あるBOX(改)

ボクシング、70年代ロック、ヲタ系、日々の出来事などをウダウダと・・・

「この世界の片隅に」、じわじわ効いてるよ・・・

2016年11月16日 | アニメ・特撮
劇場でアニメ「この世界の片隅に」を
観たという事は、既述済みでありますが。

なんか、一日経ってジワジワと来てますよ。

なんか落ち込んで来ちゃってるんですよ。



なまじ、ほのぼのとした絵柄で、のんちゃんの
のんびりした声で、淡々と進む日常の物語なだけに

そこで描かれる延長線上に戦争があって
原爆があって、多くの市民も亡くなって
街が焼け野原になっていく。

「ぼんや~り」した映画と表現したのは、そこと
日常に明確な区切りを付けず描いてあるから。
※故意にだろうけど。



キービジュアルの絵のように一面に呉の街が
広がって、そこに主人公の、人々の営みがあって
それが連綿と描かれているから。

一部に描かれた軍艦などをピックアップして
取り上げても全容は説明できない。

そりゃ、砲撃、爆撃、人の生き死にでは劇的な
表現はなされてますよ。

でも、さっきまで淡々と生活してた「ほのぼの」
キャラが、数秒先に悲劇的な状況に陥るというのは
逆に辛い。



肌触りとしては、やはりキアロスタミ監督の映画
「そして人生はつづく」に近いものがありました。

災害があっても身内が亡くなっても人生は続く、
日常は続く…。

しかしね。やっぱり戦争は、原爆は違いますよ。
自然災害はどうしようも無い部分があるけど、
戦争は「殺される」んだもの。「傷を負わされる」
んだもの。

もちろん、片渕須直監督は全て承知でそう描いて
いるのでしょう。



私には、それゆえにヘビーだ。

敗戦で肩を落とす市民や兵隊が、何をする気力も
沸かない様子も描かれているが。

みなの人生が続いている訳じゃないんですよね。
人生続かなかった者もいる。
人生続ける気力を失って、この世から去った者だって
居ただろう。

もし私が「あの場」に居たら、気力を無くす側だよ。

家族を亡くし、自ら傷を負ったら…メシ食う意欲も
失くすし、そのまま衰弱死するだろう。

だから落ち込む。



私の世代で広島・戦争というと「はだしのゲン」なんだが。

「ゲン」の方が原爆描写はエグかったんだけどね。
逆に、主人公が無駄に生命力あふれてて、画面がパワフル
だったんだよね。

家族が亡くなって号泣しようが、放射能で髪が抜けようが、
「誰が死ぬかクソったれ!」「ワシは生きるんじゃ!」…と
駆け回って、喧嘩して、食い物盗んで。

そのバイタリティとエンターティメント性に癒やされた
もんなんですよ。
※こっちのほうが作者の半自叙伝だというのに…

「この世界の片隅に」は、素晴らしい映画だと思うし、
ほのぼの笑えるシーンもある。
普遍的な人の営みを描いた傑作とも言える。



しかも終盤の「幻のような」「白日夢のような」光景は、
ある意味、難解で芸術性さえ感じさせる。

素晴らしい。素晴らしいけど、皆には勧められないね。
落ち込みやすいヤツには勧めないよ。

私?
まぁ、落ち込んでるけど、劇場では泣いたし、
「観てよかった」とは思ってますけどね。