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今日もArt & Science

写真付きで日記や趣味を勝手気ままに書くつもり!
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あるいは寺田寅彦の様に!

ちょっといっぷく12 アフラトキシン

2008-09-17 15:50:59 | 健康・病気

 事故米の不正流通に端を発して、アフラトキシンやメタミドホスといった化学専門用語がマスメデイアを撹乱している。

180pxaflatoxin_b1

図1 アフラトキシンB1の分子構造(クリックで拡大。)

 

 アフラトキシンはカビが生産する最も強力なカビ毒で、地上最強の天然発癌物質とされ、中でもアフラトキシンB1 は図1に示すような構造をしているが、その毒性はダイオキシンの10倍以上といわれる。Aspergillus flavus (アスペルギルス フラバス:図2)のトキシン(毒)という意味から、アフラトキシンと命名された。主に肝細胞癌を引き起こす原因物質として知られている。アフラトキシンは少なくとも13種類(代表的なものはB1,B2,G1,G2,M1の5種類)に分かれるが毒性はB1が最も強い。

P31

図2 Aspergillus flavus (アスペルギルス フラバス)。熱帯、亜熱帯地方で繁殖する(クリックで拡大図)。

 発癌機構としてアフラトキシンは肝臓の代謝酵素シトクロムP450によって活性化され、それがDNAと結合して付加体を形成する。このとき、塩基対の代わりにアフラトキシン部がそっくり塩基対の代わりに入り込む。付加体はDNAの変異や複製阻害を引き起こし、癌化のイニシエーターとなることが報告されている。動物実験では15μg/kgのアフラトキシンB1を含む飼料を与えたラットが全て肝臓癌の発生を示すなど、非常に発ガン性が強い事が分かっている。調理では分解せず食品中に残るので厄介である。

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  図3 アフラトキシンーDNA付加体の溶液構造(NMRデータ)。中央部に右隣のグアニン7位に付加したアフラトキシン分子が見える(PDB-ID:1MKLのファイルデータをCAChe Workspaceで画像化)(クリックで拡大図)。

 図3のように、塩基対の代わりにアフラトキシン骨格がすっぽりと入っているのであるから、当然複製阻害を引き起こし、癌化のイニシエーターとなる。ここで、注意すべきは、青酸カリや一酸化炭素のように即生命の危機に見舞われるのではなく、癌化というタイムラグがあるのが怖い。マスメデイアはこの点を誤解している。したがって毒性発生患者はないというニュースが流れているが、発生はこれからかもしれない!

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ESRで照射食品を見分けるには(解説)

2008-07-07 10:09:03 | 健康・病気

1. ESRで照射食品を見分けるには
 放射線、主にγ線を照射すると、物質内に電子とホールが最初に生成する。初期状態では、これらが周囲の物質と反応し、ラジカル化容易な物質に次々と変換されて、より安定なラジカルが蓄積する。たとえば、鉄、マンガン、銅といった遷移金属イオンやビタミン類、ポリフェノール、などの有機化合物ラジカル、さらに、加工に伴うメカノラジカルなどがある。これらの信号源に加えて、放射線照射由来のラジカルによるESR信号が放射線量に比例して現れる。ラジカル種ごとに生成・消滅速度が異なるが、目的に応じ、固体マトリックス中にトラップされたラジカルなどは地質年代測定や線量計さらに、照射食品検知に利用されている。
このようにESR法の計測対象は多岐にわたるが、1)骨の中に生成するヒドロキシアパタイト中のCO2-(CO33-)ラジカル、2)セルロース由来のラジカル、および3)糖質由来のラジカル、の3種が照射食品検知用ラジカルとして採用されている。それぞれのラジカルの対象として今まで計測された食品は
1. 骨の信号: 牛、豚、羊、鶏、蛙の足、マス
2. セルロース由来信号: 黒コショウ、ピスタチオの殻、パプリ力、卵殻、Brown Shrimp、Norway Lobster 、乾燥イチジク、ナツメヤシ、イチゴの苗、オレンジやナシの種子、乾燥マッシュルーム、マカロニ、ゼラチン、生薬、小麦粉
3. 結晶性の糖質 D-フルクトース、D-グルコースに由来する信号: 結晶性糖分を含有する乾燥果物(パパイヤ、ブドウ、マンゴー 、フィグ(イチジク))。
 ここではラジカルとはESRとは何かを概説して、以下にそれぞれの代表的な測定例を示す。詳しくはそれぞれの文献を参照されたい。

