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今日もArt & Science

写真付きで日記や趣味を勝手気ままに書くつもり!
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あるいは寺田寅彦の様に!

シングルスピンの検出法(2)

2007-08-01 10:28:09 | ESR

4.Si-FETのEDMR(Electrical Detection of Magnetic Resonance:電流検出ESR)

 SiFETに高電圧パルスを引加するとシングルスピントラップが生成する。このとき、I-V曲線に図3aのようなRTS(random telegraph signal)が現れる。これはゼーマン分裂した2準位間のアトランダム遷移を意味する。また、図3aのc領域で45.1GHzのミリ波存在下、source/drain電流を磁場の関数としてプロットすると3bの信号が得られた。これはシングルスピンを電流の変化として検出した最初の例で、画期的である。g=2.01の信号は既知の信号データと合わない。やはりその理由は目下不明。シングルスピンの挙動は統計的平均のデータとは異なる真にローカルな情報を示す模様で、まだまだなぞが多い。

Sifet_2

 

 

 

 

 

図3 SiFETと高圧パルスで生成したシングルスピントラップの模式図。a: I-V曲線。シングルスピン存在下では図のようなRTS(random telegraph signal)が現れる(T=1.3 K)。b:シングルスピンのESR信号を電流の変化で捕らえた初めての例。g=2.01で信号が現れているが従来のデータのどれとも合わない。

5.AFM-ESR(MRFM)

AFM(Atomic Force Microscopy)を利用したESR観測法はMRFM(Magnetic Resonance Force Microscopy)と呼ばれている。2004年、IBMが中心になり、長年の成果として、1K以下でのシングルスピンの観測に成功した(図4参照)。これは金と力の成果であろう。本装置の特徴は磁気共鳴に必要な磁場を、左右に振動するカンチレバー上に付着させたSm-Co系希土類磁石にある。この磁石の表面から距離の3乗に反比例して磁場が小さくなり、適当な位置、図ではお椀状のスライス(白色)部分で共鳴条件に合致する。コイルで2.96GHzのマイクロ波を照射しているので、100mT近くになると共鳴する。試料(赤色)はガンマ線照射したガラスで、孤立した不対電子(緑の矢印)が当スライスに入ると共鳴して、カンチレバーの振動数が変化し、レーザー光による干渉計に感知される。測定結果を図5に示す。

Nature02658f1_2_1

 

図4 AFMを利用したESR観測法(MRFM)。IBMのHPにはこの図を基本とする共鳴のアニメーションが公開されている。磁気共鳴を理解するうえでも、是非、一見に値する。

 

http://domino.research.ibm.com/comm/pr.nsf/pages/news.20040714_nanoscale.html

 本装置により確かにシングルスピンが観測された。ただし、これがどのように量子コンピュータ開発と結びつくのか、将来が楽しみである。

 

 

 

Singlespinmrfm

図5 シングルスピンの共鳴を示す結果。 横軸は基準点からの距離をあらわし、縦軸はカンチレバーの振動数変化。スピンが反転すると、磁石とスピンとの引っ張り合う力が変化するため、振動数が変わる。

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シングルスピンの検出法(1)

2007-08-01 08:56:30 | ESR

 孤立スピン1個をESRで検出しようという試みは1989年に始まり、すでに18年の歴史がある。

1.背景 量子コンピュータの研究が各国家レベルのプロジェクトとして推進されている。それに伴い、Q-bitも多種多様な対象が研究され始めた。その中に代表的な電子スピンがある。最近では、電子スピンを操作し、計測する手段としてのシングルスピン計測法が脚光を浴びている。表1にこれらの成果を纏めた。

Photo_6

2.ESR-STM測定法と電子スピンの特徴

1989年、当時IBMのManassenグループがSiウェハー上に生成する酸化物のシングルスピンSTM信号とその2D画像をPhys. Rev. Lett.に発表した(表1-1))。早速、Cambridge大その他で追試が行われたが、確認されるまでに至らなかった(生物ラジカル研もその一つ)。その後約十年間はManassenデータに疑問を投げかける意見が相次いだ。2002年、Cambridge大のDurkanがAppl. Phys. Lett. にBDPA、2004年にはContemporary Phys.にTEMPOのデータを発表した。計測原理は同じであるが、常温・常圧でしかもラジカルのクラスターで測られた。これによりESR-STM法の正当性が認められ、世界各地で当法の開発が量子コンピュータ開発と連動して開始された。インターネット上でも十数か所に及ぶ。国内でも4研究機関で計測が開始されているが、報告例はまだない。

 

Stmesr
3.ESR-STM(Manassen 1989) 原理は至って簡単で、Siウェハー上のシングルスピンは磁場中でラーモア歳差運動する(図1参照)。これにチップを近づけると、トンネル電子と当該スピンとの相互作用により流れるトンネル電流は直流とラーモア周波数に対応する交流が重畳する。直流はチップ制御と画像描画に用いられ、交流はスペアナによるラーモア周波数観測に用いられる。Manassenはラーモア周波数が2~3MHzに亘って移動すること、即ち、一度ある周波数で観測できても再現性がない。線形が異常に幅広く、しかもまるでダイソニアン曲線のようにテイルを引き、2次元画像はピーナッツの皮のように拡がる(図省略)ことなどを見つけた。十年余りを経て、Durkanは常温常圧下でグラファイト上のBDPAクラスターではシングルライン(追試あり)、TEMPOクラスターではまるで溶液の信号と見紛う三本線を観測した。

