昨年、12月8日にB・ハリスがウイルス性合併症で亡くなっていることを知りました。享年91。
彼ほど「いぶし銀」の異名が似合うミュージシャンは他にいないだろう。況してや、バップ伝道師、パウエルの正統フォロワーとくれば鬼に金棒、特に通の間でブレない姿勢が支持され人気も高い。
上段の2枚、”MAGNIFICENT!”(Prestige)、”PLAYS T・DAMERON”(Xanadu)はハリスの代表的定盤として評価され不動の位置をキープしている。
一方、下の”VICISSITUDES”(独MPS)は蚊帳の外状態が続いている。恐らく、このカヴァが気に入らないファンが多いのでしょう。ただし、この三枚、類似性が極めて高い。
レーベルこそ異なりますが、いずれもD・シュリッテンがプロデュースし、録音エンジニアはPAUL GOODMAN、dsはL・ウィリアムス、違うのはb奏者のみ。細かく言えば写真もシュリッテンが撮り、流用までしている。もっと言えば、”MAGNIFICENT!”のライナー・ノーツはI・ギトラーが書いているももの、他の2枚はM・ガードナーが担当している。
ここまでくると身内同士如く馴れ合いが危惧されるけれど、ハリスの場合、コロコロ変わらない所が強みですね。
なお、録音は”MAGNIFICENT!”(1969年)、”VICISSITUDES”(1972年)、”PLAYS TADD DAMERON”(1975年)と丁度3年置きで、”VICISSITUDES”だけリリースが1975年と間が空いている。
自分の好みでは”VICISSITUDES”が断然、他を引き離している。ハッタリでも、妙な肩入れでもありません。他の二枚と比べハリスが極、自然体で弾き、開放的な所が良い。カヴァのハリスの表情からも十分に窺えますね。シュリッテンから「ま、独レーベルだから別の顔でも・・・・・・」なんて言われたかどうか ・・・・・(笑)。”VICISSITUDES”とは「転変、変遷、移り変り」を意味し、B-1の”Renaissance"(ルネサンス’)では、まるで「クレオパトラの夢」を連想させるアクティブな演奏を聴かせます。恐らくハリスの頭の中ではパウエルの姿が浮かんでいただろう。
もう一つ、同じエンジニアなのに「音」の違いがハッキリ出ている。以前、このpのエコーが強いMPSの音が苦手でしたが、いろいろシステムを調整すると苦にならず、G・デュヴィヴィエのbとL・ウィリアムスのブラシが良い感じでフィットしている。特にデュヴィヴィエのbは質感、量感、共に上等です。勿論、プレイ自体もGoo!
カヴァで決め付けてはいけない好例です。それにしても前歯の隙間には笑えます、でも、そこがいい。昔、本作の良さに気が付かず、大いに反省している。
R.I.P. BARRY HARRIS