7月7日のロンドン同時多発テロの直後に、英国人の「落ち着きの源」を紹介したが、どうやらそれは「1回限定」だったようで、2週間後の同時爆破には、現場が相当混乱したらしい。それは当局や市民達も同様で、冷静さを失った警察は、“怪しい者(イスラームとは無縁のブラジル人であった)”を撃ち殺してしまうし、市民達も「犯人」と同じモスクや集会所に行ったというだけで警察に「告げ口」するようになった。警察への通報は、5,000件を超えている。
そして、その後の捜査当局の「ナタを振るう」というよりも「ナタを振り回す」と言った方がふさわしいと思われる常軌を逸したやり方や、街に蔓延した有色人種への冷たい対応を見ていると、「古きよき英国」はどこへやら、2回の同時爆破が英国社会の根底にある人種差別意識を呼び覚ましたように思える。
140万人とも150万人とも言われる英国在住のイスラーム教徒がどれほど肩身の狭い思いをしているか、現地の新聞やTVを見ていると、その辺りの雰囲気がひしひしと伝わってくる。今朝BBCTVを見ていたら「有色人種を見たら疑え」などという聞く者の耳を疑うような発言が紹介されていたが、どうやらそれはホンの一部の過激な人種差別主義者だけではなく、一般市民にも浸透し始めた見方のようだ。
市民の間にこのような空気が定着した時、私が恐れるのは、そんな空気に勢いを得たネオナチなどの民族主義に凝り固まったグループが騒ぎ出すことだ。これまで彼らは、市民の支持を得るどころか、どちらかと言えば冷たく見られることも多く肩身の狭い思いをしてきたが、「時は来たり」とほくそえんでいるかもしれない。 そういったグループの中でも国際的にも広く知られている「National Front(以下、NF。民族戦線)」は、人種主義を前面に堂々と打ち出し、移民の影響を受けやすかった貧困層から支持を受け、70年代には全国で2万人の活動家を抱え、地方議会に議員が選出するほどの影響力を有していた。その頃から街中をスキンヘッドで歩く集団は異様な雰囲気をかもし出していた。ロンドン市内で一度彼らとにらみ合いになった事があるが(私も若くて血気盛んだったのです)、幸いにして間に割って入る大人がいて事なきを得た。
NFはその後、様々な内部抗争を経て分裂と組織改変を繰り返し、1982年に「British National Party(以下、BNP)。英国民族党」が誕生した。NFは現在も存続するが、BNPの傘下の「活動部隊」ような存在である。
現在の党首であるニック・グリフィン氏は、NFの代表であったが、95年にBNPに入党、4年後に現職に選ばれた。卓抜した指導力とアイデアでBNPは勢力を地道に伸長させている。政界への参加も積極的に行なっており、地方議会にも24人の議員を送り込んでいる。また、PR活動には特に力を入れており、自らのウエブサイトでは、インターネットTV放送も行なっている。TV放送はまだアマチュアレヴェルだがアクセス数はかなり多いとのことだ。時間があれば、ウエブサイトをご覧頂きたいが、今回の同時爆破事件については、当然のことながらかなり激しい表現が目立つ。これまでは聞き流されてきたこれらの過激な発言が、テロに怯える市民達、特に白人住民にとって受け入れやすくなっていることは間違いないだけに、今後の展開に目が離せない状況だ。
同じような状況に東京が晒されたらどうなるかと考えてみた。ここのところの日本の右傾化は誰の目にも明らかだが、同様の事件が起きれば、そういった動きがより一層加速されることは間違いない。「外国人排斥運動」も起きるだろう。それだけに、「自分のところでは起きて欲しくない」というのが、まことに身勝手であることは重々承知しているが、それが私の正直な気持ちだ。それは、繰り返しになるが、人命がテロで失われることに加えて、この国でも反外国人運動のような動きが起きてしまいやすいからだ。
「9.11」や「7.7」を東京で起きないようにするには、今考えられる手はただ一つ。自衛隊をイラクから撤退させて、日本政府が、イスラーム社会との関係を「正常化」することしかない。それを実現するにはどうしたらいいか。まず、今噂されている「解散ー総選挙」で勝利を収めることだろう。でも、それでも気になる。民主党が今ひとつ信用ならんのだ。岡田さん、本当にあなたを信用して大丈夫だろうね?
