ビター☆チョコ

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ハワーズ・エンド

2007-03-20 | 洋画【は】行

20世紀初頭のイギリス。 
シュレーゲル家の次女ヘレン(ヘレナ・ボナム・カーター)は
ウィルコックス家のハワーズ・エンド邸に招かれ、ウィルコックス家の次男ポールと婚約する。
しかし婚約は幻と消え、シュレーゲル家とウィルコックス家の繋がりは断たれたように思われた。
数ヵ月後のロンドン。
シュレーゲル家の長女マーガレット(エマ・トンプソン)は向かいの家に偶然にもウィルコックス家が引っ越してきたことを知り、複雑な思いにとらわれる。

ウィルコックス家のロンドンの家では病弱なウィルコックス夫人(ヴァネッサ・レッドグレープ)が、ひとりで寂しく過ごしていることが多い。
知的で活力にあふれたマーガレットは、過去のしがらみはあるものの、寂しく暮らすウィルコックス夫人を訪ね、二人の間には友情が育っていく。
ロンドンの暮らしに馴染めず、生まれ育ったハワーズ・エンド邸を懐かしむウィルコックス夫人。
しかし彼女は二度とハワーズ・エンド邸に戻ることはできなかった。
自分が一番愛したハワーズ・エンド邸を、自分が一番頼りにしたマーガレットに託すことを、書き残すのだが。。。。。

イギリスの美しい田園風景と、素朴なたたずまいのハワーズ・エンド邸に見事に咲いた青い花。
映像はどこまでも美しく格調高い。
それだからこそ、そこにかかわる人々の欲望や打算や品性が余計に浮き彫りになってしまう。

資産家で現実的なウィルコックス氏(アンソニー・ホプキンス)は妻が書き残した遺言を反故にしてしまうのだが、皮肉にもマーガレットに思いを寄せるようになってマーガレットに求婚する。
中層中流家庭で芸術に親しみ、心の豊かさに人生の喜びを見出そうとするシュレーゲル家の姉妹、
マーガレットとヘレン。
そしてこの二つの家庭に、下層階級だが知的なレナード・バスト(サミュエル・ウェスト)が絡んで、シュレーゲル家の姉妹は大きな選択を迫られることになる。

階級制度がきびしいというイギリスで、それぞれ階層が違う家庭が交差して
生まれが貧しければ、なかなか浮かび上がれない、という厳しい現実を描いてもいるのだか
どこか詩的なものを感じさせる映画。

マーガレットを演じたエマ・トンプソンは、
オールドミスで知的で、家族思いで、こういう役がはまり役だと思う。
「いつか晴れた日に」や、「ラブアクチュアリー」でも似た感じの役を演じていたのだが、
それぞれの役柄の哀しさが滲み出て、いつもじんわりさせられる。
そして、アンソニー・ホプキンス。
最近では「世界最速のインディアン」のキュートなおじいちゃん役が記憶に新しいのだが、
見かけは紳士だけど、ちょっと性格に問題あり、みたいな役がこれまたすごく似合う役者さんだと思う。

この映画はかなり前に観ていて、初めて観た時はどちらかというと退屈だった。かも。
映像の美しさだけはかなり強烈に印象に残っていたので、数年置きに何気なく観ているのだが
観るたびごとに好きになるのはなぜだろう。

意外な展開で迎える、ゆるやかなハッピーエンドは
分厚い本を1冊読み上げたような、心地よい満足感を与えてくれる。