RIVERSIDEと比べVERVEの作品はあの四部作の威光により個別は兎も角、総じて下に見られている傾向があります。
ソロ、デュオからWith Symphony OrchestraまでVERVEは編制が多岐に亘り、色んな顔が見えて的を絞り難いせいかもしれない。それともう一つ、「音」、V・ゲルダーとエヴァンスの相性はどうなんだろう?
全てゲルダーの手とV・ヴァレンティンの意向が入っているワケではありませんが、「ちょっと鼻声」とでも言うのでしょうか、pの音が丸くなったイメージが付いて回る。
S・MANNEとの2枚を。左が”EMPATHY”(1962. 8.14)
MANNEを筆頭に並列にクレジットされているのは、エヴァンスがまだRIVERSIDEとの契約を完全にクリアしていなかったためですが、MANNEも当時、CONTEMPORARYと契約しており、この組み合わせを考え実現させたC・テイラーのプロデューサーとしての才はさすがです。
そうした裏事情によりMANNEとEVANSのダブルネーム的演奏のためエヴァンス・ファンには物足りなく聴こえるのはやむを得ないでしょう。
TOPの”The Washington Twist”で意表を突かれ、ラウンジ・ピアノ寸前の”Danny Boy”に???が。でも、B面は”With A Song ・・・・・”に余興が入るものの3曲共に出来は良い。
肝心の音は鼻詰まりまで至らなく、繊細なニュアンスを求めなければ案外、肯定的に聴けます。因みにV・ヴァレンティンの名は入っていない。
右は”A Simple Matter of Conviction”(1966.10.11)
本作はエヴァンスのリーダー作になっているだけに気合は十分ですが、TOPのタイトル曲のフェード・アウトは如何なものだろう?続く”Stella By Starlight”を効果的にUpしようとした狙いなら俗っぽいですね。B-1の”I’m Getting Sentimental ・・・・・・がベスト・トラック。ただ、全9曲は多すぎで、B-2の”Star Eyes’はエヴァンスしては凡演の類に入るだろう。
注目すべき点はその後長い付き合いとなるE・GOMEZ(b)のリアルタイムでのレコーディング初参加です。後年ピックアップを使用した音と異なり弾力あるアコースティクスなサウンドはなかなかの聴きものです。
この国内盤は世界初のドイツノイマン社製SAL-74/SX-74・トータルカッティングシステムを採用、プレスされ音圧レベルが高く迫力もあり、国内盤のイメーを覆します。低域に厚みが加わりpの重心も下がり重量感は半端でありません。なお、こちらにはV・ヴァレンティンの名があります。
この2作に甲乙を付けるなんて無意味ですが、敢えて付けるなら世評と違い”EMPATHY”を。
決め手はゴルフで言う所の上り3ホール(曲)の出来映えで”EMPATHY”はパー、パー、バーディ、対して”A Simple Matter of Conviction”はダブルボギー、辛うじてパー、パーと聴きました。
MANNEのドラミング、「騒がす、慌てず、焦らず」、そしてセンシティブなプレイは「校長先生」です。
直ぐ手が伸びるアルバムではありませんが、内容は意外に面白味があり、エヴァンスって結構、気分屋ですね(笑)。
エンパシーはなかなかいい音場感だと思います。私もエンパシーの方が好きです。
国内盤の音がいいとは知りませんでした。見かけたら聴いてみます!
一流プレイヤーは良くも悪くも振幅の広さがそのままスケールの大きさに繋がっているように思います。
エヴァンスの魅力を改めて確認しました。