そして、その後の捜査当局の「ナタを振るう」というよりも「ナタを振り回す」と言った方がふさわしいと思われる常軌を逸したやり方や、街に蔓延した有色人種への冷たい対応を見ていると、「古きよき英国」はどこへやら、2回の同時爆破が英国社会の根底にある人種差別意識を呼び覚ましたように思える。
140万人とも150万人とも言われる英国在住のイスラーム教徒がどれほど肩身の狭い思いをしているか、現地の新聞やTVを見ていると、その辺りの雰囲気がひしひしと伝わってくる。今朝BBCTVを見ていたら「有色人種を見たら疑え」などという聞く者の耳を疑うような発言が紹介されていたが、どうやらそれはホンの一部の過激な人種差別主義者だけではなく、一般市民にも浸透し始めた見方のようだ。
市民の間にこのような空気が定着した時、私が恐れるのは、そんな空気に勢いを得たネオナチなどの民族主義に凝り固まったグループが騒ぎ出すことだ。これまで彼らは、市民の支持を得るどころか、どちらかと言えば冷たく見られることも多く肩身の狭い思いをしてきたが、「時は来たり」とほくそえんでいるかもしれない。 そういったグループの中でも国際的にも広く知られている「National Front(以下、NF。民族戦線)」は、人種主義を前面に堂々と打ち出し、移民の影響を受けやすかった貧困層から支持を受け、70年代には全国で2万人の活動家を抱え、地方議会に議員が選出するほどの影響力を有していた。その頃から街中をスキンヘッドで歩く集団は異様な雰囲気をかもし出していた。ロンドン市内で一度彼らとにらみ合いになった事があるが(私も若くて血気盛んだったのです)、幸いにして間に割って入る大人がいて事なきを得た。
NFはその後、様々な内部抗争を経て分裂と組織改変を繰り返し、1982年に「British National Party(以下、BNP)。英国民族党」が誕生した。NFは現在も存続するが、BNPの傘下の「活動部隊」ような存在である。
現在の党首であるニック・グリフィン氏は、NFの代表であったが、95年にBNPに入党、4年後に現職に選ばれた。卓抜した指導力とアイデアでBNPは勢力を地道に伸長させている。政界への参加も積極的に行なっており、地方議会にも24人の議員を送り込んでいる。また、PR活動には特に力を入れており、自らのウエブサイトでは、インターネットTV放送も行なっている。TV放送はまだアマチュアレヴェルだがアクセス数はかなり多いとのことだ。時間があれば、ウエブサイトをご覧頂きたいが、今回の同時爆破事件については、当然のことながらかなり激しい表現が目立つ。これまでは聞き流されてきたこれらの過激な発言が、テロに怯える市民達、特に白人住民にとって受け入れやすくなっていることは間違いないだけに、今後の展開に目が離せない状況だ。
同じような状況に東京が晒されたらどうなるかと考えてみた。ここのところの日本の右傾化は誰の目にも明らかだが、同様の事件が起きれば、そういった動きがより一層加速されることは間違いない。「外国人排斥運動」も起きるだろう。それだけに、「自分のところでは起きて欲しくない」というのが、まことに身勝手であることは重々承知しているが、それが私の正直な気持ちだ。それは、繰り返しになるが、人命がテロで失われることに加えて、この国でも反外国人運動のような動きが起きてしまいやすいからだ。
「9.11」や「7.7」を東京で起きないようにするには、今考えられる手はただ一つ。自衛隊をイラクから撤退させて、日本政府が、イスラーム社会との関係を「正常化」することしかない。それを実現するにはどうしたらいいか。まず、今噂されている「解散ー総選挙」で勝利を収めることだろう。でも、それでも気になる。民主党が今ひとつ信用ならんのだ。岡田さん、本当にあなたを信用して大丈夫だろうね?
中東地域出身者への偏見思考が大きくなりつつあるということ、身近にいるイギリス人同僚からも感じ取れます。
そう感じる理由として、
今まで現地人から聞いたことの無い言葉がテロ発生後聞こえてくるからです。
私が勤める会社の取引先には多数の中東出身者が勤務しております。
彼らは普段とても物静かではありますが、
何事にも一生懸命まじめ取り組み、知的(知識が豊富)な方々が多いと私は感じています。
実際、イギリス(NHS)でのお医者さんにはパキスタン系の方々が多数働かれています。
今回のイギリステロがトリガになり、
妙な偏見が積もり積もって大変な事態に変貌してしまうこと懸念しています。
P.S.
