田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

飯嶋和一著「出星前夜」

2008年10月10日 | 読書三昧

今日のニセコは、急激に気温が上がったせいか朝から深い霧に包ま
れました。50mほど離れた隣家さえ見通せないほどでした。

この4・5日、飯嶋和一氏の「出星前夜」を読みながら、うつうつとした
日を過ごしました。

先日、芥川賞とか直木賞などに縁がなくとも、力のある作家がたくさ
ん居て、それぞれ渾身の力作を世に問うていると記しましたが、今回
もその感を強くしながら読みました。



この本は、三代将軍家光の時代に、島原や天草で、領主の過酷な年貢
の取立てと圧制に苦しむ数万人の農民が決起し、九州の諸藩から動員
された10万近い部隊を相手に、4ヶ月余にわたり戦った農民一揆(島原
の乱)を克明に描いた大作(540頁)です。

小生は今まで、「島原の乱」を天草四郎に率いられたキリシタンの宗教
一揆のように理解していました。

しかし、実際には、関が原以降、新しい秩序となりつつあった江戸幕藩
体制の下、江戸や領地にあって遊蕩三昧の日々を送る愚鈍な領主・支
配層に対し、過酷な年貢の取立てと飢饉や流行り病で、生きるすべをな
くした島原や天草の農民との避け得ない階級対立の極としての農民一
揆戦争でした。

勿論、この農民一揆が、未曾有の戦闘力を持ち得たのは、団結の絆とし
てキリスト教(カトリック)の教えがあり、また、帰農して圧制に苦しむこと
になったかっての武士の一部が戦争の指導にあたるなど、思想的、組織
的に、すぐれた要素を持っていたこともあります。

そして、なによりも「生きること」を否定された先にある悲劇は、格差社会
と言われる現代に通じるものがあります。一読をお勧めします。
本書の詳しい紹介がこちらにあります。


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