Are Core Hire Hare ~アレコレヒレハレ~

自作のweb漫画、長編小説、音楽、随想、米ラジオ番組『Coast to Coast AM』の紹介など

048-最期の集まり(前編)

2012-11-10 22:14:12 | 伝承軌道上の恋の歌

「…先輩。やっぱり来てくれたんですね…」
「僕、僕、もうシルシ君達と会えなくなっちゃうと思ってたよ」
 公園の街灯に儚げに照らされたアキラとトトは僕達を見て涙ぐんだ。
「二人とも大げさだな…」
「いいの?」
「ああ。全部話す。アノンも…な?」
 傍らに立つアノンは僕の影に半分見を隠している。
「…う、うん…」
 アノンは僕の顔色を伺うように見上げる。
「何、どっちなの?」
 それにトトがつっかかる。
「ね?言って。きっと僕達アノンちゃんの助けになってあげられるよ?」とアキラ。
「分かってるけど…」
 そう言って僕に助けを求めるようにコートの袖をつかんだ。
「そうやってまたシルシ先輩にすがって…本当に腹立つ…」
 黙りこくるアノンの態度がトトを逆撫でする。
「ずるいよ、いっつもアノンばっかり…」
 トトが目にためてる。そんな彼女の肩を抱きながらアキラは僕達に言った。
「でも、大丈夫なの?ここ、スフィアの『聖地』のひとつなんでしょ?」
 するとアノンはアキラの肩の向こう、公園の真ん中を指さして『あそこなら』とつぶやいた。それは砂場の真ん中にあるコンクリートでできた大きなドーム状の遊具だった。
 持ち寄ったお互いの携帯電話を真ん中で照らすと、そこは汚い落書きばかりが天蓋に映えるプラネタリウムだ。身体を丸めて、僕達四人がどうにか収まってる。僕の正面、トトとアキラに挟まれて座っているアノンの告白はこうして始まった。
「私ね、ずっと暗い部屋の中に閉じ込められてて…そこから出てきたの」
「どのくらいの間?」とアキラが聞く。
「分からない。私それ以前の記憶がないんだ」
「どうしてそんなことに…?」
「記憶がないっていうよりずっと夢の中にいたような、そんな感じがあって…それでよく思い出せないの」
「それじゃあ、まるで…」
 アキラはそう言いかけてやめたけど、誰しもがそれを連想していた。まるでそれはデウ・エクス・マキーナの…マキーナがいたカプセルのようだ…
「覚えているのはそこから救い出してくれた先生の名前とこれだけ…」
 そう言ってアノンは首筋にあるバーコード状のタトゥーを見せた。
「…先輩!!」
 トトの高い声はこの狭い空間でこだました。彼女が驚いたのはアノンにタトゥーが入っていたせいじゃない。彼女のタトゥーが僕の『それ』と同じだったからだ。

…つづき

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