1975年にRE-ISSUE シリーズもので陽の目を見た未発表作品2枚組。
元々、”JACKNIFE"(4223)、”HIGH FREQUENCY”(4236)としてリリースされる予定でしたが、発売ローテーション事情?により「お蔵入り」した音源。シリーズの画一的なカヴァ・デザインのせいか内容の割にそれほど話題に上らなかった記憶が。
パーソネルは、”JACKNIFE"(1965年9月24日)
Lee Morgan (tp) Charles Tolliver (tp) Jackie McLean (as) Larry Willis (p) Larry Ridley (b) Jack DeJohnette (ds)
”HIGH FREQUENCY”(1966年4月18日)
Jackie McLean (as) Larry Willis (p) Don Moore (b) Jack DeJohnette (ds)
カヴァ表記では”JACKNIFE"のQUINTET、SEXTETのみでメンツは出ても”HIGH FREQUENCY”のQUARTETが抜けている。しかもtp二本のSEXTET演奏は1曲のみと、なんともはやいい加減で手抜き状態に。
一般的にはモーガンが入った”JACKNIFE"に関心が行くけれど、このメンバー、コンセプトからはもう微妙な立ち位置に置かれている事がハッキリと浮かび上がっている。モーガンのソロだけを切り取って聴けば決して悪くないが、流れの中に落し込むとちょっと苦しいかな。しかもトリヴァーと比較すると尚更。好きなトランペッターですが、残酷な言い方をすれば、周回遅れの感が否定できない。
かってE・ヘンダーソン(tp)がモーガンに教えを請うた時、親切に細かな点まで教えてくれ、モーガンは常にストック・フレーズを幾つか用意していてそれを上手く組み立てる演り方を取っている事を知ったそうです。なるほど、その演り方では皆で渡れば怖くないハード・バップ時代であれば兎も角、多様性を孕んだ60年代半ばになると・・・・・・・
一方、付け足し扱いのワン・ホーン・カルテットの”HIGH FREQUENCY”、実はこれがイイ!
1年前の”RIGHT NOW”の120%フル・ショットもいいが、80%コントロール・ショットの本作は更に素晴らしい。熱いマインドはそのままに表現力に磨きがかかっている。
SIDE3の2曲はコルトレーン、コールマンの影響を受けながら確立されたアイデンティティがしっかりと刻み込まれ、asとは思えぬずっしり重くディープな音色にマクリーンの気迫が乗り移っている。ここまで凄みあるasを吹いたのは後にも先にもマクリーンだけだろう。
SIDE4の3曲はパッション一本槍ではない柔軟性が美味しい。
”Wise One”(CRESCENT/J・COLTRANE)を想わせる”Moonscape”の深々としたバラード、モーダルなボッサ・ロックの”Jossa Bassa”、そしてサイドワインダー風モーダル・ファンクの”The Bull Frog”、どれもそんじょそころのヤワな演奏とはレベルが違い、ハード・ボイルドです。
”High Frequency”と”The Bull Frog”の2曲を提供しているハンコックもどきのL・ウィルスのpも見事。
で、本作のもう一つの聴きものは、本格的にデヴューしたばかりのJ・DeJohnetteのドラミング!
ロイド・グループに入る前(JACKNIFE)と入団直前、直後?(HIGH FREQUENCY)で若々しくキレのあるパフォーマンスがホント素晴らしいです。音がややハイ上りもあってこれほどまでに前面に出ている例は直ぐに思い出せない。
将来が約束されたセッションですね。これはもう一つの「掘り出しもの」ですよ。
酷暑の中、所用で街中へ、もうヘロヘロでした。帰宅してこの一枚を。暫し暑さを忘れ聴きに没頭しました。