2. ラジカルとESR
 通常、原子・分子内にある電子は2個ずつ対を作って原子同士の結合を形成しているが、高エネルギー照射により、電子が一個弾き出されるか、結合(ボンド)が切断されて、それぞれの分子のかけらに一個ずつ電子を持つということがおこる(図1参照)。このようにしてできた孤立電子を不対電子と呼び、不対電子を持つ分子をラジカルという。不対電子は自ら回転するためスピン角運動量を持ち、そのためにラジカル全体として磁気を帯びる。 また、不対電子は再び対を形成しようとして、再結合か別の分子Rと結合しようとして反応し易い性質を示す。

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図1 水分子(H2O)に高エネルギーを照射したとき、結合が切断されて不対電子を持つ水素ラジカルとヒドロキシラジカルが生成・消滅する様子。通常、光を放出して再結合するが、近くに抗酸化剤などの分子(R)があると、水素引き抜き反応などを起こしてR・を生成する。R・は二量体化してラジカルが消滅する。

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図2 電子スピン共鳴(ESR)吸収を示す図。

 図2に示すように、不対電子を持つ物質を磁場(H)中に置くと、不対電子が作る微小磁石が磁場に平行と反平行の二つの状態に分裂する(量子化)。これに、周波数(ν)のマイクロ波を照射しながら、磁場強度を変化(掃引)させると、物質内にある不対電子は、共鳴条件:
hν=gμH    (1)
(h:プランク定数、μ:磁気素量、g:物質に固有の定数)
を満たす位置でマイクロ波エネルギーを吸収し、高いエネルギー順位へと遷移する。この現象を利用して、不対電子を持つ化学種をマイクロ波エネルギーの吸収として検出するのがESR(電子スピン共鳴)である。装置製作上の問題から、一定の周波数のマイクロ波を試料に照射しながら、試料に加える磁場を連続的に変化させる装置が開発されている。
安定な不対電子を持つ試料などでは常温で検出されるが、寿命の短い(緩和時間T1の短い)不対電子の検出(図2参照)には液体窒素(77K)や液体ヘリウム(4.2K)を用いて試料を冷却する温度調節装置(クライオスタット)が用いられる。検出されたシグナルの同定には、照射されたマイクロ波の周波数νと、シグナルが検出された磁場の強度Hから(1)式を用いてg値が算出される。
ESR計測法の特徴は、端的にいえば、信号の”選択性“にある。即ち、1)測定対象に不対電子がなければならない。不対電子を持たない物質はESRと無縁である。2)他の計測法と異なり、周波数と磁場強度という二つのパラメータが(1)式の共鳴条件を満たすとき、初めて信号が観測される。さらに、3)適切な温度、適切な強さのマイクロ波磁場が要求される。このために、計測条件が厳しいが、逆に言えば、計測条件を満たさない対象は計測に係らないといえる。

測定例1. ESR法による照射骨付き鶏肉の線量の推定
(田辺寛子 :食品照射 第32巻 p.2 (1997) より抜粋・編集)