日本人の潜在的な差別意識も同様です。
イラク戦争直前、開戦に反対して大規模デモに繰り出したり、普段からブレア政権の米追従政策の危うさを危惧したりする(日本ではこのようなことを言うとサヨクとか槍玉にあげられるようですが、英国では米国追従を批判することが左翼政治思想によるものであると考える人はいません…)ごく普通の英国人であった白人の友人が人が変わったかのような物言いをするようになりました。捜査の勇み足としか捉え様の無いブラジル青年の死に対して国民をテロから守る為の行為だったんだから、と当局のあてずっぽうな捜査の危険性を指摘するでもなく擁護にまわり「英国の捜査当局は世界一」だと賛美してみたり、4人の実行犯が逮捕され彼らの生活環境の一部が報道されるや、国民の税金で生活しておきながらこんなことする奴らは殴って取り調べしたっていいんだと、こちらの耳を疑うようなことを怒気混じりに言い放ったりするのです。私の、それではCIAの尋問と同じこと、人権はどのような人であれ守られるべきもの、殴って吐かせてもテロの根絶には役立たない、そうではなくて「移民」の隠れ蓑で生活保護を受ける過激派予備軍にまで国民の税金が使われる福祉制度の見直しをまずするべきだ、過激派を養っているのは英国自身であるという意見は無視されました――。
私はこれまでNFに関心を持っていませんでした。地域によってはそういう人が多く住んでいる場所があると聞いたことはありますが、それほど脅威を感じないでいられたのは、恐らくは私が英国人の中にある特権意識、人種優越性のようなものをほとんど感じることなく過ごしていたからでしょう。先の友人とは結構激しいやりとりになってしまい、7月7日ロンドン同時爆破テロの犠牲者もイラクで戦争の犠牲になっている何万もの市民もイラク戦争の犠牲者である、英軍は即座に撤退すべしと私も語気荒く詰め寄ったところ、「テロに屈して撤退しろ? お前はテロリストの味方か? 英国を好きでもない人間はこの国に住むな!」と言われてしまいました。開戦前は反戦だと言っていたのにです…。英国のダブルスタンダードに直面して私の頭の中は辻褄があわなくなりました。
イスラム過激派が国内で広がりを見せる問題にどう対処するつもりなのか、大方の予想はありましたが、どうしてこういつも敵対的な政策しか出せないのでしょうか。「英国の寛容」をせせら笑いたくなります。Dr Naseemの、ヒトラーのユダヤ人に対するデモナイゼーション(demonisation)の例示は適切です。ブレア首相は記者会見で過激派、過激思想を煽動する「外国人は」、と何度も発言していましたが、7/7同時爆破テロの実行犯が「英国籍」であったことは誰の記憶にも新しいはずです。英国生まれで英国育ちの実行犯が外国人であるはずがありません。首相の言う「外国人は」とは「特定地域の特定の宗教を信仰していると思われれる人間」を指しているのではないのでしょうか。現在国内にいる「まだ外国籍」または今後入国を試みるかもしれない過激派対策としてだけの政策に終わらない事ははっきりしています。あまりにも「英国的」なレトリックに不快感を覚えたのは私一人ではないと思います。白人英国人(籍)でなければ、今後疑われる事を当たり前と思え、と受け取られて当然です。
これから先、首相の見解に基づいて権限の与えられた関係当局が、テロリズムの煽動をどう解釈して範囲を広げていくのか考えると空恐ろしさを感じます。何度も言うようですが、あのブラジル青年を当初南アジア人とメディアで報道していたくらいですから…。(似てもいません)
(BBCのサイトの記事を読みながら感じました)
肩に一発、頭に七発の銃弾を受けて誤殺されたブラジル人青年の死をめぐる不可解な状況が少しずつ明らかになってきています。民放ITVによる独自の検証が毎日新聞の記事にも出ていましたが、青年がいつも着用していたのはジーンズの上着であって厚手のジャケットではないなどは、青年の従弟の方が当初から主張していたことです。つい最近、当局は現場駅の監視カメラに不具合があったとかで、裁判では映像による状況の検証が不可能になったと発表していましたが、こうなって来るとこちらの方にも疑いの目を向けてしまいます。もともと、あれだけの弾丸を頭部に撃ち込んでいながら「誤って射殺」と言えるものなのかどうか。
こんな調子では、英政府が司法当局に要請している、解釈を引き締めたテロ法によって過激派を出身国にどんどん送還しても、その中にはテロとは全く無関係の人間もいた、という事になるかも知れません。私はイスラムの人間ではありませんし、過激派の擁護をしているわけではありません。確証のない捜査によって善良な一市民の人生が無茶苦茶になることに不条理を感じるのです。