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エバネッセント波を用いたESR測定法

2007-07-31 11:15:09 | ESR

 エヴァネッセント波とは近接場波とも呼ばれ、通常の電磁波が境界面で全反射しても、境界面の近傍で滲み出し、距離に指数関数的に減衰する電磁波のことを言う。米国Case Western Reserve 大学のTabib-Azarグループが新規顕微鏡用プローブとして開発してきた近接場波プローブを用いて、ルビーのESR観測に応用し、検出限界を10E+4まで下げることに成功した。ESRの解説書を紐解けば電磁波の伝播が示されているが、反射面で指数関数的に減衰する電磁界の存在は全く示されていない。実は日本ではあまり注目されていなかったが、近接場波研究も既に20世紀末に伏線が敷かれており、Tabib-Azarも主要メンバーの一人であった。昨年6月J. Opticsに彼の一連の研究のESR版としてルビーのESR信号観測例が発表された。注目される一因は局所観測とその感度にある。通常のCW-ESRではその検出限界は10E+10スピン程度で、片やSTM-ESR、AFM-EPRではスピン1個(10E0)の観測に成功している。しかし、単一スピンの観測に成功しても計測対象が理解されたことにはならない。近接場波ESRは1個から10E+10個までをつなぐ有力な手段となりうるからである。

 

図1左に近接場波を発生させたプローブを示す。興味あるのは共振器で、ストリップラインの先端λg/4手前に隙間を設けて先端を腹とする共振器(Q=5000)とし、半円チップに近接場波を発生させている。ルビー結晶を当半円の内外に設置してESRの変化を観測している。検出限界が2×10E+4と見積もられている。磁場変調周波数その他、まだ改良の余地があり、10E+3程度まで計測できそうな気配である。因みに、図1右は近接場波の電場を選択的に取り出すプローブで誘電体顕微鏡などに利用されている。キーコム(株)目玉商品のひとつである。

 

Emmprobe_2

 

 

 このようなESRプローブはピンポイント計測と掃引機能を組み合わせたイメージ観測法と直結し、さらに現場計測を可能にする。そのひとつが歯や爪などをそのまま計測するBiodocimetryに繋がる。電子スピン共鳴(ESR)のルネッサンスが始まった。 

 

 さらに、もう一言付け加えると、エバネッセント波は表面より指数関数的に減衰するといったが、表面に限りなく近づくと電波はどうなるか?そう!指数関数的に増加するのである。これを用いたパルスESR装置では、高価なマイクロ波電力増幅器など不要になる!

 

 

 

 

 

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カテーテル型ESRプローブ

2007-07-28 09:41:38 | ESR

 中越地震で刈羽原発は大打撃を被った。作業員、所員が放射線を浴びていないという保証はない。何らかの形で現場で迅速に被爆量を測れないか?

 

 歯には放射線被爆によって格子欠陥由来のラジカルが蓄積するので、それのESRは地質年代測定などに利用されており、被爆線量計測にも利用される可能性を秘めている。問題はESR装置そのもので、石英試料管内に試料を詰め、空洞共振器に設置してマイクロ波を照射し、しかも0.3T程度の磁場を掛ける必要がある。

 

 

Esr

 

 

 

図1 ESR法を基礎とするカテーテル型ESRプローブの提案図。

 

 従来、.05t~3tもの電磁石を用いて均一な磁場を試料に掛けていた。思い切って、直径0.5mm、長さ10mm程度の希土類磁石にし、不均一磁場を採用する。共鳴条件を満たす、表面近くの試料部分にマイクロ波を照射すれば、信号が観測される筈である。本提案の骨子はまさにこのマイクロ波の照射方法にある。用いる材料の基本はマイクロ波用のセミリジッド同軸ケーブルである。直径約0.9mmの中心導体を4/λgの長さに切り、同軸共振器とする。さらに、この中心導体の軸に沿って0.5mmの穴を開け、上に述べた希土類磁石を図のように充填すると、左端はいわゆるマイクロ波チップを構成して、エバネッセント波(近接場波)の磁波のみが滲み出て共鳴を励起する。右端は誘電体ネジを介して、マイクロ波回路に繋がっている。同軸共振器のアース側には磁場変調用コイルが巻かれている。このようなプローブを歯や爪に接すれば無浸襲で被爆線量が見積もられる(図参照)。

 

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爪(ツメ)のESR信号

2007-07-26 09:40:17 | ESR

 たかがツメと思われる読者がほとんどであろう。しかし、事の重要性が分かると、されどツメ、と認識を新たにするのではないか?!

 

 ヒトの爪を20mg程度切り取り、試料管に詰めてESR測定を行うと、構造のない一本線がg=2.005~2.007に観測される。試料をγ線照射すると線量に比例して当信号が増強され、半減期300hで減衰する。昨年、欧米の研究者が中心になり、Biodosimetry 2006という国際シンポジウムが米国USUHS(Uniformed Services University of Health Science)で開催され、原子炉事故などで被曝したヒトの迅速測定(判定)に爪のESR信号測定が提案された。問題になるのは現場でのESR装置である。可搬型で高感度の装置が望まれていた。キーコム(株)のX10Sはぴったりではないか!

 

 

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 因みに、表1に爪のESR信号データを集めた。この中でメラニン由来の信号がg=2.005で目下注目の信号である。当信号計測を契機に感度向上と計測技術の向上等が図れるものと期待される。

 

 

 

 

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