実験法
市販国産の手羽元鶏肉に、コバルト-60(60Co)線源(185TBq)を用いて、線量率0.5~4kGy/hrで室温または低温でγ線照射を行った。その後、これから骨を取り出し、骨幹中央部を切り取った。次に骨髄腔の骨髄及びスポンジ状の海面骨を削り取り、水洗・脱水乾燥させた。これをニンニクつぶし器、乳鉢等を使用して粉砕し、篩にかけ、一定の粒度とし、さらに一昼夜真空乾燥した。その約100mgをX-バンド用ESR試験管に入れ、日本電子(株)製電子スピン共鳴装置RE-2X型によりESR測定を行った。測定条件は、ESRシグナルが飽和しないように、中心磁場:335mT、掃引幅:7.5mT、モジュレーション幅:0.32mT、タイムコンスタント:0.03sec、掃引時間:4min、マイクロ波出力:1mWとした。
線量付加法の試料は、手羽元鶏肉に初期線量として一定線量照射後(3kGy、1kGy、0.5kGy、0.25kGy)、骨の処理をし、ESR測定を行った。その後、同一測定試料に対し、1kGy再照射-ESR測定を繰り返した。または、数個の照射試料を粉砕後、均一に混合・等分し、数段階の線量を同時に照射した。

結果と考察

Fig0004eb0001

図3 未照射、及び0.5kGy、1kGy、3kGy照射した骨のESRスペクトル。

 未照射、及び0.5kGy、1kGy、3kGy照射した骨のESRスペクトルを図3に示す。照射線量の大小に係わらず、g⊥=2.002 とg//=1.997(g値は不対電子の吸収位置を示す)の付近に主シグナルを持っている。これは骨の無機成分であるヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)中に電子捕獲によって生じるCO2-(CO33-)ラジカルである。未照射試料にはこのシグナルは見られず、繊維状タンパク質であるコラーゲンのシグナル(g=2.005付近)のみが観測されており、照射でできるスペクトルとは容易に識別できる。したがって、照射食品であるか否かを判定するにはヒドロキシアパタイト中の当信号を観測するだけで十分である。さらに、どれだけ照射されたかを判定するには次の線量付加法を用いる。因みに、当ラジカルトラップは非常に安定で年代測定にも利用されている。

Fig0004f20001_2

図4 線量付加法による前処理の見積。

骨付き鶏肉に3kGy照射、骨の処理をして、骨の粒子を2区分に分けESR測定をし、その後、その各々に1kGy再度照射及びESR測定を繰り返した線量付加法の結果を図4示す。その結果、外挿法(直線を負の方向に延長し、信号強度ゼロの付加線量)を求めると、3.9kGyおよび2.9kGyとかなり異なった値を示した。これは、照射とESR測定を繰り返し行うために、ESR管から試料を出し入れしている。そのため測定時には、その都度試料位置が異なり、それが測定値の変動の原因になっていると思われる。しかし、鶏肉の場合、照射上限は7kGyと定められており、照射処理がどの程度であるかを大まかに見積もるには十分である。

測定例2: 照射セルロースに特有なラジカルの ESR ピークによる照射イチゴの検知
(後藤典子、田辺寛子:食品照射, 37巻, pp. 12-16(2002)より抜粋・編集)。
 種子(イチゴ、胡椒、など)の照射食品の検知法として、照射セルロースに特有なラジカルを ESR で検出する方法が知られている。この原理によるヨーロッパ規格が 2000 年改定され、イチゴから種子を分離する方法についての記述が追加された。この規格では 1.5kGy 照射したイチゴを 3 週間検知可能としている。しかし、イチゴへの照射線量の上限は 3kGy の国もあるが、1kGy とする国が多いので、1kGy 以下の照射の検知が試みられた。

