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1971年ジェット旅客機に原子時計を乗せて飛ばし、地球を一周させる実験がワシントン大学のハーフィルとアメリカ海軍天文台のキーティングによって実行された。その結果、地上に置かれた原子時計と比較すると、飛行機で東回りのものは時計が数十ナノ秒遅れ、西廻りのものは二百数十ナノ秒ほど進んだ。
これは物理的時間の進行が運動の容態によって違うという事を示している。特殊相対性理論では運動系の時計は静止系の時計よりも遅れる事になっている。地上の人が、高速で飛んでいる飛行機の時計を見ると手元の時計より遅れている。一方、飛行機の人から見ると自分が静止し、地球が動いているように見えるので、そばの時計と比較して地上の時計が遅れているように見える。時間の遅れはお互い様で、地上に帰ってきた時には、時計の指す時刻に違いはないはずだ。それではどうして違いが出たのか?
実はこれは一般相対性理論の問題で、飛行機が加速あるいは減速するときかかる加速度が時間に影響を与えたために生じた現象である。人工衛星に積み込まれたGPSのシステムでは、地上に対して高速で動いていることによる特殊相対性理論による補正(7µsec)と重力による影響の一般相対性理論からの補正(進み45µsec)を行い、正確な位置情報を知らせている。地表に近い程重力が大きく時間の進み方が遅い。
このように運動によって支配される物理的時間の問題は、人間の脳で生じる時間感覚とも思念とも独立して現れる。このことからしても時間はヒトとは独立した実存であると言える。
参考図書
表 実 『時間の謎をさぐる』岩波書店、 1996
都筑卓司 『時間の不思議;タイムマシンからホーキングまで』講談社ブルーバック8873、 1993
別冊日経サイエンス 2021 (No247:p79).
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