京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

時間についての考察 XIII:宇宙と生命の進化

2019年06月17日 | 時間学

 

 熱力学第二法則によるとエントロピーは増大し、世界は時間の矢の方向に無秩序さが増大することになっている。一方、生命の進化においては、化学進化、原始細胞形成(イブ細胞)、多細胞生物さらに生物社会の形成と、より複雑でエントロピーの小さい複雑なシステムが出来上がってきた。これは大いなる矛盾であると昔から言われてきた。これに対して、生物が存在するこにより地球全体のエントロピーは増大しているなどというもっともらしい説明がされているが、どうしてそんな必然性があるのかは誰にも説明できない。

 『時間の本質をさぐる』(松田卓也、二間瀬敏史著 講談社現代新書 1990)によると、宇宙はビッグバン以来づつと温度が下がり続け、この温度低下が物理的システムの進化の原因になっているそうだ。温度の低下があまり速いと、平衡状態になりきれず、「落ちこぼれ」がところどころに生じて特異な非平衡状態が生ずる。片栗粉をお湯で溶いたときに、均一に混ぜたつもりでもツブツブができるみたなものだ。本来は宇宙は膨張して熱死の方向に向かっているのだが、ダイソンがハング・アップ現象と言った中途半端な状態(オチコボレ)がいくつもできるということだ。

 水素の核融合で燃えている太陽もこの落ちこぼれの一種ということである。この落ちこぼれが発する熱の負のエントロピー(ネゲントロピー)が地球の生命の基になっている。この負のエントロピーが雷の電気エネルギーとなり、別の落ちこぼれである原始地球で化学進化を起こした(Stanley Millerの電気放電実験)。三十数億年前の話である。分からないのはどうして生命の起源である単細胞(イブ細胞)ができたかである? タンパク質や核酸、脂質が原始地球のタイドプールの中で合成されたと、しぶしぶ認めたとしても(腕のよい有機化学者が核酸の1塩基をフラスコで合成するには、収率が悪い何段階もの反応を組みあわせてやっとこさである)、細胞形成の必然性は無論のこと、その偶然性さえも思いつかない。この始源細胞の形成という問題は、再現せよとは言わないまでも(もしできたらその科学者は「神」になれる)、それらしい仮説でも出せるのか? これは物理学における大統一理論と並ぶ科学の最大課題の一つと言えそうだ。

 

 

 

 

 


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