Fig00500100002001


図5 照射イチゴの種子が示すESRスペクトル。主ピーク A と照射セルロースに特有のラジカルによるピーク C1、C2 。

 照射イチゴの種子を分離し、ESR を測定すると、図5のようにポリフェノール由来の主ピーク A と照射セルロースに特有のラジカルによるピーク C1、C2 が検出される。高磁場側のピーク C2 はマンガンマーカの影響を受けるので、解析には低磁場側のピーク C1 を用いた。数種類の未照射イチゴについて ESR の測定を行なったところ、照射セルロースに特有なラジカルによるピーク C1 付近に、わずかなピークがあった 。これと照射試料のピークとを区別する方法を検討した。図4のように、マンガンの第 3 番目のピークと g 値 = 2.0046 のピーク A の間をベースラインに接する直線 (?) を引き、この直線からのピーク高さ (S) を求めた。

Fig00500100002003s_2_2

図6 照射セルロース由来ラジカルの強度(S)の求め方。

 0.5kGy 以上照射されたイチゴでは、室温で 3 日後、冷蔵で 21 日後、冷凍で 60 日後までは検知できた。また、電子線照射した場合、電子の透過力が小さいため均一な照射条件の結果ではないが、種子の表面に分布するセルロースに起因する特有のラジカルピークがγ線の場合と同様に検出できた。

測定例3: Foodstuffs - Detection of irradiated food containing crystalline sugar by ESR spectroscopy, EN 13708:2001 (E)
 EUにおける特許EN 13708:2001の英語版に、次の図にある乾燥マンゴ、乾燥イチジクのESRスペクトルが掲載されている。これによれば、3種または4種類からなる糖の信号で、いわばパターン認識で判定しようとするものの様である。
外科用メスで試料を50-100mgを切り取り、直接ESR試料管(Suplazil)に移して測定に供する。必要に応じて、試料は乾燥させる。計測条件は上記2例と同様である。

Photo_8

図7 照射した乾燥果物が示す結晶性糖由来のESR信号。

○ 乾燥マンゴーとパパイヤの例:

スペクトルの特徴:

スペクトル幅は7,4 mT7,8 mTで、g-value (centre of spectrum): 2,0035±0,0010

○乾燥イチジクと干しブドウの例:

スペクトル幅は8,7 mT to 9,l mTで、g-value (centre of spectrum): 2,0035 ±0,0010

ヨーロッパ各地約20箇所に試料を送り、照射検知を実行した結果、数個の例外を除いて、検知に成功してる。

なお、各種糖類由来のラジカルの同定に関してはプラズマ照射による生成ラジカルの解析が詳細に論じられているので、詳細は原著を参照されたい(山内行玄、葛谷昌之、岐阜薬科大学紀要49巻 11-22頁(2000))。


アルファリポ酸(a-lipoic acid)の不思議

2008-02-18 09:39:35 | 健康・病気

 

 最近重要な抗酸化剤として注目されているアルファリポ酸(alpha-lipoic acid)は不思議な化合物である。水にも溶け、油にも溶ける。図1に示すように、骨格は飽和オクタン酸(脂肪酸)でカルボニル基以外に2重結合はない。通常、抗酸化剤と言われる化合物は活性酸素と反応してラジカルになった時、そのラジカル状態が安定化するように二重結合が沢山ある。しかし、当化合物にはそれがない。実は硫黄原子2個が3p軌道、3d軌道を駆使してその役割を担っているのである。

 

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図1  アルファリポ酸(alpha-lipoic acid)の構造。

 

 

 さらに、図1のように、生体内ではNAD(P)Hなどと2個のプロトンと2個の電子のやり取りをして、ヂチオール体と平衡状態にある。この特長を生かして、ビタミンCやビタミンEラジカルを元に戻す。即ち、修復作用をするといわれている。もしそうなら、RE(ラジカル化エネルギー)がビタミンC(65.2 kcal/mol)&E(72.6 kcal/mol)のそれより小さいはずである。早速計算してみた。なんとRE=47.9 kcal/molでNADH(61.1 kcal/mol)やPTIO(59.3 kcal/mol)よりも遥かにラジカル化容易でアスタキサンチン(37.2 kcal/mol)に次ぐ値が出た。同様にS-S結合を形成して6員環を構成するdithiothreitolでも53.0 kcal/molとなり、やはり硫黄元素2個がラジカル安定化に寄与していることが示された。計算していると分かったことであるが、ヂチオール体でも2個の硫黄原子間に弱い結合ができており、結合次数が0.2程度ある。水素1個引抜いて、ラジカル状態で計算を始めるとすぐに硫黄間に結合ができてラジカル状態の安定化に寄与する。これがREが低くなる主な要因である。dithiothreitolでも同様にS-S結合を形成して、ラジカル安定化に寄与するが、6員環を構成するdithiothreitolよりも5員環を形成するアルファリポ酸の方がより安定である。

