小松格の『日本史の謎』に迫る

日本史驚天動地の新事実を発表

日本語の諸問題(45)  動詞形成の接尾語 「る」 と 「す」 について

2021年02月05日 | Weblog

 前に「お墓の語源」のところで書いたが、日本語にはアルタイ語文法を持つ証拠の一つとして、名詞を動詞化する接尾語がある。世界の多くの言語は動詞化として、外来語に「する 」を使う用法は普通にある。ペルシャ語、ウズベク語、朝鮮語にもある。例えば、「研究する」の場合、朝鮮語は「研究 ha-da 」、 ウズベク語も、「tadqiqat (研究) qilmoq (する) 」 と言う。(この tadqiqat はアラビア語起源)。ところが、ウズベク語では tadqiqat-la-moq  (研究する) とのもう一つの言い方があり、この場合  LA (ラ)が動詞形成の接尾辞である。日本語の  RU(る)に当たる。(例、測る、真似る、曇る、宿る)。日本語は外にも「ゆらぐ(ユラユラ)」「ころぶ(コロコロ)」「「はらむ (腹)」など、他のアルタイ諸語と比べても豊富である。例えば、「際(きわ)・・山際(やまぎわ)」の場合、「きわめる」「きわまる」、動詞が付いて「際立つ」、古文の「きわむ」の名詞形「極み」は今でも、「痛恨の極み」と政治家がよく使っている。また、「極める」から「極めて」との副詞もできた。

 ー あと一つ、日本語は「する」の文語「す」を接尾語化してうまく使っている ー

1) 「過ぎる」と「過ごす」、語幹「過ぎ」は「5時すぎ」「過ぎし日」と用い、「過ごす」は「休みの過ごし方」と使う。

2) 文語「さと(聡)し」の語幹「さと」から、「諭(さと)す」が、「悟る」から名詞形 「悟りをひらく」が生まれた。

3) 「明るい」の語幹「あか」から「明かす」が、「明かす」の名詞形「明かし・・身のあかし(証)を立てる」ができた。「明かる」との動詞はないが、「明かり」との名詞形はある。類似語の「明ける」の語幹「あけ」から「夜明け」「明け方」「明けの明星」などの言葉が生まれた。

4) 「溜める」の語幹「ため」(溜め池)から「ためす(試)」ができた。「試し斬り」とは工程を一時止めて(タメを作って)試みること。類似語の「止める」の語幹「止め」は「通行止め」「局留め」「止めに入った」などと使われている。自動詞の「溜まる」の名詞形は「溜まり場」とか「陽だまり」などと使う。

5) 万葉時代からある「占める」(領域を表わす)の語幹「しめ」(紫野ゆき しめ野ゆき・・額田王の歌)から、神聖な場所を区切る「しめ縄」とか「ひとり占め」などの言葉が生まれた。同時に「示す」ができた。名詞形は「示しがつかない」と使う。中世期には「締める」との意味も生まれ、現代では「これでシメにしよう」などと宴会で使われている。 

  ここで取り上げた例はほんの一部でまだまだいくらでもある。(例、「成る」と「成す」、「出る」と「出す」、「渡る」と「渡す」、「戻る」と「戻す」、「回る」と「回す」、「残る」と「残す」、「移(写)る」と「移(写)す」、「通る」と「通す」)。また、形容詞「早(速)い」の語幹「はや」から「はや(流行)る」と「はや(囃)す」が出来ている。(例、流行り病、おはやし・・お囃子)

  日本語の動詞は一定の法則性があり、論理的こ成り立っている。国文法の「投げる」の活用、語幹は「な」で、「げ、げ、げる、げる、げれ、げろ」と活用するなど本当にゲロを吐きそうである。もう止めてほしいと思うのは私だけだろうか。かって、「日本語に文法はない」と言った人の気持ちがよく分かる。

 <追記> 

 「感じる」「断じる」「転じる」「信じる」との言葉があるが、これは元々、漢字「感」「断」「転」「信」に「する」が付いたものであり、この中で、「感じる」の語幹「感じ」だけが名詞として使われている。(例、感じのいい人)。「断じる」からは「断じて」との副詞も生まれた。 これらはすべて「する」の名詞形(連用形)の「し」が付き、それに、動詞形成の接尾語「る」が付いて出来た新語である。これら漢字が「ん」で終わるため音便化して「じ」と濁音化した。他にも同じ用法で「報じる」「通じる」がある。くり返すが、言語の文法とはその言語の持つ一定の法則性を体系化したものである。名詞の「真似」(模倣)を動詞化した「真似る」(王朝時代は「まねぶ」)の語幹は「ま(真)」で、「ね(似)」の部分が活用して、「まね(真似)」はその連用形が名詞化したもの。これが義務教育で教えられている唯一の日本語文法(国文法)である。すべての日本人がスルーするはずである。          

  

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