヒストン脱アセチル化酵素であることを見出し、この酵素の作用が代謝や遺伝子サイレンシング、加齢に関与していることを示唆した。

 

サーチュイン遺伝子は動物の長い飢餓の歴史の中で、飢餓対策として生まれたものである。その働きは遺伝子の長寿に関わる箇所を選び出して元気づける。第二次世界大戦を生き延びた世代の、100歳以上の元気な老人の調査では、いずれも若い頃から小食でサーチュイン遺伝子の働きが活発だった。これは人類渇望の夢の遺伝子である。更に注目すべきは遺伝子損傷の修復能力である。

 

40代~60代の被験者4人での実証実験では30パーセント減らした食事を3~7週間続けただけで、長寿を担っているサーチュイン遺伝子が目覚めて働き始めるそうである。飽食の現代人のサーチュイン遺伝子は殆ど休眠中で、その結果、老化が進行する。しかし、飢餓状態になると目覚め、細胞中のミトコンドリアを活性化させてエネルギー効率を高める。更に、活性酸素の害を防ぎ、免疫力低下、動脈硬化、高血糖、骨粗鬆症、脱毛白髪等の老化症状を防ぎ改善して、美肌と持久力と抗がん作用を高めるそうである。

 

「腹八分は健康長寿のもと」はどうも本当だったようだ。米国の大学で20年ほど飼われている猿集団の比較実験がある。人間での70歳相当の猿二頭での比較では、飽食の猿は毛が抜けシワがより見るからに老いていた。対して食事30%減の猿は毛ツヤは良く、肌も張りがあって元気で若々しかった。更に、脳の断層写真でも萎縮はなく、記憶力も良く、持久力も優れていた。実験では40%減食が一番サーチュイン遺伝子の増加が見られたが、それでは挫折する可能性が高く現実的ではない。臨床実験では、一般では25%減が良いとされていた。

 

レスベラトロールは1939年に北大の高岡道夫氏が有毒なバイケイソウから発見した。動物実験では、長寿、抗炎症、抗癌、血糖降下、放射線障害抑止などの効果が確認されている。殊に、放射性物質に汚染された日本では放射線障害抑止作用は注目されそうである。

 

Resveratrol

 

 

Reveratrolhomoalfa
図2 MOPACで計算したresveratrol radicalのHOMO(図のクリックで拡大)。

 

レスベラトロールを毎日服用すれば、食事制限なしでサーチュイン遺伝子を活性化できる。レスベラトロールと同様の薬品が次々と開発されれば平均寿命100歳の実現は近い。元気な老人が増えれば医療福祉費が削減され、少子高齢化社会の朗報になる。

 

現在、レスベラトロールと同じようにサーチュイン遺伝子を活性化する薬品が合成され臨床実験に入っている。その一つがSRT3025で、レスベラトロールの1000倍の活性化力が確認されている。同様の薬品は世界中の製薬メーカーが開発競争中で、近いうちに国内でも信頼性の高い薬が発売されそうだ。もし実現したら、糖尿病等を始め、老化により引き起こされる殆どの病気が治る可能性がある。しかし、一化学者として不思議に思う。単純なポリフェノールがなぜこのような夢の多機能を発揮するのか??図2の分子軌道から何も読めない!!
食事制限で寿命が延びること自体は否定されていない。スイス連邦工科大学研究者のネイチャーへの発表では、サーチュイン遺伝子の寿命延長効果に疑問を呈する一方で、健康上の利点を述べている。マウスなどの哺乳類を、加齢関連の疾病による代謝ダメージから守る効果は間違いなくある。加齢による衰えを遅らせ、先天性・後天性の病気の治療として有望であることに変わりない。言い換えると、サーチュイン遺伝子が直接に寿命を延ばす効果はないとしても、食べ過ぎによって身体が受けるストレスを緩和する効果があることは間違いない。要約すれば、レストラベールには疑問符がつくかもしれないが、「腹八分目が健康の元」はどの研究でも評価されている。

 

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