 

 アルファリポ酸は生命維持のためにヒトの体内でも生合成される。腸内細菌によっても合成されるため、通常欠乏することはない。その量が極微量で、しかも加齢とともにその生成量は減少すると言われている。ほうれん草やトマトなどの野菜やレバーなどの肉類からも摂取することができる。従って、あまりサプリメーカーの口車に乗せられないことが望ましい。むしろ、アルファリポ酸はプロオキシダント(酸化促進剤)としての性格があるので多用は控えるべきである。プロオキダント(prooxidant)とは酸化を促進させる薬と言う意味でサプリメーカーはあまり触れないが、サプリの重要な副作用と関連する。

 

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注目のポリフェノール:レスベラトロール(因みに)

2008-02-03 10:31:11 | 健康・病気

 因みに、レスベラトロールおよび関連物質のラジカルエネルギーを計算した。表1に典型物質とともに結果を示す。まず言える事は、レスベラトロールのラジカル化エネルギーは過酸化水素(スーパーオキシド)のそれより3 kcal/molも低く、VitamineCのそれよりも8kcal/molも高い。丁度、VitamineEに類似(表参照)した抗酸化能を発揮すると予想されるが、VitamineEのように長鎖状置換基がないために、自由に蛋白の隙間に入り込める。水には難溶であるが結晶構造解析結果では水分子と水素結合している。これらの特徴が新しい抗酸化能を生み出す可能性を秘めている。

----------------------------------------------------------------------

化合物             ラジカル化エネルギー(kcal/mol)

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過酸化水素          75.7

(スーパーオキシド)

Vitamine E                          72.6

Resveratrol                         72.8

Quercetin                            72.0

Piceatannol                        68.8

Vitamin C                           65.2

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 現在、細胞レベルから動物実験に至るまで人間にとって好ましいデータが次々と発表されているが、まだ、人でのデータがない。しかしすでにサプリ業界では恰も夢のサプリのように宣伝されているが、せめてデータが出揃うまで待てないだろうか?むしろ、適量の赤ワインを飲んで人生を謳歌するのがいいのでは・・・

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注目のポリフェノール:レスベラトロール

2008-01-31 13:26:58 | 健康・病気

Resveratrol

  レスベラトロール (Resveratrol: 3,5,4'-trihydroxystilbene)は細胞レベルや動物実験での研 究が進んで、アンチエイジング、心臓血管病、糖尿病、悪性腫瘍等に有用と、最近最も注目されているポリフェノールである。大手の化粧品メーカーがすでに製造販売の名乗りを上げている。

 レスベラトロールはフィトアレキシン(phytoalexin)の一種で、植物が病害虫、悪天候などから身を守る物質である。植物でトランス型レスベラトロールが最も多く含有されるのはぶどうの皮、ピーナッツの皮である。タデ科のイタドリにも含まれているがシス型が多い。レスベラトロールの誘導体に、炎症を防止するヴィニフェリン(viniferin)、配糖体のピセイド(piceid)などがある。 最近、このレスベラトロールがフレンチパラドックスの主役と考えられる証拠が次々と発表されている。

