FREEDOM FLP 40101
マイルスの”BITCHES BREW”が録音された69年8月の一ヶ月後、同じニューヨークで70年代のモダン・ジャズ・シーンを担うだろうと嘱望された次世代のホープ達による作品が録音された。彼らの気持ちをストレートに表現したピュアで真摯なこの演奏は行き詰まった感のある当時の「モダン・ジャズ」の新たな突破口になる可能性を秘めているように見えたが、時の女神が微笑むことはなかった。
本作は、当時メキメキと頭角を現し、玄人筋に評価の高かったカウエルをリーダーにソロイスト4名がそれぞれ一曲づつ持寄った野心作。アヴァンギャルド・テイストを随所に振り撒きながら時には熱く激しく時にはクールに明日のジャズを目指し己の力を精一杯出し合っている。若いだけに小さく纏まらず伸び伸びとイマジネイティブな世界が描かれ、一気に全4曲聴き通しても集中力が途切れることはない。
異論を承知の上で大局的な見地から言えば”BITCHES BREW”で「モダン・ジャズ」は終わってしまったと言っても差し支えない現状から顧みると、50~60年代を加速度を増しながら変貌に変貌を重ねた「モダン・ジャズ」の精製された一つの結晶とも思える本作でさえ時代の潮流には敵わなかった。
パーソネルは、
STANLEY COWELL(p) WOODY SHAW(tp) TYRONE WASHINGTON(ts,fl,cl) BOBBY HUTCHERSON(vib) REGGIE WORKMAN(b) JOE CHAMBERS(ds)
Produced By Chris Whent & Alan Bates
当時の精鋭達による「モダン・ジャズ」の未来を信じた本作は結果的に「モダン・ジャズの墓標」になったが、69年、まだ熱い息吹は残っていた。
”Bluespirits(2004..1.28)
PS,
最近の活動を検索すると、何と!昨年の12月17日に亡くなっているではありませんか。享年79。
ご冥福をお祈りいたします。