ジェームズ・ラボロ.ックのガイア思想の「ガイア」は「生きている地球」のメタファーであるが、この語はギリシャの女神に由来する。この地母神は大地の象徴で未来を予想するともいわれる。いままで人類はガイアの構造に深刻なダメージを与え、その自己調節能は危機に陥っている。人口増加、土地の劣化、資源枯渇、廃棄物の蓄積、汚染拡大、生物多様性の喪失、温暖化と気候変動.............。
ガイアはある範囲で変動を見せるが、自己調節的なホメオスタシスの仕組みでもって、平均するとほぼ一定な状態を保ってきた。最終氷期以降、地球はバイオスフェアとして環境のフィードバック制御がきいて恒常性を保つようになっていたのである。温度についてもある範囲の振幅でほぼ一定に保たれていた(ラブロックはこの自己調節能の説明は今のところできないと言っているp85)。しかし人為的な環境破壊は、このシステムの許容値を超えてしまったようである。あとは暴走と急激なシュリンク(縮小)が予想される。先週のアメリカ中部の同時多発的な巨大竜巻被害はそれを象徴している。
産業革命以降の人口の増加は指数関数的で異常である。本来、生物の個体群は増えすぎると、捕食者が増えたり、病原菌が繁殖してフィードバックがかかるが (ラブロックはこれの物理化学的要因を主に考えているが)、人類は知恵をさまざま発揮してそれを回避してきた。捕食者に対しては武器を開発し、病原菌には抗生物質とワクチンを開発した。
ラブロックは言う。「人間はあまりに数が増えすぎて、地球にとって病原菌のような存在になってしまった。そのために、地球はかなり機能障害に陥っている。人間の病気と同じく、その結末には4種のケースが考えられる。侵入してきた病原菌の撲滅、慢性的な感染状態、宿主の死、そして共生である。共生が成立すれば宿主にも侵入者にも相互利益のある長続きする関係がたもてる」と。Covid-19(コロナウイルス)が人類の生活をゆるがすパンデミックを引き起こしたが、人類そのものが地球にとって病原性微生物であるとするなら、ウイルスはその増殖を抑える地球のワクチンであるという事もできる。人類の立場で、ウイルスの弱毒化による共生を希望的に述べているが、地球の立場からは人類の「弱毒化」による共生が要求されている。もうこれ以上強欲な生産至上主義はやめなさいということである。
人類とウイルスの相互絶滅戦争か共生路線か?それを見定めるには、あと1-2年かかりそうである。
追記1(2021/12/19)
この本を読んでわかったことがある。ラブロックは原子力を容認しており、「航空ジェット燃料に硫黄化合物を入れてエアゾルを作り地球を冷やせ」と言ったりするまことに「浅いエコロジスト」であることだ。地球の立場からすると、「もうこれ以上お前たちは生産を止めてくれ、石器時代の人口に減らしてくれ」と言っているのに生産至上主義の立場のままでいる。
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