 フランス人は欧米で最も多くの肉やアルコールを消費するにもかかわらず、フランス人の平均寿命はヨーロッパで一番長い。 これがフレンチ・パラドックスと呼ばれるなぞである。 なぜ,同じく高脂肪・高カロリーの食習慣のアメリカ人よりも、心臓病になる確率が低いのか? ニューヨーク・タイムズ紙によれば,レスベラトロールがこの謎を部分的に説明するのではないか、と推測している。フランス人の赤ワインの消費量は勿論世界一である。

 レスベラトロールが脚光を浴びるようになったのは,2006年11月初旬、米国ハーバード大学と米国立老化研究所(NIA)の研究者が画期的な研究結果を報告した。 米国ハーバード大学のシンクレア博士等は、レスベラトロールを肥満のマウスに大量に投与した。その結果,肥満による悪影響が減少し、寿命が延びることが認められた。研究者たちは,マウスに高脂肪,高カロリーの食事を与えた。当然、マウスは肥満になり、糖尿病の兆しが見られ、肝臓はひどく肥大化し、標準的な食事を与えられたマウスよりもずっと早く死ぬようになった。 別のグループのマウスにも高脂肪・高カロリーの食事を与えた。しかしこちらのマウスには、レスベラトロールを大量に投与した。結果、 確かに、体重は増えつづけ、レスベラトロールを投与されなかったマウスと同じくらい肥満になった。しかし、注目すべきなのは、レスベラトロールの投与により、グルコースとインスリンの血中濃度が低下し、肝臓の大きさが正常に保たれたことである。 それだけでなく、レスベラトロールによって、マウスの平均寿命が大きく延びた。レスベラトロールを投与されたマウスは、投与されなかったマウスよりも,何ヶ月も長生きした。さらに、標準的で健康的な食事を与えられたマウスと比べても、同じほど長生きした。さらに、シンクレア博士等は,レスベラトロールを投与された肥満のマウスにどれほど運動能力があるかを調べた。すると、レスベラトロールを投与されたマウスは成長するにつれ運動力が良くなることが観察され、最終的には,健康的な食事を与えられたマウスと同じほど活発に運動していたというのである。

 レスベラトロールにまつわる話がもうひとつある。2007年8月、ケンブリッジ大Walker博士等はレスベラトロールが配位したF1-ATPaseの結晶構造解析をPNAS誌上に発表した。発表の大事な部分を」図2に示す。F1-ATPaseとは簡単に言えば生物のエネルギー代謝を司る酵素で、ADPとATPの間を変換させる。興味あるのはそのメカニズムである。図2Aのように、3個のαおよび3個のβサブユニットが恰もモーターのように固定子を構成し、中央の軸位置に回転子のγサブユニットがあり、これが回転する。3個のβサブユニットにはそれぞれADP(またはATP)が配位するポケットがあり、回転子が120度回転するごとにATPが生成(消滅)するというものである。この回転触媒モデルで1997年ノーベル化学賞をBoyer博士とともに受賞した。

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図2 レスベラトロール(緑色)が配位したF1-ATPaseの断面図。Aは回転軸に沿って眺めた図で中央の青色がγサブユニット。図ではこの回転子のそばにレスベラトロールが挟まっている。Bはレスベラトロールとそれをはさむ1個のβと回転子のγサブユニットを表す。

 図2はレスベラトロール(緑色)が配位したF1-ATPaseの断面図で、レスベラトロールが配位することにより回転子の回転が止まり、ADP⇔ATP変換がとまる。そうするとミトコンドリアの機能が止まり細胞死(アポトーシス)をはじめ、多くの効果をを引き起こすというものである。ケルセチン、ピセアタノールなどのポリフェノールも同様な位置に配位し、微妙に異なる効果を発揮しているようである。結晶構造解析から直接生化学現象を説明しようとするのは飛躍がありすぎるが、当化合物がエネルギー代謝を制御していることは確かなようで、その後のストーリー構築が鍵になりそうである。

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