1979年、突如、フュージョン界で活躍していたクレマーからデュオ、トリオというフォーマットでシビアなアルバムが発表され驚きをもって迎えられた。
曲目からしてロリンズ、特にコルトレーンに挑戦したかのような2枚組。弥が上にも力量が問われる。
まぁ、崖からパラシュート無しで飛び降りる心境だったのかもしれない。
J・クレマーはそれほどメジャーなts奏者ではないけれど、70年代に入りインパルスから「ソフト&メロー」なアルバムを出すにつれ名も知れ渡り、そのギャップの大きさから、当時かなり反響を呼んだ。
ただ、フュージョン作品との対比という物差しだけで、本作を語るのはどうでしょうか?
もう少しクレマーのキャリアを遡ってみよう。
彼の初リーダー作は、1967年5月にCADETに録音された‘INVOLVEMENT’で、その頃のジャズ・シーンの空気をうまく吸収、反映しながらスタンダード曲ではまだ20歳とは思えぬ確りしたtsを聴かせている。
NHKの「ジャズ・フラッシュ」で司会の児山紀芳氏は「有望な新人sax奏者の登場」とこのアルバムをリアルタイムで紹介し、同時に取り上げられたのがG・バーツの「リブラ」だった。
その後、カデットから数作、リリースしているが、今ひとつ、クレマーの実像が絞り切れないまま甘目のフュージョンに突入し、「もう、アカン」と思った矢先に本作が・・・・・・・
休火山の突然の噴火は一部から「硬派の名盤」と高評価を得ているようだが、何度聴き直しても、自分はそれほどポジティブになれない。クレマーがハードに吹けば吹くほどbとds、或いはds、二人の存在が希薄になり、そもそもそれほどアドリブ自体に味があるわけでもないクレマーの独演会に終始している。コルトレーン・ライクに、幾らシリアスに吹いてもクレマーの本心が見えてこない。
自ら、本作を‘Pure Jazz’と自画自賛した時点で、噴煙の高さは限界を・・・・・・・・
その後、クレマーが大噴火したとの記憶もない。