09年度の本屋大賞を獲得して300万部のベストセラーとなった「告白」の著者による衝撃の「家族」小説というのですが、小生には、壊れてしまった現代の家族を象徴する底なし沼を見る思いでした。
物語~ひばりヶ丘の片隅の高級住宅地にそぐわない小さな家で、中三の彩花(あやか)は、今夜もぶちきれて母親の真弓に罵詈雑言を浴びせ、物を投げつけるなど荒れに荒れていた。しかし、同じ頃、隣家の豪邸でも家庭内暴力で主人が殺されるという事件が起こっていた・・・
思春期の子供を持つ家庭がどこも家庭内暴力に戦々恐々とするような状況だとは思いませんが、彼女の描く世界が支持される背景には、事の大小こそあれ、現代がかかえる深い闇のような世界が存在するのだと納得させられる思いもします。
人間の持つ善意とか誠実さなどは、もう現代の日本では通用しないのでしょうか。来日中のブータン国王ご夫妻の言動に新鮮な感動を覚えるのもこうした背景あってのことでしょうか。