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惜しみなく愛は奪う(有島武郎:新潮文庫)

2018年06月01日 |   ✒文学逍遥 紀行

映像:純愛と博愛の作家有島武郎の評論が収められた新潮社文庫本(現在青空文庫参照可)

惜しみなく愛は奪う」この衝撃的なフレーズが大正時代に綴られたことに驚きを覚える。
人を愛するということは、相手のすべてを奪って自己のものにすること・・・という評論は
国家主義時代の背景下にあって、個人主義を論じ、なによりも強い愛情表現は先進だろう。

原文:評論の一文を下記に抜粋
   『・・・人は愛人を見出すことに誤謬(ごびょう)なきことが出来る。そして個性の全的要
    求は容易に愛を異性に対して動かさせないだろう。その代り一度見出した愛人に
    対しては、愛はその根柢から揺ゆらぎ動くだろう。かくてこそその愛は強い。そ
    して尊い。愛に対する本能の覚醒(かくせい)
なしには、縦令男女交際にいかなる制限
    を加うるとも、いかなる修正を施すとも、その努力は徒労に終るばかりであろう

・・・愛は自己への獲得である。愛は惜しみなく奪うものだ。愛せられるものは奪われては
 いるが不思議なことには何物も奪われてはいない。しかし愛するものは必ず奪っている

悲劇:この作品を発表した6年後に、有島武郎は美人編集者波多野秋子と軽井沢の別荘にて
   心中(お互いに自らの命を絶ってしまった)事件を起こし帰らぬ人となってしまった。
参照有島一郎(白樺派 作家)探訪紀行


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