北海道函館市函館湾緑の公園の一角に津軽海峡を越えてむつ湾を見つめる像が有る。
函館市と青森市がツインシテイ提携20周年の記念事業で設置されたものだが、この
モチーフが青森県の作家太宰治の小説「思い出」の赤い絲のエピソードが元である。
思い出:太宰治の小説抜粋
『・・赤い絲について語り合つた。それはいつか学校の國語の教師が授業中に生徒へ
語つて聞かせたことであつて、私たちの右足の小指に眼に見えぬ赤い絲がむすば
れてゐて、それがするすると長く伸びて一方の端がきつと或る女の子のおなじ足
指にむすびつけられてゐるのである、ふたりがどんなに離れてゐてもその絲は切
れない、どんなに近づいても、たとえ往来で逢つても、この絲はこんぐらかるこ
とはない、さうして私たちはその女の子を嫁にもらふことにきまつてゐるのであ
る・・・』
解説:これは太宰が弟との会話を文字化したものであるが、太宰治はこの赤い糸の
ように、愛人と太いロープで繋がれて玉川上水で心中死体として発見された。太
宰治には賛否両論があるが、やはり、妻子がありながら愛人と心中したという表
(作家が裏か表かは評価がわかれる)の面を筆者は痛烈に批判する。しかし、そ
のどうしようもない自我が、一方で佳作を多数残した事に一目を置くのも事実だ。
記録:一方青森市にも青い海公園の津軽海峡を見渡す一角に同様の像が設置された。
参照#太宰治(含羞と失意の作家)探訪紀行
映像:湯の沢温泉「ちゃぽらっと」に雁風呂と名づけられた比較的深い円形浴槽。
外ケ浜町(旧平館村)に新しい温泉施設がオープンした。老朽化した共同浴場『湯の沢温泉』をリニューアル、愛称『ちゃぽらっと湯』。施設は他の公共施設同様、真新しいもので特に特徴もなく、浴室部に入った瞬間塩素臭が襲う。これは清掃時に使用の残香だろう。救われたのは循環ながら比較的源泉が多く注入されている『雁風呂』、持ち前の強塩泉で数分も浸かると汗が噴き出す。
【DETA】食塩泉(強) 52.1℃ pH7.2 源泉:湯の沢温泉代替2号泉
解説;雁風呂伝説:外ケ浜には渡り鳥に因む哀しい伝説がある。
『津軽海峡を渡る雁は、途中海上で休む為に木の枝を咥え、海に枝を落とし、その上に止まり休み、また渡りをする。外ヶ浜に辿り着き枝を落とし、春、再び北へ帰るとき、海岸に落とした小枝を咥えて飛びたつのだが、不慮の死の雁の数の分だけ小枝が海岸に残る。浜の人々は残った枝を拾い集めて風呂を焚き、思いを果たせぬ雁の供養をする』…切なく哀しい言い伝えをこの雁風呂の壁に掲げていた。