ビター☆チョコ

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ラストキング・オブ・スコットランド

2007-03-15 | 洋画【ら】行

1971年、ウガンダ。
クーデターを経てアミン将軍(フォレスト・ウィテカー)が大統領に就任した。
彼のカリスマ性に国民は熱狂するが、権力を手にした男は次第に猜疑心と人間不信にとらわれてしまう。

ウガンダにアミン大統領が誕生しようとしたその時期に
スコットランドの青年ニコラス・ギャリガン(ジェームス・マカヴォイ)はウガンダに医師として派遣される。
ウガンダにやってきたのは、ほんの偶然。
ただ厳格な家庭で親の望みどおりの道を歩いている自分が息苦しくなったからなのだ。

そんなニコラスが偶然にアミン大統領の怪我の手当てをしたことで
大統領の主治医に取り立てられ、政治的な顧問の役割まで果たすことになる。

国民の熱狂的な支持を受けた大統領は
その権力が頂点に達すると何度も暗殺されそうになる。
そしてそのたびに人間不信に陥り、猜疑心の塊になっていく。
小さな疑いが芽生えたら忠実な側近すら殺し、
最後には30万というウガンダの国民まで虐殺してしまう。

物語はいつもニコラスの目線で描かれる。
ヒーローでもない、
どちらかいうと小心者で、小賢しくて、若さゆえの無謀さも持っている青年。
そんな青年が大統領の顧問として何不自由ない暮らしをしていたのだから
30万もの人間が同じ国で殺されているなどとは知るすべもない。
しかし、かつてのカリスマが人間不信に陥り
その猜疑心と冷酷さ残虐さが自分に向けられたとき、
彼は権力の恐ろしさと、それを手に入れたものが陥る地獄を垣間見るのだ。

いかにも軽薄なニコラスに本来なら同情する余地はないのだが
アミン大統領の非情さに、ついニコラスに同情してしまう私がいる。
それでもアミンが大統領になった頃は
国民の信頼を集め、異邦人であるニコラスでさえも心酔させた人物なのだ。
かなり魅力のある人物であったのも確かなことなのだ。

祖国を発展させよう、平和で自由な国にしよう、その志の軸がどこでどうずれてしまったのか。
それとも、冷酷で残虐なのが彼の本来の姿なのか。
権力を持つということが人格までも変えてしまったのか。

圧倒的な個性の持ち主であるアミンの姿に
凡人である私は、ニコラスと同様にただ戸惑い、逃げ惑い、呆然とするしかなかった。